
任意保険に加入する際、その申込時に自分の「ノンフリート等級」を申告する項目に記入やチェックを入れたことがあるはずです。
「等級が高ければ割引される」程度の知識はお持ちでしょうが、このノンフリート等級がどのように管理され決定し、どう保険料と関わっているか詳しく知らない方がほとんど。
ノンフリート等級制度はこうなっている!~基礎知識~
まずは、ノンフリートとはなにか、なぜ等級で分けられているのか、自動車保険の根本に迫る基本的な点から整理していきましょう。
ノンフリート等級とは?
フリートという英語を直訳すると「船団」、これから来たノンフリートという言葉は、自動車保険においては団体ではない「個人」という意味合いで使われます。
つまり、ノンフリート等級とは個人的な等級ということであり、記名被保険者に付与・適用されます。
自動車保険について語るうえで重要となるので、ここで詳しく触れておきますが、自動車保険の保険料を決定する大きな要素、
- 事故リスクなどによる保険料率・・・40~50歳を頂点に基本保険料が安く設定、近年増えてきた年配ドライバーの事故率増加によって、若い世代に加え65歳以上の保険料もアップしてきている傾向にある。
- 年齢制限割引・・・全年齢・21歳以上補償・26歳以上補償・30歳以上補償など、その年齢制限範囲が狭くなるほど、大きな割引率が得られる。
- 運転者範囲割引・・・制限なし・家族限定・本人、配偶者限定・本人限定の順でその割引率が大きくなる。
などに加え、今回説明している等級による割引も、すべて主たる運転者である記名被保険者に由来します。
そのため、契約者の等級が最高の20等級であろうと、記名被保険者が10等級ならその割引率が適用されるという訳です。
じゃあフリート契約ってあるの?
自動車保険において、一般の方が知っているのは前項で説明したノンフリート契約と等級ですが、10台以上の車を保持、それを一挙に保険契約、すべての車両に対してのリスクで保険料が決定するフリート契約というものもあります。
こちらには等級の概念が無く、加入台数や継続加入年数によって数段階、割引が設定されています。
このフリート契約は、対象車両に運転者範囲や年齢制限をつけることができませんが、ノンフリート契約の「全年齢補償」より、幾分安い保険料が設定されています。
そのため、多くの車両を業務に使い、不特定多数の運転者が存在する場合は、1台1台ノンフリート契約するより経費が抑えられるため、こちらを利用する会社も多くなっています。
ただし、運転者が限られている場合ではノンフリート等級による割引を適用したほうが安上がりになることもあり、個人事業主などは保険料節約のために、あえてノンフリート契約をしているケースが増えます。
保険会社によって等級の扱われ方は変わるのか
ノンフリート等級はすべての保険・損保会社で共有されているため、その割引率なども基本的に共通と考えて構いません。
ただし、業界全体で一斉にその割引率などを改正することはあり、最近では2013年10月に大幅な改正がなされていますが、詳しくは後程その割引率の変化などについては触れたいと思います。
等級は最高でどこまである?
高くなればなるほど、大きな割引が用意されているこの等級は、通常どの自動車保険会社でも、1~20等級まで設定されています。
そして、新規加入の際は何歳の方でも運転歴に関係なく、6等級からスタートするのが基本です。
つまり、ゴールド免許を持っていて無事故無違反、しかしこれまでどこの自動車保険にも加入していなかった40代の方も、免許取り立て初心者マークがまぶしい18歳の方であっても、全く同じ割引率ということになります。
もちろん、等級以外の要素である年齢制限割引の利用ができ、事故率が低いとされる40代での加入では若い世代より基本となる保険料が安く「不公平だ」という声も聞かれます。
ただ、この等級による割引に関してはいたって平等に、年齢に関わりなくその割引が適用されることになるわけです。
最近CMで流れる「22等級」の存在
前の項で最高が20等級と伝えましたが、自動車保険に関心の高い方の中には22等級の存在が気になっている方もおられるでしょう。
実は、いくつかの共済組合(全労災など)が提供している自動車保険には、20等級を上回る22等級設定があり、
- 保険料が安くなった
- 事故対応が悪い
- ロードサービスなどが手薄に感じる
などという口コミから、元の保険料が高いから一般の保険会社の方がいいなど様々な評判が立っています。
