題して“素人が板金塗装にチャレンジしてみた”です。
読者の皆様もうっかり車を擦ったりぶつけたりした経験がおありかと思います。
その程度が、我慢できてしまうくらいだとまだいいのですが、例えば運転席側ドアが開かなくなるくらいだったらどうでしょうか?
さすがに、次の買い替えまで放置するというわけにはいきませんよね。
そんな時に思いつく選択肢として、ディーラーに持っていくか町の板金工場に持っていくなどが上がると思います。
どちらにせよ“プロに依頼する”の一択な方が大多数ですよね。
ここで、“自分で修理してみよう“と思い立った友人がいます。便宜上ここでは、Rくんということにさせてください。
Rくんと車
Rくんは、もちろん車のプロではありません。職業はアフィリエイターで、インターネットのプロです。
車に関してはヘッドライトの丸い車が好き!と言う以外には、これと言って特別な思い入れのないタイプの若者です。
日曜大工が好きで、手先の器用さや道具の扱いには少しだけ自信があったことと、自由な時間が人より多かったことも自分で修理し始めた理由と言えそうです。
Rくんが今回ぶつけてしまった車は、2004年式BMWのミニONEです。
車検が2017年8月までとなっており、そろそろ車が不要になってきたため車検残があるうちに売却してしまおうと考えていた矢先の出来事でした。
車の売却を検討しているということは、すでにオーナーの気持ちはその車から離れています。
気持ちが離れることで、運転がラフになり注意を怠る傾向にあることは有り得る話ではないでしょうか。
事故当時Rくんは、地域のボランティア活動に参加中で、人の送迎をしていた際にうっかり駐車中の他の参加者の軽トラックとぶつかってしまったそうです。
相手の車が軽症だったことや同じボランティア仲間ということで、軽トラック側への損害賠償は不要だったそうです。
今回の場合は運よく相手方への賠償は不要になりましたが、いつもそうなるとは限りません。
修理方法を検討する際には、相手との過失割合と自身の保険契約をよく比較検討することが大切です。
Rくんは、購入価格も安く低年式で走行距離も多かったことから車両保険には未加入でした。ですので、少しでも修理代金を節約することを考えればよいということです。
なお、ボランティアとはいえ業務中の事故だったということで、主催者団体とも何らかの保障ができないかを調整中とのことです。
損傷の確認
BMWミニONEについた傷は次の画像の通りです。
修理方法を検討する前に、まずは損傷箇所や程度の確認を入念に行います。
酷い擦り傷に見えて、実は相手の塗料が付着しているだけだったり、コンパウンドで少し磨くだけで消えてしまったりすることもよくあることです。
また、逆に部分的には傷に見えなくても、その周辺全てが凹んでしまっているなんてこともあります。
例でいいますと、ドアミラーを押されたためにドアミラーの根元を中心として円状にドア全体が凹むことがよくあります。この場合、素人目には凹みがわかりません。
それでは、今回のBMWミニONEの場合はどうだったでしょうか?
- ドアミラー
見たままですが、根元からぽっきりと折れてしまっています。 - ドアパネル
ただの擦り傷ではなく、大きく凹んでしまっています。 - ドア内部
ドアをきつくヒットしてしまっているせいで、ウィンドウレギュレータのレールが曲がってしまい窓の開閉が不可能になっています。
ドアパネルが引っ張られた衝撃からかドア開閉スイッチが機能しなくなっているため、運転席側のドアが開け閉め不可能です。
修理が終わるまではセンターコンソールを跨いで助手席から乗り降りするしかありません。 - リアクオーターパネル
リアフェンダーにあたる部分のことです。ドアパネルに引き続き大きく複雑に凹んでいます。 - リアフェンダーモール
黒い樹脂製のリアフェンダーモールにも擦り傷がついてしまっています。少し磨けば落ちるかもしれません。
作戦
もちろん全てを板金塗装で復元するには相当な労力と時間を要します。そこで、作戦を立てました。
うっかりぶつけてしまったRくんとBMWミニONE。
方針が決まったところで、部品の調達や修理の様子を見ていきましょう。
交換部品の調達
交換用の部品調達難易度は車種によって大きく異なってきます。
販売台数の多い車はもちろん部品も多く出回っていますし、台数が少なく高額な車種となると部品価格も必然的に高くなります。
今回のBMWミニONEは販売台数も多く新車価格も安価だったため、安く部品を調達することができました。
ヤフオクでたくさん出回っていたため待つこともなくすぐに入手可能でした。
