テスラモデル3の発売予定まで後1年を切りました。私は非常に危機感を覚えています。
なぜなら、モデル3はかつてのT型フォードが起こした産業革命と同じことを現代に巻き起こそうとしているからです。
あのスペックで、あの価格で本当に発売されるなら最早に買わないことを正当化する言葉は私にも見つかりません。(その証拠に、私もオーダーを入れてデポジットを支払ってしまいましたから)
革命が起こってしまえば、その日を境に自動車業界を取り巻く価値基準は180度変わってしまうでしょう。それは、おそらく私の好む方向ではないことは容易に想像がつきます。
これまでの車好きが愛してやまなかったオイル臭いエンジンや忙しくて複雑な操作を要する車達は淘汰され、そういった車は資金力のあるごく一部のマニアのために細々と生産の上、当然高値で売買されることになるでしょう。
新型車が高値なら中古車ももちろん高値です。

あまり無理のない範囲で比較的手軽に手が届きそうなものを選んでみました。
「ロータス・エリーゼ」
ライトウェイトスポーツの代名詞!操る楽しさでこの車を上回れる車はそうそうないでしょう。
アンダー200馬力と非力ながらも、車重900kgには必要にして十分すぎるスペックです。
8000回転まで回る高回転型のトヨタエンジンは可変バルブタイミングのvvt-Liを搭載しており、カムに乗ったときの回転フィールとレスポンスは最高です。
その上、重要機関部品から電装系に至るまで全てにおいて信頼性も抜群で維持費がかかりません。車重が軽いということは、運動性能だけでなく維持費の面でもタイヤやブレーキの磨耗速度が非常に遅く有利です。
私も過去に所有していましたが、未だに欲しくなってしまうため相場を見守っていますが、価格がここ数年間ほとんど変動していません。
逆に言えば、常に買い時で購入後1年間ほど楽しんで売却する分にはほとんど差額が発生しないでしょう。
こんなお手軽に最下級クラスのレンタカー以下のコストで本物のライトウェイトに乗れてしまうのです。乗らない理由がありません。
また、どうせエリーゼならエクシージの方がと思われる方も多いでしょう。
しかし、両車を乗り比べてみると、確かにエクシージはパワフルで速いのですがその分癖も強いです。
エリーゼでもすでにリアヘビーでオーバーステア気味なのに、エクシージではさらにその特徴が顕著です。

「アストンマーティン・V8ヴァンテージ」
英国が誇る貴族のスポーツカーアストンマーティン。映画007シリーズに登場するジェームス・ボンド愛用のガジェットとしても有名です。
さぞかし高価でとても手がでないと思われるかもしれませんが、実は日本での今一高くない知名度のせいか中古車市場ではそれほど値段がつきません。
新車だと乗り出し2000万円近いV8ヴァンテージが、今なら中古車市場で500万円以下で買えてしまいます。
近年の相場を見ている限り、よほどの過走行にさえならなければリセールもそれほど変わらない金額になると予測されます。
絶対的なスペックの面からすると、少し割高感もあるのですが貴族がそんな俗世間の評価を気にしてはいけません。
車そのものがもつオーラや品格、そして内外装の丁寧な作りこみは他のどの車でも味わえない特有の世界観です。

007になったつもりで、小高い山の上の洋館を目指して箱根あたりをドライブしてみてはいかがでしょうか?
「メルセデス・ベンツSクラス(W221)」
最新型であるW222もそろそろ後期型にマイナーチェンジが囁かれる昨今、前世代となるW221型の価格はどんどん下落しています。
いくら中古車相場が下がろうとも、元は1000万円を遥かに上回る車です。
しかも、遥か昔の話しではなくここ10年前くらいの車の話です。新車から10年しかたっていないメルセデスの最上級サルーンがわずか200万円から買えるというのです。買わない手はないですね。
メルセデスの歴史は自動車の歴史と言っても過言ではありません。
ドイツが世界に誇る本物の車作り、その中でも最も歴史ある伝統と革新のフラッグシップモデルSクラスを所有してみるということは、車好きとして非常に意義のあることです。
もちろん、最新がいいのですが高額になってしまうため、ここはお得に一世代前でも十分に素晴らしさを体感できます。

