ガソリンスタンドに行くとその点検と交換を勧められますし、車検や定期点検の時に合わせて交換をしている方も多いのがエンジンオイルです。
なんとなく定期的に交換をしないと車に良くない、ぐらいの感覚をお持ちの方がほとんどでしょうが、車のメンテナンスにおいてこのエンジンオイルの管理は重要な買取査定要素となってくるのです。

また、一緒に交換を勧められるものの、ちょっとその必要性について疎い方も多いはずのオイルエレメントについても、話題に上げていきたいと思います。
エンジンオイルの役割とエレメントの必要性
まずは、エンジン内部でのエンジンオイルたちの働きについてメカニカルな点からその必要性に迫っていきますが、専門用語を限りなく排除してかみ砕いて女性などでも分かりやすく触れてみましょう。
自動車が動くメカニズムそのものは、人間の体のメカニズムと近いものがあります。
人間は食べ物を食べてそれを日常のエネルギー源としていますが、
- レギュラーガソリン
- ハイオクガソリン
- 軽油
などといった、ひとくくりに「燃料」と呼ばれるものです。

人間の場合、食べ物に含まれるタンパク質やカルシウムが骨格や筋肉などを作り、糖や脂質などが各機関の細胞内で燃やされそれをもとに歩き、走り、脳を動かして考えます。
自動車はというと、電気・水素自動車はともかく、燃料をエンジン内で燃やし、時には1トン近くになる自身の車体を時速数十キロで前に進む原動力としています。
ハイブリット車であっても、一旦燃料を用いた内燃機関で電気を作らないと、その最新鋭にまで開発された高度な燃費上昇メカニズムを発揮することはできません。
つまり、何かを燃やしエネルギーを得るシステムは人間も自動車も同じ、何かを食べないと動いて生きることができない人同様、車も燃量がない事には動くことが不可能です。
エネルギーの伝わり方と潤滑・防錆の必要性
人間は食事で摂取した糖や脂質を血液やリンパ液などで各器官に運び、それをエネルギーに変えたらて筋肉が躍動したり、心臓がたゆまず鼓動したりします。
一方、ガソリン・ディーゼル車の場合、エンジンの中で燃料に酸素を加えて点火、爆発で得たエネルギーをピストンを経て、エンジン内で回転運動に変え、それをシャフトと呼ばれる軸に伝えて、タイヤまで運んで進みます。
その間に変速ギアなどいろいろと挟まってきますが、燃料の爆発エネルギーをきちんとタイヤまで伝えるためには各機関の摩擦を減らしてあげないといけません。
皆さんも、モノにしろ自分のお身体にしろ、
「金属部分が錆びてしまって、窓が開きにくくなった。」
「年のせいか関節の動きが悪くなって、階段の上り下りが辛い。」
なんて経験はあると思います。
窓の金属部分に潤滑スプレーを吹きかけたり、整形外科に通ったりして対応するはずですが、車の場合は専門家でもない限り、外から見てエンジン内部がサビているのかどうかなんてわかりませんし、対処をすることもできません。
しかも、爆発エネルギーを走るエネルギーにする、人間でいうと食べものの消化と同じ働きをしている、ピストンの場合、エンジンの中で1分間で数千回動いているのでちょっとしたサビが命取りです。
もしもサビて、動きがスムーズでなくなると、即、車は馬力を失い、酷い場合は全く動かなくなってしまいます。
このピストンだけでなく、車の運動を伝える金属製の機関の要所要所にその潤滑を高めサビなどを防ぐことを目的に存在するのがオイルで、エンジンの中にあるのがいわゆるエンジンオイルです。
人間の体にも、各関節部分にはその動きをスムーズにするための、「滑液」というものが分泌されています。
この成分として有名なのが、肌のハリなどを上げる効果から女性の中には、美容サプリメントとして利用している方もいるヒアルロン酸です。
この潤滑成分を食べ物から接種したり体内で製造できる人間と違い、車の場合には外部から潤滑成分を注入してあげないといけません。
もっと問題なのは熱です
エンジンの潤滑を良くしさびなどを防いでスムーズに動けるようにするのがエンジンオイルの目的の1つですが、人の関節にある滑液よりも重要な役割をエンジンオイルは持っています。
前項でも述べたとおり、車のエンジンは常に高速で動いているため、いくらエンジンオイルでその摩擦を抑えても、非常に高い摩擦熱が発生します。
強固で耐熱性を高い金属でできているエンジンですが、この摩擦熱にさらされ続けると否応なく劣化、時に変形を起こしてしまいます。
実は、エンジンオイルには前項で触れた潤滑・防錆作用のほかに、激しいエンジンの動きで発生した高熱を放散する役割もあり、もしエンジンオイルが無い状態だと「あっ」という間にエンジンは焼き付き、使い物にならなくなります。
ちなみに、排気量が大きくパワーも大きなスポーツカーなどには、このオイルの冷却能力を引き上げる「オイルクーラー」が装着されていました。