自動車保険の等級のことを伝える記事として簡単にここで紹介しておきますが、その賛否や加入検討は個人の判断にお任せします。
ノンフリート等級制度はこうなっている!~上下に伴う保険料の違いとその条件
等級で大きく変わる割引率
今回何度も等級は保険料を左右する大きな要素と述べていますが、その根拠となるのが下表で示す等級別割引率の大きな差です。
【表1】等級別割引率表
等級 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
事故無し | 64 | 28 | 12 | 2 | 13 | 19 | 28 | 40 | 41 | 43 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 52 | 55 | 57 | 59 | 63 |
事故有 | 20 | 21 | 22 | 23 | 25 | 27 | 29 | 31 | 33 | 36 | 38 | 40 | 42 | 44 | ||||||
改正前 | 52 | 26 | 10 | 1 | 10 | 17 | 23 | 28 | 33 | 37 | 40 | 44 | 47 | 50 | 52 | 55 | 57 | 59 | 61 | 63 |
※単位は%、赤字は割増黒字はそれぞれの割引を示す。(2013年改訂、三井ダイレクトのノンフリート割引率を参考に作成)
新規加入者のスタート等級である6等級では、この表によると19%の割引が受けられます。
一方、最高の20等級ではそれが63%にまで引き上げられ、その差は44%にまで達します。
つまり、等級による割引率だけで見ても保険料が半分近くになる計算、いかに等級が保険料を節約するうえで重要なのかは一目瞭然です。
ちなみにですが、前述した全労済の22等級の割引率は64%で、それから他の保険に乗り換える場合では20等級として取り扱うルールになっています。
また、保険会社の中には、長年継続加入をしている優良な顧客に対して、この22等級と同等の64%割引を用意しているケースもあるため、あまり大きなメリットと考えなくてもいいかもしれません。
2013年の改正で変わったこと
上記で軽く触れましたが、2013年前後に多くの保険・損保会社が揃って改正したのが、上表で示した割引率です。
改正前まで、7等級から8等級に上がったときの割引アップ幅がわずか5%だったのに対して12%に跳ね上がったのが、割引率の改正としては最も大きい点です。
しかし、最大の改正点は、どの等級でも概ね20%ほどある「事故無し、有」の割引率の違いが以前は存在していなかったことです。
そして、この事故無し割引と事故有割引の設定追加は、この後述べる等級のダウン要素と大きく関わってきます。
目指せ20等級!等級の上げ方
まずは、割引率をアップさせる等級の上げ方から説明しますが、これについてはダウンに比べるといたって単純なシステムです。
無事故で自動車保険の適用をせず、一般的な保険期間である1年が無事に経過すると、何の手続きもなしで、次の更新から自動的に1等級上がっていきます。
つまり、6等級でスタートし足掛け14年間保険を使わないまま過ごせば、晴れて20等級にたどり着くことができるわけですが、言うほどそれは簡単なことではありません。
ダウンする要因と事故有割引が適用される期間
長期間、無事故で過ごす方はそれほど少なくないので、前項でいったほど20等級に到達するのは難しくないと思った読者の方もいるはずです。
ただし、自動車保険の等級ダウンは大きな事故を起こした時だけでなく、その他の些細なことでもダウンしてしまうのです。
その要因別のダウン幅は大きく2パターン
- 3等級ダウン事由・・・歩行者を撥ねたり他人の車と事故を起こしその賠償保険金が支払われた場合はもちろん、些細な単独事故による自身の車の修理代を車両保険でカバーした際も同じく3段階ダウンする。
- 1等級ダウン事由・・・盗難・天災に伴う保険金の支払いから、落書き等のイタズラ被害や飛び石など、主に不可抗力に対する車両保険の適用。
これも2013年の改正によって新設されたもので、以前は1等級ダウンがありませんでした。
関連してノーカウント、つまり等級がダウンしない保険適用事由には、
- 弁護士費用特約のみの支払い
- 人身・搭乗者傷害保険金のみの支払い
- ファミリーバイク特約を使った場合
があります。
この3つの場合以外は、事故の程度や不可抗力に関わらず、すべての保険利用で少なからず等級が下がると考えて間違いありません。
場合によっては保険を使わないほうがいい?
