自動ブレーキはここまでキタ!各メーカーの機能比較

メンテナンス

痛ましい事故のニュースが話題になるたびに、自動ブレーキの存在がますますクローズアップされてきています。

自動ブレーキが全部の車に搭載されていれば事故の6割は防ぐことができ、さらに残りの事故も被害が軽減される可能性が高いというのですから、非常に注目されてしかりでしょう。

一部車種に搭載されて脚光を浴び、各社一斉に開発に乗り出し、今では軽自動車にも標準装備が進んでいる状況です。

しかしながら、同じ自動ブレーキと言っても各社それぞれに異なった技術を用いており、その性能は一長一短だったりもします。今回はそんな自動ブレーキの各社の性能や特徴をザクッとわかりやすく比較紹介してゆきたいと思います。

スポンサーリンク

まずは最初にレーダー技術の比較

レーダーの守備範囲は、方式によってかなり異なる(出典:マツダ自動車)

 

光学カメラタイプ

光学カメラは、いわゆる一般的カメラと原理は同じもので、実際の光をとらえてその形状から障害物かどうかを判断する仕組みです。安価なものではカメラが一つだけの「シングルカメラタイプ」、高価なものではカメラ二つの「ステレオカメラタイプ」と方式が異なり、当然ステレオカメラタイプのほうがより的確に障害物を捉えることができるようになっています。

原理が簡単である分コストも低いのですが、十分な光量や、コントラストが得られにくい状況(夜間や、雨天、強烈な西日など)では検知能力が低下してしまう弱点も抱えています。

 

赤外線レーザータイプ

赤外線レーザーはテレビのリモコンなどに多用されている枯れた技術で、大変に安価なのが大きなメリットとなっています。

しかしながら赤外線レーザーの到達距離はかなり短めで、ごく低速域でしか有効に機能しないのは残念なポイントと言えるでしょう。

 

ミリ波レーダータイプ

赤外線レーザータイプの弱点を克服できるのはこのミリ波レーダータイプです。光は関係ないので、光学カメラが苦手な場面でも全く問題ありません。しかもレーダーの到達距離はとても長く、かなりの遠方までとらえることができます。しかしミリ波レーダータイプにも泣き所はあって、光学カメラのように物体を形状でとらえることは難しいですし、なによりも価格が高価であるということもあります。

このように、レーダー技術によって得手不得手がはっきりしていて、一つの方式で万能なレーダーを作ることはほぼ不可能に近いということができます。そのため信頼性を追求する自動ブレーキ開発では、いくつかの方式を組み合わせて弱点を補完するハイブリッドタイプのレーダー方式を採用するメーカーも多くなってきています。

 

自動ブレーキのパイオニア、スバル「アイサイト」

アイサイトは自動ブレーキの代名詞!(出典:スバル)

初期の自動ブレーキは「衝突被害軽減ブレーキ」の名が示す通り、自動的に停止するものではなく、あくまで運転者がブレーキを踏んだ状況で、その踏力をアシストすることで被害の軽減を図るものでした。じつは自動停止は自動ブレーキの過信の心配から法で規制されていたのです。

しかし2010年にアイサイトを装備したスバルレガシィの販売開始と時を同じくして自動停止の規制も撤廃されることとなったのです。

スバルが自動ブレーキを採用したころは他の自動車メーカーは採用に及び腰で、スバルのアイサイトだけが独走するような状況がしばらく続きました。そのようなことから、今でも自動ブレーキと言えば「アイサイト」と感じる方も多くなっています。

強い信念をもって唯我独尊とばかりに各社に先行して開発に没頭した結果、自動ブレーキの性能は群を抜いているということができるレベルの仕上がりです。

各メーカーの自動ブレーキ車を集めた実験では、スバル以外の車がたびたび衝突してしまうのに対し、スバルの車は完璧に近い成績で性能の違いを見せつけました。

ミリ波レーダーを用いず、安価な光学ステレオカメラタイプを採用しているにも関わらず、国交省主導の試験で最高評価を得たのには驚きを隠せません。

 