しかしながら、最近では通常の運転で起きる通気でのオイル冷却がしにくい、街の利用のファミリーカーにも純正装着されていることもあります。
食べ物と燃料はどちらもすべて燃やし尽くされるわけではない
摂取した食べ物と燃料はそのすべてがエネルギーなどとして完全に消費されるわけではないのも、人と車で共通しています。
人間の場合、燃え残った糖や脂肪は排泄物や汗とともに体外に出るか、臨時用のエネルギー源として脂肪という形で肝臓や各臓器、皮膚の下に貯蔵されます。
これが進みすぎると、肥満ととらえられるため人間の場合は気にする方も多いのですが、車は太るわけもないので、残ったものを内部に溜め込むわけにはいきません。
燃料が燃えて残ったモノが後部から噴き出す、つまり、排気ガスが車にとっての排泄となりますが、これも人と同じくすべての不要物ができらないのが厄介です。
人の場合、体に残る不要物は肥満からくる成人病の元となったり、老廃物による肌トラブルなどにつながるため、ヨガやサウナなどで汗をたくさん出したり、体に良いとされるビタミンやミネラルをたくさん摂ってデトックスをしようとします。
車にとっての老廃物の排除、すなわち、デトックスをしてくれるのも、エンジンオイルの重要な役割なのです。
この仕組みをわかりやすくするため、まずは血管にコレステロールや老廃物が溜まって、その柔軟性が落ちたり、血液の通過が悪くなると起こる動脈硬化をイメージしてください。
この動脈硬化が心臓で起きると一大事ですが、燃えかすや摩擦でできた金属片といった老廃物を吸着してくれるのがエンジンオイルで、車のエンジンの要所に溜まるのを防ぐ効果があります。
ただし、エンジン内は各機構ごとにとても小さな隙間しか設けられていないため、そこに老廃物等が溜まるとすぐに作動不全を起こし、
- 燃費の低下・・・摩擦が悪くなり、エンジンのパワーがダウンすることが原因。
- オイル上がり・・・エンジンの内部、燃料が爆発する燃焼室と呼ばれるところに行き場を無くしたエンジンオイルが侵入、燃料と混ざって燃焼効率を下げたり、オイル自体の消失しまう症状のこと。
- オイル漏れ・・・エンジン内に本来あるはずの隙間が老廃物で埋まると、オイルがエンジンの外に出るのを防いでいるシールに想定以上のオイル圧がかかって、そこからわずかずつオイルが漏れだしてしまう。
などといった、車にとっての成人病の発生リスクが上がってしまいます。
それを防ぐためにエンジン内を常時循環しているエンジンオイルなのですが、汗や血液などの体液を体内で生成している人間と違って、車のエンジンオイルは勝手にきれいに生まれ変わってはくれません。
つまり、エンジンオイルを定期的にきれいなものに交換するというメンテナンスは、車の成人病を予防し、寿命を左右する非常に大切なものということです。
オイルエレメントとは?
いくらエンジンオイルがエンジン内の汚れを吸着してくれるとはいえ、その能力にも限界がやってきます。
では、前項で述べたように汚れたらすぐキレイなオイルに交換をするとなると、メンテナンスの回数が増えてユーザーの負担となってきます。
それを防いでいるのがオイルエレメントで、エンジン内を駆け巡り老廃物をかき集めてきたエンジンオイルをろ過してきれいな状態に戻して再度エンジンへ送り出す役目を担っています。
昔はオイルフィルターという呼び名が主流でしたが、最近ではなぜかエレメントと呼ぶカー用品店やガソリンスタンドが多いですが、全く同じものです。
これも普段の生活に当てはめて説明すると、水道水の蛇口にその安全性を高めるため浄水器を装着している方は、定期的に内部のろ過フィルターの交換をしてることも多いはずです。
エンジンオイルをきれいにするエレメントが汚れたままということは、交換せずに不純物がびっしりたまった浄水器から出た水を安全と思って飲んでいるのと同じことなのです。
エンジンオイルが汚れている!の大きな勘違い
仮に、読者さんがガソリンスタンドなどで簡易な点検を依頼したとしましょう。
オイルの状態や量を調べるためについている「オイルゲージ」を引き抜き、白いウェスなどでその汚れを確認したスタッフが、
「オイルがとても汚れていますので交換をしませんか?」
というセールストークをしてきたとき、すぐに
「大変、では交換をお願いします」
と言ってしまってはダメです。
ガソリンスタンドのマネージャー経験を持つ筆者がこういうのもなんですが、実のところ、オイルゲージでの汚れ確認だけで交換の必要性をしっかり確認することは不可能です。
エンジンオイルが汚れているから長く交換していないというわけではなく、
2.エレメントの未交換・・・きちんとしたろ過機能が果たされていない。
3.エンジンオイルが高品質・・・一般的に高価なエンジンオイルほどその洗浄能力が高い。
などといった、オイルの使用期間やオイル交換の頻度に関与しない汚れる原因について、一切わからないのが大きな問題です。