大きな事故で多額の賠償が必要になった場合や大きな自損事故で修理代がかさむ場合は、等級が下がるも何も保険を使用せねばカバーができず、そのために入るのが任意保険です。
しかし、小さな自損事故や飛び石でのフロントガラスの傷など少額の修理費用で事が済む場合においては、あえて自動車保険を使わず自腹を切ったほうが結果的に得をするケースが多くなります。
わかり易くするため具体例、
【表2】事故内容例
加入者等級 | 事故内容 | 修理費用 | 車両保険免責 |
15等級 | 自損・自宅駐車場の壁に接触 | 10万円 | 0-10万円 |
と上表の内容は共通、保険を使用する場合をA 、使用しない場合をBと仮定します。
Aの場合には確かにその利用で修繕費はカバーできますが、それによってノンフリート等級は3つも下がるため割引率が下がることになります。
しかしそれより大きいのが、改正によって追加された事故有割引率を適用されてしまうこと、続けて下表をご覧ください。
【表3】事故後3年間の等級割引推移
Aの場合 | Bの場合 | ||
事故後経過年数 | 翌年 | 12等級(事故有割引)27% | 16等級(事故無し割引)52% |
2年後 | 13等級(事故有割引)29% | 17等級(事故無し割引)55% | |
3年後 | 14等級(事故有割引)31% | 18等級(事故無し割引)57% |
※いずれも%は割引率、前出の等級表による
3等級ダウンの場合は3年間、1等級ダウンの場合は1年間、事故有割引が適用されるため、3年間トータルでは非常に大きな割引率の差が発生し、多くの場合、それは10万円出た保険料を大きく凌駕することになります。
ノンフリート等級制度はこうなっている!~いくつか実際に見積もりをして比べてみた~
ここまで長々とその仕組みについて述べてきましたが、実際に等級によって保険料がどう変わってくるか、数字を見てみたほうが実感がわくはずです。
そういう訳でここでは、ある通販型自動車保険の公式HP機能を利用、保険料の見積もりを実例に沿って紹介し、一緒に見ていきたいと思います。
見積もり条件
まず、すべてに共通する記名被保険者の条件や、補償内容を以下のように設定しておきたいと思います。
【表4】見積もり条件表
記名被保険者 | 契約車両 | 用途 | 年間走行距離 |
33歳男性、ゴールド免許 | 平成29年式トヨタプリウス | 日常・レジャー | 5,000km以下 |
運転者範囲・年齢制限 | 対人・対物 | 人身傷害 | 車両保険 |
本人限定・30歳以上補償 | 無制限 | 乗車中のみ・3,000万円 | 無し |
新規加入6等級の場合
今まで全く自動車保険に加入しておらず初めて申し込みをしたケースでは、ある例外を除いて前述した通り6等級からのスタートとなります。
初めて自動車保険に加入するわけですから、その等級による割引率に事故無しと事故有の区別は存在しません。
今回、見積もりを実施した通販型自動車保険会社では、
証券不発行割引
新車割引
ゴールド免許割引
などがありますが、それをすべて適用した時のこの場合の保険料は年払いで、
「48,180円」
となりました。
優良ドライバーの証20等級の場合
上表の33歳の場合、仮に18歳で自らの名義で自動車保険に加入しその後一切保険を使わず無事にカーライフを送っていたケースだと、32歳の段階で最高の20等級になっているはずです。
また当然ながら、事故有割引率になっていることもないため、最高の63%割引が適用されます。
すると、同様の条件で割引を適用した場合その保険料は、
「17,370円」
となり、6等級よりも3万円以上安くなりました。
最低の1等級だと大変なことに
一方、過去に事故を数回起こし自動車保険のお世話になった場合、その等級が6等級よりも下がっているケースが考えられます。
もしも、それが最低の1等級になっている場合、その保険料は64%割り増し、
「66,000円」
と、かなり高くなってしまう見積もりが出ました。
これは、20等級時の3.8倍もの年間保険料で、新規加入時の6等級よりもかなり高い。
ですが、問題はまだあり、この保険料は人身傷害がついていない金額です。
実は、1、2、3等級の場合、自動車保険会社では人身傷害への加入ができない決まりになっていて、それは多くの保険会社共通です。
等級は高いにこしたことはない
代理店型と通販型との違いや各割引の設定など、見積もりをする自動車保険会社によってその差に違いは生じます。
また、今回仮設定した、
- 年齢・・・保険料の基礎額が若ければ高く、40~50代になれば安くなる
- 車種・・・一般的に古い車種やスポーツカー、高級車は保険料が高くなる
- 運転者範囲・・・本人限定から家族限定、限定なしなどにすると保険料もアップする
などが変われば、その保険料見積もりも変化します。
さらに、車両保険を付けたり補償を厚く特約などを多く設定し、その保険料のトータル金額が上がれば上がるほど、等級による保険料の差は増大します。
ですが、安全運転を続けてその等級を高く維持するのが、最も自動車保険の保険料を節約する手っ取り早い方法であることは間違いありません。
