「オイル交換お願いします!」
ガソリンスタンドやディーラーで飛び交っている皆さんもよく聞くワードではないでしょうか。
しかし、このオイル交換が一体どんな作業なのかきちっと理解している方は少ないと思います。オイルは車にとって血液のようなものです。人間にも血液検査があるように、車のオイルも定期的にチェックし、時期に応じて交換する必要があります。
またこのオイル交換、なんとなく素人では難しくて出来ないのでは?なんて思っている方も多いと思います。しかしそんなことはありません。
きちっと知識と方法も学べば1~2時間で出来てしまいます。
今回はエンジンオイル交換、そしてフィルター交換について優しく解説します。
エンジンオイルってそもそも何?
エンジンは車の心臓と言えます。エンジン内で起きた爆発の力を利用し、車は動いています。当然ですがエンジンが止まれば車も止まります。
この金属の塊であるエンジンを守っているのがエンジンオイルなのです。
ちなみに普段カバーによって隠れているエンジンですが、開けてみるとこんな感じになっています。
エンジン内がオイルにより満たされている様子がわかるでしょうか?
ではここで言う守っているとは、具体的にどういうことなのでしょうか?
エンジンにおけるエンジンオイルの役割には具体的に以下の5つがあります。
「潤滑」
これが最も重要な役割です。金属の塊であり、1秒間に数百・数千という往復運動をするエンジン。エンジンオイルがなければエンジンは金属同士の磨耗によりあっという間にダメになってしまいます。エンジンが永続的に安定して動き続けるにはこのオイルによる潤滑作用が不可欠といえます。
「洗浄」
続いては洗浄効果です。
オイルには潤滑作用があるとは言いましたが、金属の塊であり、且つ高速運動を繰り返し続けるエンジン内部では金属のスラッジ(ゴミ)や煤がどうしても発生してきます。
この金属ゴミであるスラッジや煤を除去し、一箇所に集まらないよう分散しているのがオイルの役割です。
「冷却」
続いては冷却作用です。エンジンはガソリンの爆発により動力を生み出すだけでなく、大量の熱も生み出しています。この熱によりエンジンが高熱になりすぎないようにオイルがエンジンの熱を放出し、冷却しているのです。
「防錆」
続いては防錆効果です。金属とサビは切っても切り離せません。サビの大好物は酸素と水です。エンジン内がオイルで満たされパーツ一つ一つを覆うことで、この酸素と水が金属に付着するのを防いでくれているのです。
「密閉」
最後に密閉の効果です。
エンジンの爆発は、具体的に言うとエンジン内のピストンとシリンダーの間で起こっています。
ピストンとシリンダーは完全にくっついていると正しい上下運動はできませんし、逆に間が開いていると爆発のエネルギーが逃げてしまいます。そのピストンとシリンダーの微妙な隙間を埋めているのがエンジンオイルです。エンジンの爆発の力を外には逃さず、かつピストンとシリンダーがスムースに動けるようにしているのです。
オイルフィルターってそもそも何?
続いてオイルフィルターです。
オイルフィルターの役割はエンジンオイルとは切っても切り離せません。
名前にフィルターとついているのでおそらく想像がつく人もいるかと思います。
オイルフィルターとは、エンジンオイルにより除去され運ばれてきたエンジン内のスラッジ(ゴミ)や煤を濾し取る、濾過する働きをしています。
このフィルターがエンジンオイルのスラッジ(ゴミ)や煤を綺麗にしてくれることで、エンジン内のオイルは常に健康な状態でいることができます。
またオイルフィルターには大きくカートリッジ式とエレメント式があり、前者はフィルターとカバー(ケース)が一体になったオイルフィルターで、後者はフィルターとカバーが別々になっており通常フィルター部分だけを交換していくタイプのオイルフィルターです。
エンジンオイルとオイルフィルターはなぜ交換しなければいけないのか?
オイルは経年で劣化し、黒くドロドロとしてきます。
またオイル量自体も減っていきます。
そのような状態では「潤滑」「洗浄」「冷却」「防錆」「密封」の5つの機能が正常に行われず、エンジン自体に大きなダメージが与える可能性が高まります。
フィルターも時間の経過とともにスラッジ(ゴミ)や煤がたまり続け、いつかフィルター自体が目詰まりします。
上記のようにフィルターが濾過機能を失うと、当然スラッジ(ゴミ)や煤が回収されずオイルの劣化が急速に高まり、必然的にエンジン自体への負担も増大します。
エンジンオイルの交換時期
さて、それほどまでに重要なエンジンオイルですが、どんなタイミングで交換すれば良いのでしょうか?
