「第二次スーパーカーブームが到来しています!」
間違いなく来ています。みなさまも肌で感じてはいませんか?
例えば、CMに凄いデザインの車が使われることが多くなった、バラエティ番組で芸能人の愛車紹介を見かけるなどなど。
興味ない方ですら否応なく目にしていることと思います。
興味がある方にとっては、最早当たり前かもしれませんね。
11月11日のスーパーカーフェスティバル@お台場や九州のメガスーパーカーフェスティバル、東京ドームでのスーパーカーショーなど日本各地でスーパーカー展示が開催されており、それはまさに70年代に空前のブームを巻き起こしたスーパーカーショーと酷似しているではありませんか。
これを第二次スーパーカーブームと言わずに何と言いましょうか?
これさえ見れば知らなかった皆様も乗り遅れずにすみますね。
○70年代第一次スーパーカーブームの中心となった車達
70年代日本で巻き起こったスーパーカーブーム。
当時の子供たちは朝から晩までスーパーカーに夢中になっていました。
そもそもスーパーカーの定義とは何なのでしょうか?
2シーターであること?
ミッドシップであること?
最高速度が速いこと?
かっこいいデザインであること?
実はスーパーカーであることに明確な定義は無いのです。
では一体どのような車がスーパーカーなのでしょうか。
今回は70年代に人々を魅了したスーパーカーを紹介します。
■ランボルギーニ カウンタック
スーパーカーと言えば真っ先にこの車の名が挙がる人は多いのではないでしょうか。
前衛的で角張ったフォルム、地面すれすれの車高の低さ、翼のようなガルウイングドア(正しくはハサミのような形状のためシザースドア)。
ベルトーネの奇才と呼ばれたマルチェロ・ガンディーニのデザインと、天才設計技師パオロ・スタンツァーニの発想は全ての人々を魅了します。
まさにキング・オブ・スーパーカーとしてふさわしい一台です。
スペック
- ホイールベース:2,450mm
- 全長×全幅×全高:4,140×1,890×1,070mm
- 最高出力:375hp/8,000rpm
- 最大トルク:36.8kg-m/5,500rpm
- 最高速度:300km/h
- エンジン:3,929cc水冷60度V型12気筒DOHC24バルブ
■ディーノ246GT
小ぶりな車体に小さなV6エンジンを搭載し、フェラーリとしては初めてV型12気筒以外のエンジンを載せたディーノ。
そのスタイリングはフェラーリ史上最も美しいとさえ言われています。
実はこの車の名前は24歳の若さで他界してしまった創始者エンツォ・フェラーリの長男であったアルフレッドの愛称に由来します。
他のフェラーリとは一線を画した特別な車なのです。
その証拠にボディのどこにもフェラーリのエンブレムは見当たりません。
スペック
- ホイールベース:2,340mm
- 全長×全幅×全高:4,240×1,700×1,135mm
- 最高出力:195hp/7,600rpm
- 最大トルク:23.0㎏-m/5,500rpm
- 最高速度:238㎞/h
- エンジン:2,418cc水冷65度V型6気筒DOHC
■フェラーリ 365GT4BB/512BB
当時カウンタックの対抗馬と言えばこの車、ベルリネッタ・ボクサー。
それまでのフェラーリのフラッグシップと言えば、V12エンジンをフロントに積んだ後輪駆動(FR)という常識を覆し、GTカー用12気筒エンジンをミッドシップにレイアウトしました。
カウンタックと肩を並べる実力を持っていたため、当時の子供たちはライバル対決に夢中になりました。
先に出たカウンタックLP400が最高速300km/hをスペックシートに掲げれば、フェラーリはこの365GT4BBで302km/hをうたうと言う徹底ぶりです。
- ホイールベース:2,500mm
- 全長×全幅×全高:4,400×1,830×1,120mm
- 最高出力:360hp/6,800rpm
- 最大トルク:46.0kg-m/4,300rpm
- 最高速度:302km/h
- エンジン:4,942cc水冷180度V型12気筒DOHC
■ランチア ストラトス
70年代前半に現れたストラトスは、ラリーで勝つことだけを目的に設計された異色のスーパーカーです。
なぜこの車が人気になったのかというと、実はこの車のデザインもまた、ベルトーネ在籍時代のマルチェロ・ガンディーニが手掛けたものでした。
奇抜でスーパーカーらしいデザインは、カウンタックの兄弟として子供たちの心をわしづかみにしたのです。
- ホイールベース:2,180mm
- 全長×全幅×全高:3,710×1,750×1,114mm
- 最高出力:190hp/7,000rpm
- 最大トルク:23.0㎏-m/4,000rpm
- 最高速度:230㎞/h
- エンジン:2,418cc水冷65度V型6気筒DOHC
■ロータス ヨーロッパ・スペシャル
70年代スーパーカーブームを語るに欠かせないのが、当時の子供たちのバイブル「サーキットの狼」。
ヨーロッパ・スペシャルは価格や性能的にはスーパーカーとは言えませんが、主人公が乗っていたことで絶大な人気を博しました。
たとえマンガの中とはいえ、数々のスーパーカーを打ち負かしてきたこの車は、子供たちの心の中でまぎれもないスーパーカーでした。
- ホイールベース:2,340mm
- 全長×全幅×全高:4,000×1,635×1,080mm
- 最高出力:126hp/6,500rpm
- 最大トルク:15.6㎏-m/5,000rpm
- 最高速度:200㎞/h
- エンジン:水冷直列4気筒DOHC
今回紹介した車以外にも70年代には魅力的な車が数多く登場しました。
ご覧になってわかる通り、スーパーカーというものは単なる数値では定義できません。
あえて定義づけるのであれば、
「人々の心に突き刺さるドリームカーであること」
これこそが子供たちの夢見たスーパーカーなのではないでしょうか。
○第二次スーパーカーブーム到来の立役者でもある新興メーカー
今回巻き起こった第二次スーパーカーブームは、ブガッティ・ヴェイロンを筆頭とするハイパーカーと呼ばれる新たな市場の登場が発端となった節があります。
そこで、新興メーカーとしてしっかりした地盤を築きつつあるメーカーを中心にみていきましょう。
■ブガッティ・オートモビル
1900年代初頭にイタリア出身のエットーレ・ブガッティ氏が設立した、伝説的なスポーツカーメーカーが元となっています。
その後100年近い月日を得て紆余曲折の末、現在はにォルクスワーゲングループ傘下のブランド「ブガッティ・オートモビル」(以下ブガッティ)として存在しています。
そんなブガッティを代表する一台と言えば、2005年に彗星のごとく現れた「ヴェイロン」でしょう。
車好きなら誰もが一度は聞いたことのある名前ですが、その名を一躍世に知らしめたのが、スーパーカーとして最も大事な要素の一つ、最高速で当時ギネス記録を獲得したことでしょう。
史上初、市販車として1000ps、時速400km超えを達成したスーパーカーとして強烈なイメージを築きました。
価格も当時としては驚異の約1億6000万円~3億円という設定でしたが、世界最速の称号は富裕層の心に突き刺さり、限定450台はあっという間に完売となりました。
こうしたヴェイロンの成功はスーパーカー市場に新しいニーズを開拓し、新旧のスーパーカーメーカーに新たなハイエンドステージをもたらしたのです。
これはまさに第二次スーパーカーブームの最初の火種と言えるでしょう。
なお、余談ですがブガッティ・ヴェイロン購入者は平均して70台の車と自家用ジェット機、超豪華クルーザーを複数艇所有しているそうです。
確かにフォルクスワーゲングループが主張するとおり、これまでの車はこれらの趣向品に比べて“安すぎた”のかも知れませんね。
■パガーニ・アウトモビリ
イタリアのスーパーカーメーカー「ランボルギーニ」でデザイナーを務めたオラチオ・パガーニ氏が、自身の理想とする車を作りたいという熱い思いで創業した「パガーニ・アウトモビリ」(以下パガーニ)。
ここでも何度となく特集させていただいているのでご存じの方も多いはず。
パガーニは卓越したカーボン成形の技術を持ち、ユニークなフォルムの車を生産しています。
そんなパガーニを代表するスーパーカーといえば「ゾンダ」でしょう。
1999年ジュネーブモーターショーにて発表され、そのフォーミュラーカーを彷彿させるデザイン、特徴的なマフラー形状など、他にはないユニークな造形は走る芸術品と称され人気を博しました。
スペック的にギネス記録などは特になく際立った点はないものの、レオナルド・ダヴィンチを崇拝するオラチオ氏の一貫した美学と世界観が多くの富裕層に受け入れられ、唯一無二の価値をもつスーパーカーメーカーとして、大人気となりました。
近年もっとも成功したスーパーカーメーカーといえるのではないでしょうか。
■ケーニグセグ・オートモーティブ
パガーニと並ぶ有名な新興スーパーカーメーカーと言えば、クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏によって設立された「ケーニグセグ・オートモーティブ」(以下ケーニグセグ)でしょう。
ケーニグセグはCCRという車で、2005年当時マクラーレン・F1が持っていた市販車による最高速度記録を上回り一躍その名を世界中に轟かせました。
ケーニグセグとパガーニは立ち位置として似ているスーパーカーメーカーですが、一番大きな違いとしてケーニグセグはエンジン開発も自社で行っていることが挙げられます。
エンジニアとして一貫してテクノロジーを極めていくというのがケーニグセグの特色です。
そんなケーニグセグの近年を代表するモデルといえば「アゲーラ」でしょう。
アゲーラには様々なグレードが展開されていますが、スペックは概ね最高出力1000ps程度、最高速度も400km/h台とヴェイロンをも上回っており、「アゲーラR」というモデルでは0-300km/h加速21.19秒というギネス記録を樹立しています。
常に限界へ挑戦し続ける姿勢、それこそがケーニグセグの魅力ではないでしょうか。
いつもパガーニを取り上げてばかりなので、今回はぜひケーニグセグを特集させていただきたいと思います。
ケーニグセグはその成り立ちから車まで非常にユニークです。
今回はそんなケーニグセグと代表作となるアゲーラone:1について詳しく紹介したいと思います。
○ケーニグセグとone:1