最後列スタートのトヨタは自動ブレーキにもヒエラルキーが…

車格によって性能に差が付くトヨタの自動ブレーキ…

意外なことですが、トヨタが自動ブレーキの本格採用に踏み切ったのはごく最近のことで、国内自動車メーカーの中でも最も遅い対応と言えるほどに消極的でした。採用初期はレクサスなどの一部高級グレードのみの設定で、かたくななまでに普及グレードへの採用を見送ってきたのは、ミライなどの水素自動車などに積極的に開発資源を振り向けるトヨタにしては疑問符が残ります。

ちなみにトヨタ自動車の自動ブレーキはミリ波レーダーから赤外線まで、搭載する車の車格に合わせるがごとく、いくつかのパターンが設定されています。高級グレードには高性能な自動ブレーキを、エントリーグレードには簡易的な自動ブレーキを搭載し、見事に車格ヒエラルキーを順守しています。

ある意味すごい割り切りですが、その姿勢は賛否両論あると言えそうです。

 

日産は急速に自動ブレーキを搭載する方向へ

近年本格参入の軽自動車にも自動ブレーキを採用

日産は、最近自動ブレーキをかなり積極的に導入してきています。三菱自動車と合弁会社を立ち上げて軽自動車にもかなり力を入れている日産ですが、その軽自動車に対しても自動ブレーキを続々導入しているのです。

とくにエクストレイル、ノート、セレナ、スカイラインはJNCAP予防安全性能評価において最高の評価の「先進安全車プラス」(ASV+)を受けています。その中でもスカイラインについては満点を獲得と、極めて高い評価となっています。

日産の自動ブレーキはエマージェンシーブレーキの名称が付いていますが、新型ミリ波レーダー、シングルカメラ、赤外線レーザーの3方式が含まれています。

やはり、ここはトヨタと同様に、高級車ほど高性能な自動ブレーキシステムを搭載する方向性のようです。下位グレードでは同じ名称でも簡易タイプの自動ブレーキとなりますので、こだわる方は注意が必要でしょう。

 

「ホンダセンシング」で逆転を誓うホンダ

ホンダの自動ブレーキは2013年から本格化

ホンダの自動ブレーキの歴史は2003年の追突軽減ブレーキまでさかのぼりますが、本格的な自動ブレーキの採用は2013年まで待たねばなりませんでした。

他社も搭載する方向なので止むを得ずという開発姿勢が表れてしまったせいなのかは定かではありませんが、国交省の自動ブレーキテストの試験では残念ながら散々な成績に終わってしまいました。

機械の判断で車を完全静止させることに躊躇してしまったホンダは、完全に開発競争に出遅れてしまう結果となったようです。

スバルのアイサイトに完膚なきまでに叩きのめされたホンダ開発陣のショックは相当なもので、逆転をかけて「ホンダセンシング」という光学カメラとミリ波レーダーのハイブリッド新運転システムの開発を開始しています。

最高級セダンからの搭載となりますが、今後順次下位グレードへも搭載されてゆくことでしょう。期待したいところです。

 

スズキも積極的に自動ブレーキ搭載を推進!

ついに軽自動車にも自動ブレーキ装備の流れが…

アイサイトがその名を轟かせてからわずか数年で、自動ブレーキ普及の波は軽自動車界にまで押し寄せてきています。現状ではメーカーオプション扱いであったりもしますが、自動ブレーキの車を選択できるというのはやはり大きな時代の変化を感じざるを得ません。

ABSやエアバッグが最廉価軽自動車にまであっという間に標準装備されていったように、今まさに自動ブレーキも標準搭載化の渦中にあると言えるでしょう。

 

まとめ

人間のミスは100%防ぐことは不可能です。人命がかかる車に、機械の力で安全をプラスできる自動ブレーキが普及するのは当然の流れであると言えるでしょう。近い将来非自動ブレーキ車の存在が危ぶまれるほどに、急速に普及していくのは当然であるとともに望ましいことであると言えるのではないでしょうか。

それにしても、自動ブレーキひとつをとってみても、メーカーの姿勢が透けて見えるのは非常に興味深いことと感じます。車を選ぶ際にはそのあたりにも目を向けてみると良いかもしれませんね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました