「あれ、こんなところにオイルが垂れている」
駐車場をふと見ると、皆さんも写真のような光景を見たことがあるのではないでしょうか?オイル漏れは車トラブルの中でも定番中の定番です。
そんなオイル漏れトラブルの中でも最も発生率が高いのがエンジン回りからのオイル漏れです。
オイルのほとんどはエンジンに集まっているので当然と言えば当然ですが、そんなオイル漏れの犯人(主犯格)と呼ばれているあるパーツがあります。
それは、シリンダーヘッドカバーガスケットというパーツです。
みなさんあまり聞き慣れないパーツだと思います。
ちなみにオイル漏れが目立つ場合車検に通らない可能性もあります(程度にもよりますが)。
今回はこのオイル漏れの最大要因であるシリンダーヘッドカバーのガスケット交換についてご紹介したいと思います。
シリンダーヘッドカバーガスケットとは?
まずこの聞き慣れないシリンダーヘッドカバーガスケットとはどこにあるパーツなのでしょうか?どんな役割をしているのでしょうか?
今回交換作業をする上であらかじめ理解しておきましょう。
「どんなパーツ?どこにある?役割は?」
まずはシリンダーヘッドカバーガスケットという言葉は、シリンダーヘッドカバーとガスケットという2つに分けられます。
ガスケットとはゴムパッキンのようなものと覚えておけば良いと思います。
よってシリンダーヘッドカバーについているガスケット(ゴムパッキン)ということになります。
以下が取り外したシリンダーヘッドカバーとガスケットです。
まず最初にシリンダーヘッドカバーについて理解していきましょう。
シリンダーヘッドカバーは、通常時は以下写真のような感じで、シリンダーヘッドの上部へカパッと収まりエンジンルーム内のカムシャフトやプラグホール、その下のシリンダーなどを保護しています。
このシリンダーヘッドカバーを取ると以下の写真のようにエンジン内部が姿を現します。
カムシャフトやプラグホールが剝き出しです。
ご覧の通りヘッドカバーの中はエンジンオイルで満たされており、エンジンを稼働させる為あるいはエンジンの動力を伝える為の様々なパーツが入り組んで設置されています。
強固なエンジンを形成しているこれら全てのパーツはほとんど金属で出来ています。
これらエンジンにとって重要な金属パーツを保護し、常になめらかな状態で正しく動かすにはエンジンオイルがいかに重要かこの写真を見れば分かっていただけると思います。
オイルが適正量なかったり、オイル自体が劣化しているとそれはすなわちエンジンの不具合に直結しているということになります。
またシリンダーヘッドカバーが取り付けられている写真を見ていただければよく分かりますが、シリンダーヘッドカバーはシリンダーヘッドと接合しています。
この接合部分は密着度、密閉度がなければ、当然上記で説明したエンジン内のオイルは外へ漏れてしまいます。
そこでその間に密着度、密閉度の高いゴムパッキンを噛ませているのです。
そのゴムパッキンこそがガスケットになります。
ちょっと長い説明になりましたが、これがシリンダーヘッドカバーガスケットというパーツの役割・働きということになります。
オイル漏れを発見!?漏れの種類と原因
オイル漏れが発生している場合、相当こまめにオイルチェックをする方であればその異変に前もって気付けるかもしれません。しかし大抵の方はそうはいかないと思います。
恐らく、気付いたら駐車場に見慣れないオイル跡があった、最近エンジンの調子がおかしい、というように具体的な症状が起きてから気づかされるのが大抵だと思います。
発見したらまず何をするべきなのか、オイル漏れにはどんな種類や原因があるのかここでご紹介したいと思います。
「オイル漏れを発見したらまずすること」
オイル漏れの場合、目に見えてポタポタっと垂れているというようなケースは実は稀です(もしそうなら緊急事態なのですぐにも整備工場へ持っていきましょう)。
大抵の場合は、まず原因の部分からジワジワと滲み出てくる、それが何日か何週間か溜まると、時間の経過とともに1滴2滴と下へ落ちるというような感じが大半です。
なので、駐車場の路面がコンクリートやアスファルトの人であれば、オイルの痕跡で分かりますが、駐車場が砂利や砂地、土の場合はオイル漏れしていることにすら気付かないこともあります。ここがオイル漏れをあなどってはいけない点です。
そうするとエンジンオイル量が気付かぬうちに極限まで減っていて、エンジン焼け→エンジン故障ということになったりします。
