スバルからの発表によると、2018年10月頃、EJ20エンジンの製造がいよいよ終了することとなりました。
今回は、一時代を築いた名機EJ20エンジンの性能・搭載車種・長所・短所を振り返るとともに、後継となるFA/FB型エンジンについて解説していきます。
デビュー
1989年スバル(元・富士重工業)より、初代「レガシィ」に搭載されてデビュー。
直系の先祖となるスバルEA型エンジンに替わる次世代のエンジンとして開発されました。
EA型エンジンと比べ、高出力化に対応しています。
このEJ型エンジンはEJ20のほか、EJ15・EL15・EJ16・EJ18・EJ20・EJ22・EJ25があり、このうちEJ15、EJ16、EJ18、EJ22は既に製造が終了しています。
EJの後の数字は排気量を表します。
(例:EJ20は水平対向エンジンで排気量2.0Lを表します)
FA/FB型エンジンの性能は以下の通りです。
- アルミニウム合金製水冷水平対向4気筒4ストローク
- 排気量:1994cc
- 内径×行程:92.0mm×75.0mm
- バルブ配置:DOHC
特徴
EJ20は水平対向エンジンです。
水平対向エンジンは、水平にエンジンを置く都合上、直列エンジンに比べストロークが短くなり、 低回転域のトルクが小さくなってしまいます。
(一般的にショートストロークは高回転パワー重視型、ロングストロークはトルク重視の実用エンジンとされています。)
EJ20にはこの欠点を克服するために、『ツインターボ搭載モデル』があります。
大きさの違う2つのタービンをエンジンの左右に置き、低回転域と高回転域でタービンを使い分けることで、どの回転域でも十分なトルクを発揮できるように工夫されています。
この大きさの異なる2つのタービンを使用するターボのことは「シーケンシャルツインターボ」とも呼ばれています。
このツインターボ搭載モデルは、当初「息継ぎ」(プライマリタービンとセカンダリタービンの切り変り時に発生するエンジンの出力の谷間)という欠点を持っていましたが、これについても、3代目レガシィ(1998年~)のころには、改良されほとんど無くなっています。
高回転域の最大出力と、低回転域でも重い車重を支えられるトルクを両立する『ツインターボ搭載モデル』の特徴こそ、EJ20が”名機”と呼ばれる所以ではないでしょうか。
ただ、EJ20は、高回転域に達しないと最大トルクが得られないため、燃費が悪くなってしまうという短所があります。
レガシィツーリングワゴン(TA-BH5)の燃費は11.4 km/Lです(カタログ値)。
実燃費であれば、街乗りで8~9km、高速巡行で10km~11km程度といったところでしょうか。
EJ20が載せられていた車種は以下の通りです。
- レガシィ(ツーリングワゴンBF4/BF5/BG4/BG5/BH5/BP5、ツーリングセダンBC4/BC5/BD4/BD5、B4 BE5/BL5)
- WRX STI(VAB型)
- フォレスター(STI2.5Lモデルを除く)
- エクシーガ
私は以前、レガシィツーリングワゴン(TA-BH5)に乗っていましたが、発進から低回転域を抜けるまではやや重さを感じます。
ただ、3000~4000回転あたりからの加速力はたまらないです。
独特なボクサーエンジンの音も相まって、ついついアクセルを踏み過ぎてしまうほどです。
EJ20の後継エンジン
EJ20の後継エンジンはFA/FB型エンジンと言われています。
FA/FB型エンジンの性能は以下の通りです。
- 種類:水平対向4気筒DOHC 16バルブ D4-SデュアルAVCS
- 排気量:1,998cc
- 内径×行程: 86.0mm×86.0mm
EJ20は、カムシャフト駆動に「タイミングベルト方式」を採用していたのに対し、FB20/FA20では「タイミングチェーン方式」となっています。
燃費は、FB20が搭載されているインプレッサスポーツ(GP7)で15.8kmL(カタログ値)です。
FA/FB型エンジンが搭載される車種は以下の通りです。
- フォレスター(SHJ型 2010年10月-2012年11月)
- フォレスター(SJ5型 2012年11月- )
- インプレッサ スポーツ(GP6.GP7型 2011年11月-2016年9月)
- インプレッサ スポーツ ハイブリッド(GPE型 2015年6月–2016年9月)
- インプレッサ G4(GJ6.GJ7型 2011年11月-2016年9月)
- XV(GP7型 2012年9月-2017年3月)
- XV ハイブリッド(GPE型 2013年6月-2017年3月)
- インプレッサスポーツ / インプレッサG4(GT/GK6.GT/GK7型 2016年10月- )
- XV(GT7型 2017年4月- )
今後の動向
EJ20エンジンに比べ、FA20/FB20エンジンは燃費が格段に向上していることが分かります。
しかし、今後EJ20エンジンが市場に出回ることが少なくなるため、EJ20を搭載している中古車の価格高騰が予想されるでしょう。
特に何といってもEJ20エンジンを一躍名機の座に押し上げたのは、ラリー選手権での輝かしい栄光です。
EJ20を搭載したインプレッサWRXstiはスバル愛好家ならずとも一度は憧れた存在です。
EJ20の製造終了は一つの古き良き時代の終わりを告げる象徴と言っても過言ではありません。
車好きとしては、ただただ寂しく、次のエンジンにも同様の栄光を勝ち取るチャンスが訪れることを願わずにはいられません。
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