ベントレーのラグジュアリースーパークーペ、コンチネンタルGTのフルモデルチェンジのお知らせです。
実は、先行して昨年末に極秘の内覧会が開催されたのですが、残念ながら参加することができませんでしたので、今回ようやく自分の目で確認することができました。早速その模様をいつも通り遠慮なくお届けしたいと思います。
第三世代となったコンチネンタルGT
コンチネンタルGTは遡ること15年、2002年に全く新しいモデルとして登場しました。伝統を重んじるベントレーにとって異例とも言えるほどすべてが新しい存在です。デザインモデルがモーターショーに登場したときの驚きや興奮は今でも忘れていません。
当然のことながら初代については、発売されたことがすでに驚きであり喜びであり、歴代モデルと比較できないだけにあまりできの良し悪しが大きく語られることはありませんでした。また、このときの価格設定がこれまでの4000万円以下のモデルが存在しなかったベントレーとしては異例の安価であったことも批判的な意見を抑えるには十分だったことを付け加えます。
そこからわずかな改良が施され、想像の範囲内で最前がつくされ完成の域に達した第二世代。
そして、いよいよ革新的完全フルモデルチェンジとなる今回の第三世代が誕生したのです。初代や第二世代とは全く意味合いが異なることがご理解いただけたかと思います。
ここからが本番です。このコンチネンタルGTというモデルが本当に成功するか否かが問われるモデルといっても過言ではありません。第二世代の延長上で守りに入ってコンパクトに纏めてくれば即飽きられます。逆に攻めすぎて、伝統や品格を失えば存在そのものが否定されることでしょう。
それほどまでに難しい局面の中だからこそ生み出されたモデルは究極に面白いに違いないのです。
アウディ・フォルクスワーゲングループがいったいどれだけの期待という名の開発費を投じ、クルーの伝統職人達がどれほどの偉業を成し遂げたのか、早速見てきましょう。
エクステリア
エクステリアを見た瞬間に私のチープな想像は打ち砕かれました。採点をするなどとおこがましいにも程があります。重圧の中これを形づくったデザイナーを尊敬します。
なぜなら、このデザインからは一目で、伝統・品格・革新・美・スピード・・・・と、ベントレーをこれまで定義してきたあらゆる言葉が溢れ出しているのが見えるからです。他の言葉で例えるなら、まるで英国が誇る高級スコッチです。たった一口含めば華やかな何百ものフレーバーが脳に広がる様に似ています。
私が手放しでデザインをここまで褒めることは滅多にありません。しかも、過去のモデルならまだしも最新モデルに対しては初めて感じた感想かもしれません。
デザインそのものが素晴らしいこともそうなのですが、これほどまでに自社のアイデンティティをデザインに宿らせることができるメーカーを他に知りません。エンブレムなどなくとも誰に聞くこともなく最新のベントレーだと一目で理解できます。
クリスタルカットガラス
素晴らしいエクステリアの中でも一段と目を引くのが、やはり巨大なグリルの両サイドに鎮座するヘッドライトです。スコッチにはおあつらえ向きのクリスタルカットガラスのロックグラスが置かれています。
近年のLED技術の向上のおかげでヘッドライトは徐々にその役割を変革させつつあります。例えば安直に小型化するメーカー、例えばメルセデスのようにあらゆる新たな機能を持たせるメーカー、どれも想像の範疇ではあります。
そんな中、これほど斬新な使い方をしてくるメーカーがあるとは夢にも思いませんでした。まるで宝石のような美しさです。助手席にエスコートされる女性はこのライトに照らされてさらに輝きを増すことでしょう。自然とそんなシチュエーションが思い浮かびます。
テールランプは、ヘッドライトと比べると大人し目ながら、スッキリとしたデザインです。前世代の意匠だった中の赤いランプがスモークを破って最前面に飛び出てきた形です。
エクステリアカラー
皆様ならこの美しいボディを何色に塗りたいですか?無い色はありませんのでご安心ください。
基本の17色に加えてオプションを含めると70色もの色の中から選択することが可能です。内装のオプションやカラーリングと合わせると誰とも被ることのない無限の組み合わせが楽しめます。
個人的には伝統的なブリティッシュレーシンググリーンを選びたいところなのですが、クリスタルカットガラスと合わせるならもっと煌びやかな色の方が面白いかもしれません。
新世代のプラットフォーム
美しいエクステリアを構成するための基本骨格には最新型のMSB(モジュラー・スタンダード・ドライブトレイン)と呼ばれるプラットフォームが用いられています。
フォルクスワーゲングループ内で共有されるフロントエンジンリアドライブ用のプラットフォームで、先に発売されている最新型パナメーラにも使われているものと同じです。
前世代のものと比較して最大の変更点が、前輪が135mmも前方に配置されたことです。この恩恵はデザイン上も非常に大きく、オーバーハングを短く抑えた上で長く低いフロントノーズを形作ることが可能になりました。革新技術は美しさにも表れるということです。
その証拠にボディサイズはホイールベース以外ほとんど変わっていません。
また、ボディを形成する素材をオールアルミニウムとすることで先代比約80kgものダイエットにも成功しています。これは驚異的な数値です。
インテリア
ダイヤモンドカットはインテリアにも統一されています。
小さなスイッチの一つ一つにまで丁寧に妥協なく施されており、手に触れる度に喜びを与えてくれます。レザーに施されたキルティング加工やオプションで選択可能な“ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド”と呼ばれる二重形状も実にエレガントです。
伝統的技法が息づくにも関わらず空間そのものはモダンで使いやすい。ラグジュアリー高級スポーツカーとして理想的な室内空間を実現しています。
インテリアは、15種類のマット、8種類のパネル、15種類のトリムなどから自由な組み合わせの選択が可能です。これだけでも、1800通りにもなってしまいます。
インフォテイメントシステム
ベントレーですから、キルティングの美しさやダイヤモンドカットの豪華さは当たり前と思われる方もいるでしょう。
今回の進化はこれだけにとどまりませんのでご安心ください。
主役はなんといっても進化を遂げたインフォテイメントシステムでしょう。
超高級車だけは、少し時代に取り残されていても許されるといった風潮がどこかにあったと感じています。しかし、このIoTの時代において超高級車も例外ではいられません。
イグニッションをオンにすると自動的にダッシュボードのセンターが回転し12.3インチタッチスクリーンディスプレイが出現します。様々な機器へのコネクテッド機能を備えており、ようやくApple CarPlayにも対応しました。
また、このパネルは単なる美しいウッドパネルにも計器類のような男心をくすぐる時計にも選択して表示することが可能です。回転するその様は優雅で、まさにそれだけでエンターテイメントとすら言えるほどです。
意外と忘れてはいけないのが、後部座席です。
日本だけかもしれませんが、こういった超高級2+2の後部座席に実際に人が座っている場面をよく見かけます。フロントシートが大柄なため後部の乗降性は決して良くはありませんが、一度座ってさえしまえば不満が出ることもないでしょう。
フェラーリ・ポルトフィーノやマセラティ・グランツーリスモよりも広いのは当然として、個人的には4ドアのアストンマーティン・ラピードよりも快適に感じました。
48V化サスペンション
テクノロジー面では真っ先に48V化されたサスペンションを挙げたいと思います。
メルセデスやアウディですら市販化はこれからだと言うのに、限定的とはいえすでにベンテイガの頃からこの48V化を導入していたことに驚かされます。まさに走りには一切の妥協なしといったところです。
これは、車の電源はご存知の通り通常は12Vなのですが、それを部分的に48Vにすることによって高電圧でいろいろな機能を動かしてしまおうというものです。
わかりやすい例だと、新型アウディA8では側面衝突時の緊急回避として衝突する側のサスペンションを瞬時に伸ばして車高を上げることによって衝撃を緩和します。
ベントレーでは、この48Vシステムを“ベントレーダイナミックライド”と呼ばれる前衛的なサスペンション制御に利用しています。
高電圧を利用し、もっとも緩んだ状態から締まった状態までなんと0.3秒での切り替えを可能にしています。ミリ秒単位でボディの状況をモニタリングし、路面形状や走行状況に応じて常に最適な走り心地を提供し続けます。
ついにデュアルクラッチシステム導入
トランスミッションが従来のトルクコンバーター式8速ATから8速デュアルクラッチ式へと進化しました。
スポーツカーとして正常進化であり、より厳格なシフトフィールと変速速度が手に入ることで運転する喜びが増したことはいうまでもありません。
巨大だけど実は軽いエンジン
搭載されるエンジンは、まずは、伝統的6.75リッターの排気量を持つW型12気筒のみとなります。
最高出力635ps、最大トルク900Nmという途方もないパワーを発揮し、0-100km/hの加速は3.7秒でこなし、最高速度は333 km/hにも達します。新時代的な高圧直接噴射と従来通りの低圧噴射をシチュエーションに応じて組み合わせることでパワーとクリーンの両立を達成しています。
何よりも特筆すべきは、単体重量の軽さです。実は、このW型エンジンがここまでのハイパワーにも関わらずV8エンジンよりも軽量に作られているというから驚きです。
他にも語りつくせない魅力がまだまだありますが、今回はこんなところで。
次は夏ごろに入ってくると言われている試乗車を乗ってみて、さらにレポートさせていただく予定ですのでお楽しみに。
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