車の維持費の中でも、比較的大きな割合を占める自動車保険。
万が一の事故に備えて、なくてはならいものなのは理解できるものの、日頃何かの役に立ってくれるわけではないだけにもったいなく感じてしまうはず。
そんな自動車保険について、筆者自身の新車購入を期に改めて考えてみましたので、そこから得られたお役立ち情報について共有させていただきます。
○自動車保険の仕組みや種類
まずは自動車保険の選び方について、自動車保険の仕組みや種類を知ることから始めてみたいと思います。
そもそも読者のみなさまは自動車保険をどのようにどんな基準で選んでいますか?
もしかすると、そもそもどこで契約しても同じだろうと思っていたり、親の代から代々ここだから、ディーラーから勧められたからと選ぶことそのものを放棄していたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか?
特に最近では流行のタレントを起用した派手なCMで、中身そのものはぼやかしてしまう保険会社も少なくありません。
憧れの○○がCMに出ているからなどの理由では決して決めないでください。
保険は、自分の状況のあったものを必要な分だけ契約することが重要だということを念頭に置いて、一緒に検討してみましょう。
■自動車保険の仕組み
仕組みを考えていく上で、まず抑えていただきたいのが自動車保険の種類です。
次の2種類に分類されます。
道路を走る自動車には例外なく加入が義務づけられている強制加入の自動車保険です。
自動車事故により他者の生命に損失を与えた場合、まずはこの保険から損害賠償が支払われることになります。車検の際に車検年数分ほぼ自動的に加入しているはずです。
現在のところで加入率は8割に届かないほどです。残り2割の未加入の方の考えが私には理解できません。絶対に加入することを強くおすすめします。
交通事故の際には強制加入の自賠責の限度額では賄いきれないことも多々あり、この場合に残りをこの任意保険で補うことができるようになっています。
また、自賠責は人に対してのみ支払われるため、財産(物品)に損害を与えた場合には任意保険だけが頼りとなります。
この任意保険を加入せずに事故を起こしてしまうことで、数十億円の負債を抱える可能性もそれほど低くない確率であります。
■意外と知られていない保険と共済の違い
自賠責保険については、どこで加入しても全く同じ金額同じ補償内容となりますので、特に選択の余地はありません。
任意保険に関しては、別途解説させていただく予定の保険料自由化後からは特徴や補償内容、保険料に会社による大きな違いがあります。
そこで、今回はまず任意保険の中でも大きな分類となる互助団体による自動車共済と、民間の保険会社が運営する自動車保険の違いについて解説させていただきます。
非営利団体に加入する者同士が、お互いを助け合うという主旨で運営しているため、利益が加味されていない分割安となります。
ただし、民間企業の自動車保険と比べると選べるプランや割引項目が少ないという特徴があります。
代表的なものに「JA共済」、「こくみん共済」、「都道府県民共済」などがあります。
民間企業が営利目的で運営している金融商品のため、非営利の共済と比べると保険料が割高となる傾向にあります。
ただし、その分サービスがきめ細かく、適用される割引の種類や補償プランも豊富に用意されており、自分にピッタリのプランが見つけられれば割安になることもあります。
■自動車保険の会社による違い
保険と共済の違いだけでなく、実は意外と知られていない事実として自動車保険の中にも各社による考え方や営業形態の違いが存在しています。
考え方の違いとなる具体例を以下に挙げてみます。
自動車保険の契約形態にはダイレクト型と代理店型の2種類があります。
両者の成り立ちや具体的な違いについては別途解説させていただきます。
例えば、保険料を大きく左右する項目で使用目的(業務、通勤・通学、日常・レジャー)がありますが、どこまでが通勤・通学でどこからが日常・レジャーなのか、保険会社によって解釈が異なります。
(保育園への送迎は日常・レジャーだが、幼稚園は通勤に該当したり、最寄り駅までの送迎を通勤とするかどうかなど)
これは一例に過ぎませんが、この他にも事細かに各社それぞれ独自のリスク判断基準が存在しています。
自動車保険について、意外と知られていない分類をいくつか特徴と共に解説しました。
引き続きよく聞くダイレクト型と代理店型について詳しく見ていきましょう。
■ダイレクト型と代理店型