エンジンオイルは消耗品なので、必ず時期がきたら交換する必要があります。
車種によっても異なりますが、一般的にオイル交換は1年に1回行うのがベストと言われています。
距離で言うと1万5千km程度で交換するのが良いとされています。
上記はもちろん異常がない場合です。定期的なオイルチェックを行い、オイルに異常があればもちろんその段階で交換する必要があります。
オイルフィルターの交換時期
続いてオイルフィルター(オイルエレメント)の交換時期ですが、こちらは時間や距離ではなく、オイル交換2回のうちの1回はフィルター交換を行うのが目安とされています。オイル交換が1年に1回なので、計算から言えばオイルフィルター(オイルエレメント)の交換目安は2年に1回ということになります。
エンジンオイルの選び方
国産車の場合、最も確実なのはオートバックスなどの大手車用品店へ行って店員さんへ聞くのが良いでしょう。
エンジンオイルは種類が多く特性も様々なので、自分でネットで調べたり、ディーラー&整備工場などで取捨選択が出来なければ上記の方法が最も確実です。ちなみにオイル自体の価格はネットで買うのが最も安いですが、送料の問題があるので、ネットと大手車用品店にそこまで価格の開きはないように思います。
大手車用品店へ行くと、交換も一緒にどうですか?とかより金額の高いオイルを進められることがあります。
また、車の車種(排気量やグレードなど)、どんな走らせ方をするか?どんな気象条件のもとで走らせるのか?によってオイル選びは変わってきます。
オートバックスなどにいくと上記のようなことをスタッフから聞かれますので、そこで受け答えしながら決めていけるので、特に初心者にとってはより確実かと思います。
またガソリンスタンドでという方法もありますが、スタンドの場合交換も込みという場合が多く、取り揃えているオイルの種類も少ないです。
ちなみにエンジンオイルのパッケージはこんな感じです。
それではここで自分の車に合うオイルを選ぶためのポイントをいくつか紹介してみたいと思います。ポイントは商品の表面パッケージに記載されていることが多いので、写真を参照にしながら確認してみて下さい。
「粘度」
まずは粘度です。文字通りオイルの「粘り度合い」のことを言います。
ちなみにオイルには、気温が寒いところほどオイルは硬くなり(粘度が高い)、暑いところほどオイルはサラサラ(粘度が低い)になるという特性があります。
オイルは硬すぎてもいけず、逆にサラサラすぎてもいけません。
ちなみにオイルの粘度は、商品パッケージに10W−40のように表記されています。
この数字のWとはWinter(冬季)の意味で、寒冷時を表しています。
Wの前の数字が低ければ低いほど、より寒い気温の中でもサラサラしていますよということです。逆に40の部分は数字が高ければ高いほど、より暑い気温の中でもオイルは硬さを維持できますよという事を表しています。
5W−50のようなエンジンオイルはワイドレンジオイルと言われ、寒い場所でもサラサラ度合いが高く、逆に気温が高い場所でもある程度硬さを保持してくれるというものです。
要はどんな気温でも対応できる幅が広く、その分高価になります。
車をメインで使用する場所が寒冷地なのか、それとも温かい地域なのかを念頭に粘度を参照にしてオイルを選んでみましょう。
「ベースオイルの種類」
続いてはベースオイルの種類でもエンジンオイルを選ぶ事ができます。
ベースオイルとは簡単に言うと、元となるオイルを種類や精製方法で分けたもので以下の3種類あります。
- 100%化学合成油
- 部分合成油
- 鉱物油
100%化学合成油とは:
最上級グレードオイル。車の為に100%人工的に作られたオイルなので、始動性、寒冷地、スポーツ走行、劣化しにくい等どんな状況でも最高のパフォーマンスを発揮するオイル。ただし値段が高価。
部分合成油とは:
化学合成油と鉱物油の良いとこ取りをしたオイル。
よって価格はちょうど中間。揮発性が高いという鉱物油の弱点を化学合成油を用いることで補っている。
鉱物油:
原油から抽出されたオイル。よって価格は最も安価だが、始動性、寒冷地、スポーツ走行、劣化度などは上記2つに比べ劣る。
「品質規格」
最後に品質規格です。エンジンオイルにはAPI(アメリカ石油協会)という団体とILSAC(日米自動車工業会)という世界的な団体が決めたエンジンオイルの品質があり、それにより分類されています。
ちなみに分類の仕方はSJ SL SM SNの4種類で、SJ→SL→SM→SNの順で品質は上がっていきます。SNが最上位規格になります。
以上の3点がオイル選びのポイントになります。
ぜひ自分の車種やどんな走らせ方をしたいのかを頭に入れながら選んでみて下さい。
オイルフィルターの選び方
続いてはオイルフィルターの選び方です。
オイル漏れの心配もあるので、原則とにかくその車種にあった型番を選べば間違いないかと思います。