「この間高いオイルを買って交換したばかりなのにどういうこと?」
と、お客様とのトラブルに発展しかねませんので、よくスタッフ全員に注意喚起をしていました。
安いオイルで交換をしたから早く汚れてしまったという勘違いがもっとも多くのユーザーにみられるケースです。

「いつ頃交換されましたか?」
などといったお声かけと共に、交換ステッカーなどのチェックを怠らないよう工夫していました。
最近変えたばかりとのお答えを頂いた場合、良いオイルをチョイスされた旨を伝えた後、
「その時エレメントを交換されましたか?」
と付け加えることを徹底していました。
はっきりと、業界にいた人間として断言しておきますが、せっかく良いオイルを使ったならば、同時にエレメントを交換するべきです。
一般的に、オイルエレメントはに2,000円以下の部品代に工賃ということになりますが、オイル交換のタイミングであれば交換工賃を請求しないケースも多いです。

交換作業もオイル交換にともなってリフトアップ専用工具を用いた場合、よほど特殊なケースを除いて数分で完了するため、工賃の請求をしなくても採算がとれるからです。
長生きする車とそれが期待できない車、買い取りに影響するのは当たり前!
ここまで、エンジンオイルの役割について述べましたが、エンジンオイルを定期的に交換することで、車を永く乗れる可能性がグンと高まるのは何となく想像できたはずです。
そして、あなたが仮に中古車店のオーナーだったら、オイル管理の行き届いた車を売れる車と判断することにそれほど大きな抵抗はないでしょう。
ただし、先程触れたように、オイルゲージでその汚れを見るだけでは、ちゃんとこれまでオイル管理をされていたのか、それとも単に良いオイルを入れただけなのか判断できないはずです。
そして、買取査定のプロの目にかかれば、どんなオイル管理をされていたかは一目瞭然、その判断で大きく買取査定額を上下させてきます。
査定士がチェックするオイル管理を見極めるポイントとは?
素人とプロで見ているところが違うのですが、具体的にはどんな点がそのチェックポイントなのでしょうか?
数多くの車をチェックしてきた腕利きの査定士ならば、ボンネットを開けた瞬間、その雰囲気で感じてしまうこともあります。
ただ、はっきりとしたチェックポイントを挙げるとすると、素人でも見れば交換歴がわかる各業者が発行しているステッカーや整備手帳以外にも、
- オイル注入口・・・永くオイル交換が行われていない、もしくは行われていなかったことがある車は、オイル注入口とそのキャップにゴミが付着している。
- オイルゲージのシミ・・・現時点でキレイなオイルが入っていても以前長くオイルが変えられていない車のゲージにはその名残のシミが残っている。
- マフラー噴出口辺りの煤汚れ・・・オイル管理が不十分だと起こるオイル上がりでは、排気ガスに不完全燃焼による物質が混ざるためマフラー回りにそれが付着、黒く残ってしまうことがある。
などのチェックポイントがあり、それに合わせて前述した雰囲気とエンジン音などといった素人には理解しにくいことを加味して、総合的にエンジン状態を判断していきます。
エンジンオイル交換の適正頻度とは?ケース別に検証!
ここまでエンジンオイル、およびエレメントの必要性、さらに多くの方が持っている誤解について説明してきました。
ここからはそれと関連して、どれぐらいの頻度でエンジンオイルやエレメントを交換すべきなのか、ケースごとに見ていきたいと思います。
新車のオイル管理
自分好みの車を新たにゲットしたとなるとオイル交換もまめにしておこうと考える方は少ないないでしょうし、新車時はエンジン各所とオイルが馴染んでいないので細かいスパンでのオイル交換はおすすめです。
ただ、せっかくなら値段も張る高品質なオイルを使おうと思ってしまいがちですが、プロの目線から言えば、新車のエンジンは内部に溜まっている老廃物が非常に少ない状態です。