保険自由化後に一気に人気となったダイレクト型自動車保険。
TVのCMや広告で良く目にするものの、これまでの代理店型の保険と何が違うのか今一わかりづらい。そこで、ダイレクト型と従来からある代理店型のメリット・デメリットについて比較してみたいと思います。
どちらがどのようなケースにおいて適しているのか考察することで、自分にあった最適な自動車保険選びの参考にしてみてください。
■保険自由化
ダイレクト型と代理店型の話をするにあたっては、保険自由化に対する説明を省くわけにはいきません。
保険自由化より以前の自動車保険の保険料は、自動車保険料率算定会という団体が算出した値を一律で使用することが法律で義務付けられており、どの会社で加入しても同じ金額となっていました。
1996年12月に日米保険協議が決着し、1998年にいよいよ保険業法が改正され自動車保険が自由化されました。
保険自由化により何がどう変わったのか振り返ってみます。
もちろん一番の変化として一律の料率を使う必要がなくなったため、保険料の割引競争がはじまりました。
単に同じ内容で価格競争をしても利益を圧迫してしまうだけです。そこで生み出されたのが、車の使用条件等に応じて細かく保険料を算出していくリスク細分型といわれる商品です。
契約者が事故を起こすリスクを保険料計算に反映させ、事故リスクが低い人は保険料が安くなり、逆に事故リスクが高い人は保険料が高くなります。
保険の自由化は、それまで戦後以来の護送船団方式により守られてきた日本企業にとってはピンチでもあります。
海外の保険会社が日本に参入するいい機会となりました。
我々消費者にとっては、選択の幅が広がり歓迎すべきことです。
自由化前の自動車保険契約といえば、保険を扱う代理店の店舗を訪れ対面で契約事項等の説明を受けた上で契約するのが当然でした。
自由化によって新たにダイレクト型という契約形態が持ち込まれました。
名前の通りで、代理店を介することなく保険会社とダイレクトに電話やインターネットを使って契約できるもので、代理店手数料を挟まない分保険料を安くすることが可能です。その形態から通販型とも呼ばれます。
■代理店型とダイレクト型を比較
従来からある代理店型と比較的新しく登場したダイレクト型のどちらがどんな場合にお得になるのか知るために、まずはそれぞれの特徴を比較してみましょう。
代理店型の特徴
- 商品バリエーション
いろいろな保険を取りそろえる代理店だけに、自動車保険だけでなく生損保各種保険も同じ店舗で契約することで、重複の有無を確認しバランスよく契約することが可能です。 - 相談や見積もり
店舗で担当者と対面にて保険の相談ができ、プロのアドバイスを受けながら保険の内容を検討できることが最大のメリットです。
同じ担当者から全てのアドバイスを受けることで、上記取扱商品にあるメリットも最大化することが可能です。 - 申込み手続き
代理店担当者がほとんどの手続きを代行してくれるため、自身の手間を大幅に省くことができます。
ダイレクト型(通販型)の特徴
- 商品バリエーション
基本的にはそれぞれの保険種別のみで独立したラインナップ。
インターネットから加入申込みができる保険や、ダイレクト型独自の割引が存在するため代理店型よりも安価になる傾向があります。 - 相談や見積もり
電話とメールでのやり取りが中心になるため、相談よりも自分で調べたり情報収集したことを質問することが前提となります。
来店が不要のため、納得いくまで何度でも調査→質問→検討を繰り返すことができます。 - 申込み手続き
見積もり取得や申込み手続きは、郵送やインターネットを使って行います。
店舗に出向く必要がないため、空いている時間に自分の都合に合わせて24時間いつでも作業ができます。
代理店型とダイレクト型の特徴を見比べてみると、メリット・デメリットが明確になり自分にとってどちらが都合がいいかハッキリするはずです。
インターネットで調べることが得意で不明点を質問するだけで取捨選択できる方なら、断然保険料が安いダイレクト型がおすすめです。
逆に詳しい専門の担当者からおすすめを聞いたり、プロのアドバイスを受けたい方には代理店型が向いています。
プロのアドバイス料と考えれば、ダイレクト型と比べると少々高めな保険料にも納得がいくはず。
初心者の方はまずは代理店を訪れて、説明だけでも聞いてみてはいかがでしょうか。
■自動車保険を選ぶ方法
冒頭でお話したように自動車保険を選ぶということは、保険会社を選ぶこととは全く異なります。