さて選び方ですが概ね2つあります。
- ディーラーや整備工場へ確認する
- 大手車用品店及びガソリンスタンドで調べる
オススメは2つ目の大手車用品です。車用品店ではスタッフに聞いたり、売り場にあるフィルター適合表を見るのも良いですが、各大手車用品のホームページでも適合検索を掛けられますので、それで事前に調べてからいくのが良いと思います。
オイルのチェック方法
それは、オイル状態をチェックすることです。
どうせこの後交換するのだからチェックしなくてもいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、それは違います。
交換してしまった後では分からないこともあるので必ず、オイル交換の前に現状入っているオイル状態を必ずチェックしましょう。
エンジン下にあるこのつまみをひっぱるとオイルゲージが出てきます。
オイルゲージの先端についたオイルで以下の2点を必ず把握しておきましょう。
「オイルの色と粘土」
オイルの色と粘土をチェックしましょう。オイルの色が真っ黒で、ドロドロになっていたらそれは完全な交換時期です。ここで重要なのは前回のオイル交換から、どのくらい時間が経ってこうなったのかということです。
前項で説明したオイル交換時期を参照にして、交換時期よりもあきらかに早くオイルの劣化が進んでいる場合は、エンジン本体や排気機構そのものに異常がある、またはオイルの選び方が間違っている可能性があります。
「オイルの量」
続いてはオイルの量も必ずチェックしましょう。
写真の通りゲージのMINとMAXの間にあれば適正量です。
ちなみにチェックしてみて、色と粘土は正常で交換時期もきていない、だけど量だけは減っているという場合はオイルの補充だけするというケースもあります。
しかしここでも前回のオイル交換からどのくらい時間が経ってこうなったのかという部分が重要です。交換時期よりもかなり早く減っている場合、最も考えられる原因はオイル漏れです。駐車場等にオイル漏れの跡がないでしょうか?
もう一つ早くオイルが減る理由としてオイル焼けがあります。よくマフラーから白い煙を出しながら走っている車を見たことがないでしょうか?そういう車は高い確率で、オイルが何らかの理由でエンジン内に侵入してしまい、オイルが燃焼してしまっている可能性があります。
上記のようなことはオイルを捨ててしまえば分かり得ません。
必ず、オイル交換をする前にチェックしておきましょう。
エンジンオイルとフィルター交換の方法
事前準備と知識さえあれば、そこまで難しい作業ではありませんので是非参照に挑戦してみてください。
準備するもの
それでは最初に作業に必要なものをご紹介します。
車整備をしていると「やっぱり道具は道具だ」という言葉がよく聞かれます。
やはり、それ専用に作られた道具を正しく使えば、作業の効率・確実性がグッとあがります。まずは以下のものを準備しましょう。
- グローブ(手袋)
- ウェースペーパー
- カージャッキ
- ジョーゴ(または計り)
- ドレンボルトワッシャー
- オイル受け(オイル用ゴミ箱)
- レンチ(ドレンボルトに合うもの)
- フィルターレンチ(フィルターの形状に合うもの)
※新規オイルと新規フィルターは写真では割愛します。
最後のフィルターレンチが聞きなれないかもしれませんが、フィルターを回して外す際に使うレンチです。前述したオイルフィルターの形状によってレンチの形状も変わります。今回は通常のレンチを使います。状況によっては人力のみで回して外せることもありますが、できれば専用レンチを使った方がよいです。
また、オイル受け(オイル用ゴミ箱)についてですが、バケツなどを使う人もいます。自分としては後のオイル処理の手間を考えると、ホームセンター等で売っているオイル用ゴミ箱を購入することをおすすめします。古いオイルを受けたら、その後そのままゴミとして出せます。オイル用ゴミ箱には必ず許容量(リットル)が記載されていますので自分の車輌のオイル量にあったものを選びましょう。ちなみにエンジンオイルはこぼすと後処理がかなり大変です。
新規オイルについても、自分の車のエンジンオイル容量をしっかり確認し購入しましょう。
ドレンボルトワッシャーとはオイルパンのオイル排出口に使われているボルトのワッシャーです。
作業前の注意点
事前準備が出来たら続いては作業前の注意点です。
以下の4つを確認してから作業して下さい。
- 車輌を平で地が安定した場所に停め作業する。
- エンジンは停止、Pまたはニュートラルに入れサイドブレーキを引いて作業する。
- 交換の前にオイルチェックを行う。
- エンジン停止後、10分は置いてから作業する。
ちなみに4つ目の10分間置く理由として、エンジン稼働中はエンジン全体にオイルが循環しているので、エンジン停止後10分待つことでこのオイルがエンジン下のオイルパンに落ち切るのを待つというのがあります。
作業①オイルを抜く
