テスラ試乗と自動運転の体験レポート

 

今回は、“完全な電気自動車”、“自動運転”の二つのキーワードから世界で最も注目を浴びている車といっても過言ではないテスラ車についてです。
モデルSの最新最強バージョンを試乗する機会に恵まれたので、当日の模様を自動運転の知識とともに2回に分けてお届けします。

 

自動運転に関する原稿執筆のオファーを受けて、現時点での自動運転技術の先頭を走っていると目されるテスラに試乗させていただくことになりました。

予約時刻ちょうどに青山にあるテスラのショールームを訪れるとすでに試乗車の準備は整っていました。

お茶とともに運ばれてくる誓約書(iPad上)の詳細項目に目を通した上で“同意する”ボタンを押すだけで準備完了です。この辺りさすがはシリコンバレー生まれだと感心してしまいますね。

試乗の順序としては、まずは一般道でセールス担当者が運転し自動運転に関する操作方法や特徴のレクチャーを一通り受けます。その後運転席と交代し、一般道→首都高→駐車の流れとなります。

 

「一般道での助手席体験」

最新最強モデル“P90D”の特徴はなんといっても前後ツインモーターによる圧倒的な加速力です。さっそくアクセルを全開にしていただきました。

これまでいろいろな速い車に乗ってきましたが、発進加速は断トツでNo1だと感じました。肺から空気が抜けるほどの加速という例えをこれまでも幾度となく使ってきましたが、本当に肺から空気が抜けたのは初めての体験です。

エンジンの回転と共に徐々に高まる出力特性とは真逆で、アクセルを踏めば即時にMAXトルクが乗員を襲います。昔よく遊んだミニ四駆のスイッチをONにした瞬間を想像していただければ近い感覚です。

その後も驚きが続きます。
電気自動車としてのパワーを体感した後は、先進の自動運転技術の出番です。
ステアリング左のクルーズコントロールレバーを後ろに二回引くと、「ポン」という軽いアナウンス音と共に自動運転が開始されます。

前走車に合わせた加速・減速は当然のことながら、コーナーではスムースにステアリングを操作し自動で曲がっていきます。ステアリングの切りはじめの自然さや操舵角の正確さは最早熟練ドライバーを超えているといっても言いすぎではないでしょう。
初めて勝手にクルクル回っているステアリングを見たときは感動したほどです。

「ドライバビリティ」

セールスの方と席を入れ替えて今度は自分が運転席に座る番です。混雑している一般道を出てさっそく首都高に上がりました。
まずは、ドライバビリティの確認です。

いくら優れた電気自動車だろうと自動運転だろうと車そのものの出来が悪ければ宝の持ち腐れです。加減速時のピッチング、コーナリング時のヨーコントロール、車体の前後上下の重量バランスなどをいろいろな走行条件と運転操作から読み取っていきます。
結果、車体のできも素晴らしいと判断しました。特に、車体前方に重いエンジンを積んでいないことと重量物であるバッテリーを床下に設置していることからくる独特の安定感とロールの少なさは特筆すべきものがあると感じました。
また、2500kg近い大柄な車体をシステムトータル出力773psで強烈に前に進める割にはあまりにも小径なブレーキに運転前はいささかの不安を覚えたのですが、実際にある程度の速度から急な減速をしてみると良く止まることに驚きます。

これは電気自動車の特性である回生ブレーキシステムによる減速効果が大きく貢献している、のだと推測できます。
所詮はシリコンバレー生まれの車、目新しさこそあっても車本来の良さはスポイルされているはずと予想していたのですが、大きく外れてしまいました。

「運転席での自動運転体験」

いよいよ覚悟を決めて車に運転を任せる番がきました。

クルーズコントロールレバーを二回引けば、そんな私の覚悟など気にも留めずに車は自動運転モードに突入します。

高速道路という自動運転と相性がいい状況もあって、先ほどまでに助手席で感じた印象よりもさらに洗練されて感じます。特にコーナリングに関しては曲率の大きなコーナーで、かすかにアウト・イン・アウトのラインをトレースしており驚かされます。車線外の白線と一定の間隔を保ち続けるという単純なプログラムではなく、オーナードライバーのライン取りをビッグデータとして蓄積しそこから最適値を常に更新していっているおかげだそうです。

電気自動車も自動運転技術ももちろん素晴らしいですが、何よりこのビッグデータを活用した走行ラインの最適化と随時アップデートの仕組みこそがテスラの最大の武器だと感心しました。

完全な電気自動車”、“自動運転”の二つのキーワードをお伝えしている今回は、前編ではテスラ社のモデルSに実際に試乗した体験について紹介させていただきました。後編では今話題沸騰の自動運転というものをもう少し深く掘り下げさせていただきます。