まず、自分が車を使用する用途や目的を明確にし、それに応じた補償をしてくれる商品を選択することが大切です。
前述したようにリスク判断基準が保険会社によって異なっているため、一概にどの会社がどうとは言えません。
そこで、明確にした条件から絶対に譲れない重要なものを対象とし、一括見積サイト等を利用して見積もりを取ってみます。
そこから価格で上位3社くらいに絞った上で、更に細かな条件を見ていきます。
最終的には金額と希望の条件への適合度合いのバランスで決めればよいでしょう。
どこで契約しても大した差はないと思い込みがちな自動車保険。
しかし、各社考え方やリスクのとらえ方にも大きな差があり、商品や価格にも反映されています。
今回お話した中に使用目的に対する考え方の違いがありましたが、ほとんどの保険会社で、日常・レジャーは通勤・通学よりも保険料が大幅に安くなる傾向にあります。
自分の用途を日常・レジャーと認定してくれる保険会社を見つけることによって、大幅な割引が受けれらるということです。
また、保険は金融商品である以上は新商品がどんどん生み出され続けていきます。
一度納得のいく契約内容が出来上がったとしても、毎年見直していくことが重要です。
○自動車保険年代別比較
自動車保険の選び方が分かったところで、自身の契約内容が他の人と比べてどうなのかがどうしも気になるものだと思います。
もちろん、人それぞれ車種だけでなく契約内容まで異なっているだけに一概には比較できないのですが、目安にはなります。
そこで、もっとも大きな条件の一つ年齢別に一般的な加入例をみてみたいと思います。
■年代別保険料例を大公開
車種やその他の基本条件を統一して、年齢別に保険料の例を算出してみました。実際には保険会社や等級により異なりますが、一つの目安にご利用いただけるかと思います。
-
- 車種:BMW 318i
よく見かけるBMWのセダンでは最廉価グレードとなります。 - 料率クラス:対人4 対物4 搭乗者4 車両6
車種毎の事故率に応じてクラスがわかれており、数字が大きいほど保険料が高くなります。 - 年間走行距離:5000km
- 免許の種類:ブルー
- 運転者限定:限定無し
- 運転者の年齢制限:21歳以上
- 対人賠償:無制限
- 対物賠償:無制限
- 車両保険:つける
- 車種:BMW 318i
【10代】
- 年齢:20歳以下
- 等級:はじめて
- 運転者の年齢制限:21歳以上
保険料は年間572,200円(月々47,800円)となります。10代は事故率が全年齢の中でも特別高いので、保険料も飛びぬけて高額となります。
等級の低さも伴って、保険料の安い年齢の5倍以上にもなってしまいます。
【20代】
- 年齢:21歳~25歳
- 等級:9等級
18歳で免許をとりストレートに上がっていったと仮定して。 - 運転者の年齢制限:21歳以上
保険料は年間227,100円(月々19,100円)となります。
10代と比べると一気に半額以下にまで下がりました。
ようやく普通の自動車保険の金額になったと思います。
【30代】
- 年齢:31歳以上
- 等級:15等級
- 運転者の年齢制限:31歳以上
保険料は年間96,300円(月々8,200円)となります。
またも一気に20代から半額以下まで下がりました。
この調子で下がり続けるのかと思われますが、実はそうではありません。
30代の試算をした場合に運転者の年齢を31歳以上としましたが、これには理由があります。
実は平均的に保険料は30歳以上で年齢による上下がほとんどなくなります。
逆に年齢があがればあがるほど、同じ等級なら金額が上がっていきます。
後は、継続して加入し無事故を続けることで等級が上がっていきます。
等級の上昇に伴って割引率も上がっていくため、トータルすると保険料は下がるというわけなのです。
また、一言で年齢と言ってしまっていますが、年齢には2パターンあります。
契約者本人の年齢と運転者全員の年齢です。
運転者を契約者本人に限定している場合は問題ないのですが、そうではない場合で契約者以外の運転者の年齢が低い場合が問題となります。
例えば、多いのが家族で子供が免許を取った場合です。
それまで両親が運転者となっていたため、等級もあがり保険料を安く抑えられていたのに子供が免許を取得し、10代の運転者を入れたため年齢制限がなくなり、保険料が一気に跳ね上がる場合があります。
保険料は契約者本人ではなく、運転する可能性のある方の中で最も若い人に合わせて変動するということにご注意ください。
■保険料に大きく影響する年齢以外の要素とは?