洗浄性能重視ではなくコスパ重視で交換頻度を多くした方が◎、「高価なオイルを使ったから長期間そのままでも大丈夫!」というありがちな誤解が一番車にとっては良くない判断になってきます。
良く走る距離を車のオイル交換
オイル交換の頻度についてよく、
3ヶ月、半年毎
等と謳われていますが、毎日数百キロを走り回る車にそれを当てはめるのはナンセンスです。
単純な計算ですが、一日100kmを走行する車両は1ヶ月で3,000km、1月半で5,000kmに到達しますが、その度に交換していては維持費がいくらあっても足りません。
エンジンオイルの交換頻度のうち、「⚪⚪ヵ月」と期間を表現しているのは、時間が経過するとオイルが酸化し、その機能が低下することが理由です。
そして、高いオイルとリーズナブルなオイルで酸化してしまう時間にそれほどの差はないというのが、筆者の経験上の判断です。
つまり、酸化してしまう時間を考慮にいれると、通算走行距離で判断するのではなく、期間を主として交換頻度を設定すべきです。
しかも、高いオイルで交換コストを上げてしまうより、比較的リーズナブルなオイルで交換回数を稼いだ方がいいでしょう。
古い車、オイル交換をしていなかった車の交換頻度
古い車という定義にも限界はありますが、基本的に年数の経った車のエンジンにはしつこい燃えかすや金属片が付着しています。
そして、長年の汚れをエンジンオイルの洗浄効果だけでクリアするのはちょっと無理ですので、オイル交換のを頻繁にすることに大きな意味は無くなります。
ただ、金属疲労など経年によるダメージは付きまとうので、5,000㎞・5ヶ月程度の交換サイクルと2回に1回のエレメント交換は欠かさないことが、車の寿命を少しでも伸ばす手段となります。
高性能オイルを使用する必要はなく、リーズナブルなオイルで周期の維持を図ったほうが賢明です。
高排気量で高馬力の車種の場合
エンジン性能が上がる=負担が増大していくと考えて間違いないため、上記で触れた高熱への対処と併せて、高出力高馬力の車のオイル交換の頻度は気を配らねばいけません。
一般的に、高回転にさらされる車種については、エンジンオイルは粘り気の強い粘度の高いオイルを使用するよう推奨されています。
粘度が高いオイルはその熱の放散能力も高く、高回転で生じる金属片の回収能力も粘度が低いよりモノより高性能です。
ただし、その能力に合わせて、価格帯は高くなっています。
また、高馬力の車に乗るときはある程度ランニングコストが上がるのは覚悟すべきで、一般的な車種よりも短いスパンでの交換がおすすめです。

あまり乗らない車はオイル交換はしなくていい?
走行距離が極端に少ない車でも、エンジンオイルは経過時間に応じて酸化しその性能が大きく劣化します。
ですので、年間数千kmしか走らない車でも、5ヶ月を目安にオイル交換を続けた方が無難です。
意外によく走っている車でオイル交換が常になされているものより、走行が少なくともオイル管理が雑な車に対して渋い買取査定をしてくる業者も多くいます。
まとめ
今回はエンジンオイルの重要性とケースごとのおすすめ交換頻度について触れましたが、この他にも車の用途はあります。
ただし、これまで多くの車を見てきた立場からはっきりと言っておきますが、買取相場を大きく左右するオイル管理をしなくていいケースなんて電気自動車を乗っている以外存在しません。
キチンとまめにオイル交換をしていればいるほど、自動車はいい状態を維持してその買取相場は上昇します。
エレメント交換含め、オイル管理に手を抜いていることは、必ず買取査定をするプロにはわかります。

コメント
誤字の報告を致します。
>年間数千kmしかは知らない車でも、5ヶ月を目安にオイル交換を続けた方が無難
は知らない→走らない
ご丁寧にありがとうございます。
早速修正させて頂きました。
今後とも、何卒、よろしくお願い致します。