「自動運転の定義」

いきなり苦言を呈するようで恐縮ですが、昨今自動運転という言葉が誤った解釈で使用されていて誤解を生んでいるケースをしばしば見受けます。自動運転というものを正しくとらえるために、その定義とレベルについてお話させていただきます。
自動運転とは人間の操作を必要とせず運行できる機能またはシステムのことを意味するのですが、最終段階としては、無人運行を含んだ人間のドライバーが全く操作に関与しない状態を目指すものです。

ただし、それまでの過程でも段階的な実現が不可欠となっており、その段階を表すためのレベルについても詳細に定義されています。

 

「関連法」

個別のレベルを説明する前に、現状で超えられない壁となっている法的制約についても触れさせてください。

自動運転に関しては国際条約が存在します。

ジュネーブ道路交通条約”といい、“自動車というものは常時人間の運転が必要である”と定義されています。そのためこの条約の加盟国は現段階においては、ドライバーの操作への関与を必要としない車の一般公道における運行が法的に認められていません。

 

「レベルの定義」

自動運転のレベルは、日本政府や米国運輸省道路交通安全局によって次のように定義されています。

・レベル0

ドライバーが常に全ての操作を行います。全く自動運転とは無縁の状態です。

・レベル1

加速・操舵・制動のいずれかの単体操作をシステムが行います。衝突回避のための自動ブレーキや単独でのクルーズコントロールなどが該当します。

・レベル2

加速・操舵・制動の中から複数の操作をシステムが行う状態。メルセデスベンツのアダプティブクルーズコントロールやテスラ・モデルSのソフトウェアバージョン8.0などがこれに該当します。

もちろんですが、ドライバーは常時、運転状況を注視する必要があります。

現段階で法的に認められているのもこのレベルまでとの認識です。

・レベル3

加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときにはいつでもドライバーが対応できるようにしておく状態です。

通常時ドライバーは運転から解放されてはいるものの、予期せぬ緊急時やシステムの限界時にはシステムからの運転操作切り替え要請にドライバーが応じる必要があります。
この段階までは自動運転とはいうものの、あくまでも運転補助であるため事故時の責任はドライバーが負うこととなります。

・レベル4

いよいよ完全自動運転です。

加速・操舵・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しなくてもよい状態で、運転に関する操作と監視・認知を全てシステムに任せます。

ドライバーという定義そのものが必要なくなり、無人運行も選択可能です。

 

「自動運転の誤った解釈と事故事例」

冒頭で誤った解釈での使用について触れさせていただきましたが、その最たる例を紹介させていただきます。

・自動運転レベル2の事故-市販車テスラ・モデルS
テスラ社のモデルSによる自動運転中の死亡事故がセンセーショナルに報じられました。

上記のレベル定義を読んでいただけた方は、完全自動運転なんてまだ存在していないし、公道で認められているのはまだレベル2までのはず!自動運転中と言っていいのか?という疑念を持っていただけるかと思います。その通りです。
マスコミが話題作りのためにわざと誤った解釈を助長するような表現をしていますが、正確に言えばまだまだ走行アシスト機能を使用中の事故と表現されるべきものです。

事故の詳細は、2016年5月7日にフロリダ州のハイウェイでモデルSの前方に大型トレーラーが直角に割り込み、そのトレーラーに巻き込まれてモデルSのドライバーが死亡したというものです。

どうやら事故原因は、ドライバーが走行アシスト機能に依存しすぎたことと、トレーラーの白いボディが太陽の光を反射して各種レーダーには存在しないように認識されてしまったことのようです。

「技術的レベル」

技術的には、実はレベル3に限りなく近い車は既に市販されています。前編でも登場したテスラ・モデルSがそれに該当します。

前走車があるという前提でみればドライバーによる運転操作をほぼ必要としません。

また、テスラ社の場合はハード面ではレベル4まで完成していると発表されており、残るはソフトウェアの段階的アップデートを待つだけとのことです。そのソフトウェアですら実は法的整備を待っているだけで、すでに完成しつつあるとさえ噂されているほどです。
鉱山や軍用などのように場所と用途さえ限定すれば、すでに実用化されているものは多数存在します。

 

「今後の展開」

日本においても東京オリンピックが開催される2020年に合わせて様々な自動運転が整備されつつあります。
・レベル3の自動運転車実用化に向けた技術開発と法整備
・オリンピック会場周辺に限定したレベル4無人タクシーの運用

これまでも技術革新の裏にはオリンピックや万博など発表の場の存在が常にあったという歴史を振り返ってみると、前述の目標も必ず実現してくれることと期待せずにはいられません。

2020年といえば、未来といえるほど先ではなく数年後のお話です。そんな近未来には場所を限定しているとはいえ、完全無人による自動運転車が街中を走行することになるのです。

想像してみただけでワクワクすると思いませんか。

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