やはり1か月に1度でも良いので、ボンネットを開けてのエンジンルーム点検は重要だと言うのが良く分かります。
そして、そこでオイル漏れに気付いた方は、早急に行うべき対応が2点あります。
1つ目は、痕跡からオイル漏れを起こしている場所を特定することです。
オイルと一言で言ってもエンジンオイルだけではありません、ブレーキオイルもありますし、足回りに使われるグリースも飛び散って踏まれた跡はオイルのように見えます。
2つ目はオイル量を調べることです。オイル漏れの箇所を特定できているのであれば、そのオイル量をチェックしましょう。エンジンオイルもブレーキオイルもそれぞれのタンクでオイル量を目視で確認できるようになっています。
もし、オイル量が極限まで減っているとなると、車自体を動かすのが危険です。
たいして漏れていないだろうと勝手に判断し、オイル量をチェックもせずそのまま乗り続けると後々大きな故障や事故のもとになります。
「種類と原因」
今回の本題であるシリンダーヘッドカバーのガスケット交換は、エンジンのオイル漏れの為の対策(整備)です。
そんなエンジンのオイル漏れですが、大きく以下の2種類があります。
それぞれの症状と原因をおさらいしておきましょう。
① 「エンジンの外側へ漏れる」
エンジンを構成する各パーツは間にゴム製のパッキンやシールを挟むことによって、内密性を上げています。しかしこのゴムのパッキンやシールは経年で硬化し、弾力性が失われます。そうなるとパーツの組み合わせ部分からエンジンの外部へオイルが滲みでるようになります。
症状が進むとポタポタと垂れるようになり。気づくと駐車場がオイルだらけ、というようなことになります。
② 「エンジンの内側へ漏れる」
もう1つは、エンジン内にあるシリンダーの燃焼室(ガソリンを爆発させている部屋)へ、エンジオイルが侵入してしまうことがあります。ガソリンと一緒にオイルも燃えて(焼けて)しまう現象が発生します。こちらも原因の大半は、各パーツの間にあるゴムのパッキンやシールの経年劣化が挙げられます。発生場所として多いのがプラグホール内へオイルが漏れ、そのまま燃焼室へ侵入するというケースです。
症状としては、オイルも一緒に焼けるのでマフラーから白い煙が出てくることがあります。
車の周りや駐車場、エンジンルームにはオイル漏れの痕跡は確認できないが、オイルは異常に減っているというような時は、このシリンダー内側へオイルが漏れて焼けている可能性が大いに考えられます。
ガスケットの寿命
ちなみに一般的には、10万キロ前後がおおよその交換時期だと言われています。
私の持っているBMWミニも10年、9万キロ当たりでプラグホール内へのオイル漏れが発覚したので、交換しました。
結局大半の理由はゴムの経年劣化なので、近年ゴムパッキンは劣化、硬化しづらいように作ってあります。
エンジンを保護する重要なパーツなので2~3年で硬化して使えなくなるようでは話になりません。
なので、走行年数や走行距離が10年10万キロ前後に近づいている方で、エンジン周辺や駐車場にオイル漏れ跡を発見したら、まず疑ってみても良いかもしれません。
ガスケット交換の難易度と交換費用相場
今回シリンダーヘッドカバーガスケットの交換方法を紹介しますが、私が実際自分で行ってみた率直な感想として、DIY難易度としては「中」を設定します。
インターネット等を見ると、
「そんなの誰でもできるよ」
「いや、難しいからプロの整備屋に任せた方が良いよ」
と様々な意見が飛び交っています。
しかし、私が思うに、タイヤ交換はもちろん、ワイパー交換、エンジンオイル交換、フィルター交換、プラグ交換、
これらの初歩的交換作業と比べれば、難易度は高いと思ってもよいと思います。
かといって、素人のDIYレベルでは相当難しいかと、全く手が付けられないかと言われれば、そこまではいかないと私個人は思います。
後項の具体的な交換方法で説明はしますが、1つ1つの作業はいたってシンプルです。
ただし、作業量が多く、何よりエンジンという車の最重要部位を開けるという部分にリスクが付きまとうのも事実ですので、DIY交換はあくまで自己責任ということを念頭にトライしてみて下さい。
ちなみにシリンダーヘッドカバーガスケット交換をプロに任せるのもそれはそれでありです。
参考費用としては、車種やエンジンの形態にもよってことなりますが、パーツ代が大体1~3千円。工賃が1万から2万という感じが相場です。
高級車、輸入車などでディーラーにお願いした場合は、3万円近くいってしまうかもれませんが、そうでなければ概ね総額1.5万から2万円というのが相場だと思います。