■クリスチャン・フォン・ケーニグセグ氏
ケーニグセグ・オートモーティブは、1971年生まれの実業家クリスチャン・フォン・ケーニグセグが自身の理想とする車を開発するために創業するのですが、創業当時の年齢がなんと23歳という若さなのです。
にも関わらず創業直後から意欲的に次々と車を発表し、わずか9年後にはCCRで市販車最高速のギネス記録まで打ち立ててしまうのです。
このあたりの手腕と情熱には脱帽です。
ほとんどの小規模メーカーが1台作っては消えていくこの業界において、今日のケーニグセグ社の成功を見ればどれほど凄いかはご理解いただけることでしょう。
■アゲーラone:1
アゲーラone:1は同社を代表するモデルとして有名です。
2010年のジュネーブモーターショーで発表されたアゲーラを元に、同社の創業20周年を記念して各部をスペシャルに仕立て直すことで究極のパフォーマンスを追及した1台となっています。
印象的な名前「one:1」の由来はそのスペックにあります。
一つは、量産車として世界で初めて、最高出力が1MW=1360psに達したこと。
そして、もう一つが、パワーウェイトレシオ=1を表しています。
つまりは、1360psの出力に対して車両重量も1360kgという軽量を誇ると言うわけです。
究極のパフォーマンスを追及した、との言葉に一点の嘘偽りもないことがわかります。
■ブガッティ・ヴェイロンとの比較
どれだけ凄いことかわかりやすく解説するために、一般的に速い車として真っ先に思い浮かぶブガッティ・ヴェイロンと比較してみましょう。
ヴェイロンと言えば性能・記録・価格の全てにおいてそれまでの常識を覆した車で、フォルクスワーゲングループが威信をかけ、莫大な資金と技術の粋を集めて開発した究極の1台となっています。
下のスペックを見比べれば、両者の違いやone:1の異常さが一目瞭然となります。
20年前ならいざ知らず現代の安全基準を満たすためには相当な量の安全装備を搭載する必要があり、ボディサイズも拡大を余儀なくされます。
それを考慮するとヴェイロンの重量もこの出力を誇るエンジンを搭載したスポーツカーとして決して悪い数値ではありません。
逆にone:1の車両重量はまるで魔法としか言いようがないほどの軽量さです。
これは、
極限までカーボンファイバーやチタンなどの軽量素材を駆使したことと、
W型16気筒の約半分となる軽量なV8エンジンを搭載したこと、
大パワーを路面に伝えるために安易に4WDシステムを選択せず潔く後輪駆動としたこと
による重量増加防止がもたらした結果です。
- 全長×全幅×全高:4,466×1,998×1,206mm
- 車両重量:1,888kg
- エンジン:8.0リッターW型16気筒+クワッドターボ
- 駆動方式:4WD
- 最高出力:736kW(1,001PS)/6,000rpm
- 最大トルク:1250N・m(127.5kg・m)/2,200-5,500rpm
- 変速機:7速セミAT(DSG)
- 最高速度:407km/h(標準モデル)、415km/h(Super Sport)
- 全長×全幅×全高:4,500×2,060×1,150mm
- 車両重量:1,360kg(50%の燃料と100%の液類含む)
- エンジン:5リッターV型8気筒+ツインターボ
- 駆動方式:MR
- 最高出力:1MW=1000kW(1,360PS)/7,500rpm
- 最大トルク:1371N・m(139.9kg・m)/6,000rpm
- 変速機:7速セミAT
- 最高速度:440km/h
■最高速
ヴェイロンと言えば何といっても最大の特徴は市販車最高となる407km/hの速度です。
One:1はなんとその最高速においてもヴェイロンを超えています。
それにも関わらず声高には主張しません。
その理由はone:1発表時のケーニグセグ社からのコメントにあります。
「One:1は最高速よりも、サーキットでの速さを追求している」
というのです。
これほどまでの異次元の最高速をスペックとして掲げておきながら、あくまでも速く走るための性能の一つに過ぎないというのです。
本当にこのメーカーには驚かされっぱなしです。
■まとめ
コメントの通りで、それを裏付ける事実としてケーニグセグはこのone:1を用いた最高速チャレンジを行いませんでした。
仮にもし挑戦していれば、ヴェイロンを超えていたのは間違いなかったことでしょう。
(1点だけフォルクスワーゲングループのプライドのために申し添えますと、ヴェイロンも市販量産車としてでなければ、性能的には450km/h程度の最高速を出すことが可能です。
安全に一般の購入者が出せる速度として、今の最高速でリミッターが設定されているのです。)
アゲーラシリーズの最後としてこのRSを元に「トール(Thor)」と「ベイダー(Vader)」が発表されました。
これでいよいよアゲーラシリーズはその歴史に終止符が打たれ、次の全く新しいモデルが登場することとなります。
One:1を筆頭にアゲーラシリーズの大成功を見る限り、次のシリーズもきっと我々を驚かせてくれることでしょう。
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