年内に次世代W222の後期型にスイッチする予定です。その模様は時期が来ればお届けしたいと思います。
「メルセデス・ベンツC63AMG(W204)」
私がメルセデス好きなこともありメルセデスが続いて申し訳ございません。
日本では所謂“ベンツ”と呼ばれ車好きの車というより反社会的勢力やお金持ちといった世俗的なイメージが先行しがちかもしれませんが、メルセデスは本当に優れた車を生み出すメーカーなのです。
その中でも、特に私のお気に入りなのが、このC63AMGです。
もちろん、最新のW205ではなくW204型でないとダメです。
その理由は、M156と呼ばれるAMG初となる完全自社開発エンジンが、あまりにも最高だからに他なりません。
野生的、暴力的といった言葉がぴったりなエンジンで、この分野でライバルとなり得るエンジンが一つも思い浮かばないほどです。
特徴としては、本当に暴力的と感じるほどに6.3リッター自然吸気V8エンジンはレスポンシブルでトルクとパワーの出方がリニアなのです。ラフに踏み込もうものなら簡単にスピンを誘発するレベルです。
これに組み合わせられるトラクションコントロールも、そのあたりの遊びを理解してくれる秀逸なものです。
残念ながら後継型となるW205型ではダウンサイジングターボ化されてしまい、スペックシート上ではより過激に見えるもののすっかりエンジンの陰が薄くなってしまいました。
Cクラスというあの小柄なセダンに超大排気量自然吸気エンジンという組み合わせは、今後二度と生まれないと予想されます。AMGも最後のお祭り騒ぎとしてあのような傑作エンジンを生み出したのだと推測されます。
一つだけ、この車の性格を顕著に物語る注意点がございます。
それは、ガス欠です。6.3リッターという途方もない大排気量エンジンを搭載しているにも関わらず、なんと燃料タンクが下位グレードのC200等と同じ容量なのです。
これでは航続可能距離が200km程度となってしまいます。

燃料残量が1/4を下回るとしきりにカーナビがガソリンスタンドへ行くように指示しはじめるのですが、それには従った方が身のためです。
少しアクセルを踏めば驚異的な速度で燃料が減っていきますから。あっという間になすすべなくタンクが空になってしまいます。
「ベントレー・アルナージ」
イギリスという国は用途を明確に打ち出した車を作ることにかけては世界一だと思います。
先に登場したロータス・エリーゼを例にとるとライトウェイトとしてどこまでも身軽であり、一切の妥協なく走る楽しさを追求しています。
もし、これが他の国なら日本ならマツダ・ロードスター、イタリアならアルファロメオ・4C、ドイツならポルシェ・ボクスターと言ったところでしょうか。思いつく限り、エリーゼに比べればどれも煮え切らない実用を意識した妥協が見え隠れするのは気のせいでしょうか。
そういった目的に対する明確なアプローチとそれを達成する高い技術力という点では、このベントレー・アルナージも負けてはいません。
一度乗ってしまえば、これまでの高級車の概念が全て覆ることになるでしょう。そして、それは新しいベントレーやロールスロイスさえもがどこか野暮ったく思えてしまうほどです。
超高級車でありセレブの象徴ともいえるベントレーは中古車市場では不人気です。不人気というよりそもそも中古車の需要がないといえます。
ものがどれだけ良くできていても需要がなければ値段はつかないのが市場経済というものです。これほど優れた車が、日本の中古車では新車の国産ミニバン程度の価格帯で購入できてしまうのです。
だいたい2000年前後の世代となり少々古く思えますが、実際の車のデザインとしては全く古さを感じさせません。
それもそのはずで、人は古い新しいを何かと比較することで感じとっていますが、この車には比較する対象そのものが存在しません。
厳密には、ミュルザンヌという後継車種が2010年に発売されてはいますが、東京都心でも遭遇することは月に一度もありません。
今回お薦めしたいのは、そんなベントレー・アルナージの中でも2000年以前のモデルです。
なぜなら、高性能・高信頼性・低燃費なBMW製4.4LV8ツインターボエンジンが搭載されているからです。ここまでイギリスの凄さをアピールしておきながら結局はドイツかよ!と思われてしまうかもしれませんが、それには少し理由があります。
2000年以降に搭載されているエンジンは先代モデルに使われていた設計の古い6.75LOHVターボエンジンが搭載されています。ここだけの話?性能も信頼性も比較にならないほどかなり劣っているからです。
確かに、味わいと言う意味では価値があるでしょうし、やっぱりベントレーは6.75リッターじゃなきゃというエンスーもおられるでしょう。
しかし、性能も悪く故障したときの修理代が車両価格を優に超えたのではとてもお勧めできません。
昨今では、フォルクスワーゲングループ傘下に収まり、エンジンもアウディなどと共有されるものも多くでていますが、それでもなおベントレーらしさを失っていません。

その3として、引き続き車好きの方にぜひ経験していただきたい車を紹介させていただきます。
「ポルシェ911(タイプ996)カレラ、GT3」
みなさまの予想通りもちろんポルシェもお勧めに必ず入ってきます。
ただし、ポルシェといっても911しかお勧めしたくありません。
もちろん、近年のボクスターやカイエン、パナメーラ、マカンなどの亜種もよくできた車ではあるのですが、誤解を恐れずに言うと、わざわざポルシェである必要はそれほどなく、逆に、これらを乗ったからと言ってポルシェがわかったりもしません。やはり、ポルシェと言えば911であり911こそがポルシェです。
そんな911の中でも私がお勧めするのは、タイプ996と呼ばれる現行の991からすると二世代先祖にあたるモデルです。
996をお勧めする理由は2つあります。
まずは、水冷であること。一つ前の993までは伝統の空冷(エンジンを冷却する方法が、一般的なラジエターで冷やした水を循環させる方法ではなく、ファンにより風を当てるもの。)で、こちらの方がポルシェ濃度が高いのですが、扱いはより複雑で故障のリスクも高まります。
もう一つの理由が、前述の冷却方式によるポルシェらしさにも由来するのですが、とにかく993までと比較して996は安価なのです。
安価で壊れにくいのにしっかりポルシェ911とくれば、これはもう買わない理由が見当たりません。
そして、どうせ乗るならMTにしましょう。もちろんATでも悪くはないのですが、MTの方が圧倒的に楽しいです。
最新の991型ではスポーツモデルのGT3までもがツインクラッチのPDKになってしまいましたが、やはりポルシェをMTで操ることは格別です。車好きなら一度は体験してほしいところです。病みつきになること間違いありません。
最近では300万円台でも十分手に入るくらいまでお買い求め安くなっています。
また、もう少し足を延ばせば憧れのリアルスポーツGT3ですら600万円以内で手に入れることも可能です。
そして、MTのGT3は値上がり傾向にあるため今後のリセールにもかなりの期待ができます。
すでに5年も前から中古車市場での価格が全く変わらない、もしくは少しずつ上がっているところです。

「ハマーH2」
もはや説明の必要はないかと思いますが、あのボディビル世界チャンピョンにしてハリウッドスター、そして元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、AMゼネラル社にアメリカ軍用車ハンヴィを元に特注した特殊SUVであるハマーH1。
そこから着想を得て、GMがシボレータホを元に開発したSUVがハマーH2です。
ですので、H2は直接はアメリカ軍と無関係ながらも、その圧倒的な存在感や堅牢さはまさに強いアメリカの象徴であり、アーノルド・シュワルツェネッガー氏のイメージにぴったりだと思います。
GMが2010年に経営不振から国有化した際の規模縮小によりハマーブランドは、実は消滅しています。サブプライムローンやリーマンショックに端を発する世界的な景気悪化は記憶にも新しいと思います。
あの頃の大排気量高燃費車への世間のバッシングはすさまじい勢いでした。
アベノミクス効果もあって、それが今となってはウソのようです。今ハマーブランドが残っていてH2の後継車種が発売していればバカ売れ間違いなし!(H3は正確には後継車種ではなく派生車種)
すでにブランドが中国企業に売却されてしまった後なので、この先H2のような車が出てくるかは不透明でとても期待できる状況ではありません。
そうなると、必然的に今残っているH2を世界中から奪い合うことになるので高騰するのは当然です。
相場を見ていると、実は1年前よりも10%程度価格が上昇しているのです。今後の値上がりによるリセールまで考慮するとこのタイミングでぜひぜひH2に乗っておくことをお勧めします。
もちろん、リセールや市場価値を抜きにしてもハマーH2には購入するに値する魅力があります。

今後登場するであろう高級SUVにも並ぶもののない圧倒的な存在感をぜひ一度味わってみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?自動車エージェントという仕事以前に私は車好きです。
そんな一人の車好きとして同じ車好きの方にぜひぜひ一度は乗ってみていただきたい車をあまりにも高額すぎない程度のちょうどいい現実的な路線でいろいろお勧めさせていただきました。読者のみなさまの次の車選びの一助になれれば幸いです。

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