それではここからオイル交換の具体的な作業に入っていきます。
まずは現状入っているオイルを抜く作業からです。
エンジンオイルは大抵エンジン下のオイルパンに貯まっています。
このオイルパンの下に写真のようなオイル排出口ボルト(ドレンボルト)がついています。
オイルパンやドレンボルトの位置が分からなければ、必ず事前にネットやディーラーで確認しておきましょう。
車の前部をジャッキアップし、オイルパンの排出口(ドレンボルト)下にオイル用ゴミ箱をセットします。
上記まで行ったらドレンボルトをレンチを使って緩めていきます。
ボルトとレンチのサイズを事前に確認しておきましょう。
ひたすら緩めていくと徐々にオイルが滴ってきます。
そうなったらレンチは使わず手を使って回してドレンボルトはずしましょう。
完全にドレンボルトが外れると一気にオイル「ドバっ」と出てきます。
あとはオイルが完全に落ち切るのを待つのみです。時間にしたら10分程度で良いと思います。オイルが落ち切ったら今と逆の作業をしていきます。
まずはドレンボルトを絞めますが、しめる前にボルトについているワッシャーを新しいものに交換しましょう。
このワッシャーは、ドレンボルトを締めた際にボルトとオイルパンの間を埋めてくれるので、密着度が増しオイル漏れなどを防いでくれます。一度使ったワッシャーは形が変形してしまっていて効果が弱いので、できれば新規のものに取り換えましょう。
ボルトを絞めたら、車をジャッキダウンします。ボルトは締めすぎ注意です。
ちなみに廃油が入ったゴミ箱は、車の近くに置かないようにしましょう。
作業中に踏んづけたり、蹴ってこぼしたりすると最悪です。
作業②フィルターを外す
上記まで出来たら次はフィルター(エレメント)を外します。
ここで注意ですが、上記のオイルを落としている最中にフィルター交換をする場合は必ず車をジャッキダウンしてから行って下さい。
フィルターを外す際はかなり力を使ってフィルターを回すので、その際カージャッキがバランスを崩して外れてしまうことがあるかもしれません。そうなると大変危険です。
フィルター(エレメント)は以下のように取り付けられています。
外し方はシンプルで回して取るのですが、かなり強い力で回す必要があります。
その時使うのが、フィルター用のレンチです。
写真のようにしてフィルターにはめることで力を加えやすくなりますので、そこでグッと力を入れてまわして取ります。
ちなみにフィルターがカートリッジ式とエレメント式か、またはエンジンルームのどの位置に設置されているかにより、使用する道具は分かれます。
今回使う通常レンチ以外では、通常下の写真のような道具を使うようなことも多いです。
またフィルターが外れると必ずフィルター内に残っていたオイルがこぼれますので、ウェースなどでふき取るようにしましょう。
以下が取り外したオイルフィルターです。
今回はエレメント式ですので中のフィルターだけ交換します。
作業③フィルターを取り付ける
続いて新規のフィルターを取り付けます。取り付ける前に上の写真の部分に、オイルを塗っておきます。そうすることで密着度が上がり、オイル漏れを防ぐことができます。
取り付け方は、外した際の真逆を行えばOKです。絞めすぎには注意しましょう。
作業④オイルを入れる
新規のフィルターを取り付けたら次は、新規のオイルを入れていきます。
今一度、ドレンボルト、フィルターがきちっとしまっているか確認しましょう。
オイルはジョーゴまたは計りを使って入れるのが良いです。ポイントは計りを使い(またはそれに代わるもの)、何リットルか確認しながら入れることです。オイル量は各車輌で決められた適正値があるので、多すぎても少なすぎてもいけません。
作業後の確認事項
エンジンオイルとフィルター交換の作業は以上になりますが、交換後は確認事項がいくつかあります。
まずはエンジンを始動させ数分間まわします。オイルがエンジン全体に回るのを待って、その状態でアクセルをふかし、音や振動に異常がないか確認します。
次に、エンジンは回したまま外に出てオイル漏れがないかチェックします。
特にオイルパンのドレンボルト部分、フィルター部分から滲みや漏れがないかチェックしましょう。
まとめ
エンジンオイルやフィルターは消耗品です。定期的に交換しなければ他の機構へ大きなダメージを与える可能性があります。特にエンジンへのダメージは深刻ですので、オイルの状態は車の健康のバロメータだと思って、こまめにチェック・交換を行いましょう。
またオイル交換やフィルター交換自身にも重要な意味がありますが、オイルというものの正体を自分の五感で学ぶことができるので、そういった意味でもオイル交換作業は重要です。
オイルに異常がある車は間違いなく、他のパーツからの影響でそのような症状が出ているからです。
是非皆さまもチャレンジしてみて下さい。
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