なお、中古部品を調達する際のコツとしては、可能な限り大きく購入するということです。
例えば、今回はドアパネルとドアミラー、ウィンドウレギュレータが必要ですが、これらを一つ一つ購入するのとまとめて購入するのでは価格も作業量も大きく異なります。
例)
ドアAssyとして出品されているものの中から、おまけとしてドアミラーやウィンドウレギュレータや内装まで取り付けられたままになっているものをパネルのみより高めの15,000円+4,000円で購入したとします。
次に、それぞれが単品だと大抵は次の価格帯です。
- ドアパネル:8,000円+送料4,000円
- ドアミラー:3,000円+送料2,000円
- ウィンドウレギュレータ:5,000円+送料1,500円
- 合計:部品16,000円+送料7,500円 = 23,500円
結果的には、部品代そのものも高くなってしまう上に送料も何重にも余分に払うことになり4,500円の損をしてしまうことになります。
また、内装等今回は不要なものについては、再販することも可能です。
作業の模様
① 内装取り外し
リアクオーターの板金をするためにもドア交換のためにもまずは内装を取り外す必要があります。
インターネットで調べると車種毎に応じた内装の取り外し方をブログ等にアップされているページがありますので、それらを参考に作業します。
無理やりひっぱったりせずに丁寧な作業を心がけましょう。
② 板金
麺棒などの当て木とゴムハンマーを準備します。
膨らませたい凹みに裏から当て木をして、ゴムハンマーで叩き出します。
一気に膨らませずに周辺や傷のない反対側のラインをよく確認しながらゆっくり少しずつ叩き出します。
③ 塗装削り
パテや下地の食いつきをよくするために新たに塗装する範囲にある元の塗装を削り落とします。
新車から1年程度の車ですらボディの部位による色の違いがわずかにあるくらいですので、できるだけパーツ単位で再塗装することをお薦めします。
耐水サンドペーパーを使い、目の荒いもので粗方削れたら目の細かいもので仕上げをします。
④ パテ盛り
凹みの大きな箇所から順にパテを盛っていきます。
一気に大量のパテを盛ると中が乾かなかったり、ひび割れたりする原因にもなるので、少量を複数回に分けて塗り重ねます。
後で削るため、多めに盛っておきます。
⑤ パテ削り
パテの不要な部分を削り落とします。
固めのスポンジや当て木に耐水サンドペーパーを巻きつけ均一にならすように削っていきます。
ここでしっかりと表面を作ってしまいましょう。
指でなぞって周辺の凹凸やラインとの合いを確かめながら作業します。
⑥ マスキング
マスキングテープを使って、塗料がついてはいけない部分を保護します。
⑦ 下地塗装
塗装の前に、サーフェイサーと呼ばれる下地塗料を塗っていきます。
厚く塗る必要はないので、均一にムラなく塗ることを心がけてください。
⑧ 塗装
いよいよ塗装です。
一気に厚く塗ることを考えず、薄く丁寧に何度も塗り重ねていくことが大切です。
一度に大量の塗料を吹きかけるとタレができてしまい即失敗につながりますのでご注意ください。
ボディーカラーの塗料を塗り終わったら、最低でも丸1日は乾燥させてください。
その後、クリアーコートを施し、コンパウンドで光沢を出して仕上げます。
⑨ 部品交換
板金が終わったら、ヤフオクや中古パーツ屋等で購入しておいた中古ドアと交換します。
古いドアからキーシリンダー等必要なパーツを取り外し、新しいドアに移植します。
⑩ 内装取り付け
最初に取り外したのと同じ手順で内装を取り付けて完了です。
いくらの節約になったのか
読者の皆様が一番気になる部分かと思います。
ここまでの作業に一体どれだけの労力が必要で、それに見合うだけの節約効果があったのか発表したいと思います。
約2週間程度必要でした。1日あたりの作業時間を5時間と過程すると、約70時間となります。
・プロによる修理見積もり(板金塗装、ドア・ドアミラー・ウィンドウ交換)
超概算見積もりではありますが、約20万円でした。(念のため複数社依頼したもののほぼ同じ結果でした。)
・かかった費用
部品代:ドア+ドアミラー+ウィンドウレギュレータ = 25,000円
道具代:当て木+ゴムハンマー+サンドペーパー+パテ+下地+塗料+クリア = 約12,000円
金額だけをみれば、163,000円浮かすことができました。
時間さえ潤沢にあるのなら一度チャレンジしてみることをお薦めします。
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