そして、等級が順調にアップするということは、事故などのトラブルに合っていないということ、何よりそれが自分のためにも家族のためにも一番大切なことです。
ノンフリート等級制度はこうなっている~保険料を抑えるコツ~
上記で実際の見積もり結果を見た以上、何とか等級は維持したいと考えるのが普通です。
また、各保険会社によって大きくその保険料が同じ等級でも違うことがありますが、安い保険を見つけ乗り換えをしたいと考えた時、その等級はどのように扱われるのでしょうか。
自動車保険の乗り換えと等級
自動車保険では等級を各社が共有していると上記で説明しましたが、乗り換え時には前契約の等級が引き継がれる ので全く心配無用です。
ただ、満期ではなく途中解約での乗り換えには、等級に絡むデメリットが1つだけあります。
それは、等級がアップするカウント、つまり、1年の進行が途中解約ではリセットされてしまうことです。
どういうことかというと、仮に4月1日がその満期である自動車保険の等級が、その加入時点で10等級とします。
順調に安全運転、事故などもなく満期を迎えた場合、次期契約からは継続契約はもちろん、保険会社を変更したとしても、引き継がれて11等級にアップします。
ですが、仮に3月末に中途解約、新たな保険に乗り換えた場合では等級が10等級のまま据え置き、11等級にアップするのは丸々1年近く伸びてしまうのです。
ですので、安い保険を見つけて乗り換え考える際も、満期が近いようなら一度踏みとどまり、満期を迎えて等級をアップさせてから乗り換えを検討したほうがいいケースもあります。
解約しても等級を維持できる「中断証明書」の存在
前項と少し関連しますが、自動車保険をやむを得ず途中解約しなければいけないこともあります。
- 海外赴任が決まった・・・国内の自動車保険は海外での運転に適用されない
- 転勤で電車通勤になった・・・配偶者しか乗らなくなるケースなど
- 定年し車に乗らなくなった・・・子供に車を譲渡・買取業者に売却など
などといった場合がそれですが、乗りもしない自動車に保険をかけておくのはいくら等級アップの進行がリセットするとはいえ、いくらなんでもナンセンスです。
ただ、このようなケースでも、海外赴任から戻ったり、再度転勤になったり、定年後やはり車が必要になったりして、再度車を購入する場合には自動車保険に入りなおす必要も出てきます。
すると、新規加入となって6等級から再スタートということになるのか、それを防ぐために存在するのが、ここで紹介する中断証明書です。
自動車保険会社では、
- 車の登録抹消や譲渡証明書
- 海外赴任証明やパスポートの写し
などの提示によって、保険契約が完全解約ではなく一時的に中断していることを証明するこの中断証明書を、どこの保険会社でも発行してくれます。
これを再加入時に提出することで中断時の等級を引き継いだ状態での再加入ができる様になっていますが、それは中断前に加入していた以外の保険会社への加入でも有効です。
中断証明書さえあればその有効期限である10年間はせっかくアップさせた等級を維持できるので、上記のようなケースの方は必ず手続きをして入手するようにしましょう。
新規加入時の保険料の節約ができる方法!
最後に、特に保険料の高い若い世代の方必見、新規加入自動車保険料の節約術を紹介して締めましょう。
上記で年齢問わず、自動車保険への新規加入では、その等級が6等級からスタートすると述べました。
ですが、ある一定の条件を満たせば、それを7等級からスタートさせることができるのです。
保険会社によって2台目割とか、セカンドカー割引とか呼ばれている制度がそれで、
- 契約1台目の等級が11等級以上である
- 1・2台目の車種が自家用8車種であり、その所有者名義が法人ではない
- 2台目の所有者が1台目と同じ、あるいは、その配偶者及び同居の親族である
- 2台目の記名被保険者が1台目と同じ、あるいはその配偶者とそれぞれの同居の親族である
という条件を満たすと、適用されるものです。
つまり、親御さんの等級が高い場合、その同居のお子さんの自動車保険に適用することで、高い自動車保険料を幾分節約できるという訳です。
等級ごとの保険料を比較した項をご覧ください。
【表4】での記名被保険者年齢を18歳に変えて、他の条件はそのままにしてセカンドカー割引を適用して見積もりした結果3万円以上安くなったので、馬鹿にできない金額です。
また、この割引制度はお子さんだけでなく、条件でもあったように配偶者にも有効です。
パートを初めて自動車に乗り始めた奥様にも適用できますので、ぜひそんなときにも活用してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
自動車保険について語るうえで決して外すことのできないのが、今回触れてきたノンフリート等級。
長きにわたりできる限り多岐に、細かく説明をしてみました。
実際の見積もりなども紹介しましたが、保険料は各保険会社で同じ等級でも大きく変わってきます。