年齢や等級は保険料に大きく影響することがわかりましたが、それではそれ以外の要素はどうでしょうか。
保険料に影響を与えやすい要素を解説させていただきます。
保険料は、簡単に言ってしまえば事故率により算出しています。
免許の色は免許取得後の経過期間や交通違反の有無により変わってくるため、事故率にも直結する要素となります。
- グリーン:免許を取得して経過期間が浅い分事故リスクが高い
- ブルー:免許を取得して経過期間が浅い、もしくは交通違反や事故を起こしているため事故リスクが高い
- ゴールド:直近約5年間で違反・事故をしていないので事故リスクが低い
特にゴールド免許にはゴールド免許割引が適用されるので、保険料の違いはより大きくなります。
極論を言ってしまえば、車を車庫から出さなければ事故を起こす確率はゼロです。
保険会社としては掛け金が丸儲けというわけです。そこから少しでも走れば走った分だけ、事故リスクが発生します。
「保険料は走る分だけ」というフレーズがCMで流行しましたが、事故リスクと直結する走行距離もやはり保険料に大きな影響を与える要素となります。
また少し前まではなかった、距離や運転の仕方まで保険料に影響することが当たり前になりつつあり、さらには海外ではIT技術を利用したビックデータとAIによる事故率診断まで導入されはじめています。
車業界全体を見渡せば、コネクテッドカーと言われる車とインターネットがつながることが当たり前の時代が到来しており、自動運転を促進する要因にもなっています。
このまま自動車IT化の流れが進めば自動車保険も今とは大きく変革する時期もそう遠い話ではありません。
○保険料節約の第一歩補償の重複を見つけよう
普段使いの車に加えて趣味用の車、あるいは家族それぞれの車と、一家で複数台の車を所有していることも珍しくはないはず。
そこで、2台目の自動車保険契約をお得にする方法をレクチャーします。
自動車保険各社が設定しているセカンドカー割引だけでなく、特約の重複をなくすことでさらにお得にすることも可能です。
■自動車保険の2台目割引ってなに?
自動車保険の2台目割引とは、商品名でいうと「セカンドカー割引や複数所有新規割引」のことで、通常なら自動車保険を新規で契約した際にはノンフリート等級(保険料の割引率を定めた等級)が6等級からとなるところが、1台目の自動車保険のノンフリート等級が11等級以上の場合に限り、7等級から契約できるというものです。
以前は、記名被保険者・車両所有者が1台目と同一人物に限定されていましたが、現在では同居の親族であれば適用されるようになりました。
新規で自動車保険に加入する場合の一度きりしか適用対象とはなりません。
条件がいろいろとある割には1等級分しかお得にならないなんてと思われるかも知れませんが、実はこの6等級と7等級の間にはかなりの差があります。
割引率でいいますと19%、約2割の差となります。
念のために2台目割引が適用される条件をまとめてみました。
-
- 契約している自動車保険の等級が「11等級以上」である
- 1台目と2台目の【被保険者】が「本人か配偶者・同居の親族」である
- 1台目と2台目の【車の所有者】が「本人か配偶者・同居の親族」である
- 契約する車種・用途が【自家用】であること
また、条件ではありませんが、1台目と2台目の保険会社が必ずしも同じである必要はありません。
2台目割引を商品として採用している保険会社ならどこでも適用可能です。
■2台目割引だけじゃない!特約の見直しでもっとお得に
自動車保険の中には1台目で加入しておけば、複数台に同じ内容を適用できる補償や特約が存在します。
そこで、それらについて2台目以降での契約内容から省くことで保険料の無駄をなくすことができます。
- 人身傷害保険(一般型)契約した車以外の交通事故にあった際に補償される保険で、契約者の家族も補償対象となります。
そのため2台目以降に同じものをつけても重複となってしまい無駄です。
ただし、”契約した車以外”の範囲には契約者の家族が所有する車は含まれません。
したがって、2台目以降には人身傷害保険(搭乗中のみ・車内のみ)などを追加するとよいでしょう。 - ファミリーバイク特約
契約した車以外の125cc以下の2輪車で事故を起こしてしまった場合に補償してくれる特約です。
契約者の家族も補償の範囲となるため、2台目以降にこの特約を付ける必要はありません。 - 弁護士費用特約
事故にあった際に相手との示談交渉時や、損害賠償額に納得がいかない場合などに弁護士に相談できる便利な特約です。
この特約も契約者だけでなく家族も補償範囲となるため、2台目以降につけると重複してしまいます。
また、あまり知られていませんが、契約した車以外の交通事故でも補償される特約となっています。
ここで紹介したものはほんの一例にしかすぎません。
しかし、同じような観点で補償内容や範囲を確認してみれば、必ず重複を発見できると思います。
自動車保険を見直す際にぜひ参考にしてみてください。
家族間でよくみてみると案外重複が多いことに気が付くかもしれません。
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