シリンダーヘッドカバーガスケットの交換方法
ちなみに車体はBMWミニを参照に進めていきます。
まずは、必要な道具と事前の注意点をご説明します。
「必要な道具」
必要道具は以下になります。
- 手袋(グローブ)
- プラグレンチ
- エクステンションバー
- ラチェットレンチ
- トルクスレンチ
- スパナ
- ドライバー(プラスとマイナス)
- ウェースペーパー
- クリーナー
- 液体ガスケット
※液体ガスケットとは、シリンダーヘッドカバーガスケットの密着度さらに高めるための文字通り液体になったガスケットです。
これを通常のガスケットに塗ることで、言わばガスケットとヘッドカバーの間の接着剤的な役割をしてくれて、さらに密着度・密閉度が上がります。
当然ですが液体ガスケットは、容器から外に出た瞬間から固まり始めますので、液体ガスケットを塗ってからの作業は素早く行う必要があります。
ちなみにプラグレンチ、エクステンションバー、ラチェットレンチ、トルクスレンチなどの道具は、エンジンカバーやシリンダーヘッドカバーの取り付け形状によって必要ではない場合もあります。車によって取り付けのネジ形状も違いますし、ネジも手の届かない奥にある場合もあります。各車の取り付け状況によって必要になります。
よって交換作業をする日に初めて取り付け状態を確認するのではなく、事前にエンジンカバーやシリンダーヘッドカバーがどのようについているのか、ネジ形状や位置を確認しておきましょう。
当日に「あれを買いに行かなきゃ」「これを買いに行かなきゃ」では、作業も進みません。
「作業前の注意点」
さて、事前の道具が揃ったら作業前の注意点があります。
まずは、車は必ず水平な位置に駐車し、シフトはパーキングへ入れましょう。
サイドブレーキも忘れずにかけましょう。
エンジンを停止するのはもちろんですが、ここで重要なのが必ずエンジンが冷え切ってから作業することです。今回の作業ではシリンダーヘッドカバーを開け、エンジン内がオープンになります。先述したようにエンジン内はオイルで満たされており、エンジンが高温の場合は当然オイルも高温です。
そのような状態では火傷等のリスクが高まり大変危険なので、必ずエンジンが冷えたのを確認してから作業を行うようにしましょう。
また、エンジンを開けますので、雨が降っていたり風がビュービュー吹いている場合は、野外で作業するのはやめましょう。
異物がエンジン内に混入すると後で大きな故障の元になりますので、その場合は必ず車庫などの屋内で作業するようにしましょう。
それではここから具体的な作業に入っていきます。
① エンジンヘッドカバーを外す
まずはエンジンヘッドカバーを外します。以下写真の部分がエンジンヘッドカバーです。
プラグカバーと呼ばれる時もあります。
車によっても違うかと思いますが、ミニの場合2か所のトルクスネジで止められています。
ネジはなくしたり、ネジの種類が違う場合は混同しないようにまとめておきましょう。
ネジは1つずつを完全に外し切るのではなく、まずは全部のネジをある程度まで緩めます。全部緩め終わったら、その後完全にネジを外します。ネジの数が多い場合、1つずつを完全に外し切ってしまうと、カバー自体が歪み最終的に歪んで取れなくなりますので注意する必要があります。
② イグニションコイルを外す。
さてエンジンヘッド(プラグ)カバーが外れると、以下写真の通りシリンダーヘッドカバーとイグニションコイルが姿を現します。
早速シリンダーヘッドカバーを外したいところですが、このままでは外せません。
まずイグニションコイルを取り外す必要があります。イグニションコイルは特にネジなどで固定されているわけではありませんが、手前の電気コネクター(カプラー)が接続されていますので、まずカプラーを外します。
カプラーはアースが固定されていたり、カプラーケーブルが固定されていますので外してフリーの状態にし、スペースを開けるようにしましょう。
その後イグニションコイルを外します、手で上へ引き抜くだけです。
BMWミニの場合、イグニションコイルの後に、さらにエアフィルターカバーも取らなければいけません。
エアフィルターカバーは通常の十字ネジではなく、トルクスネジで取り付けられています。
ここで大事なポイントですがエアフィルターカバーを外したら必ず、以下写真の空気口に蓋をしましょう。
この空気口から入った空気はシリンダー内へ直接送りこまれるので、小さなものでも異物が入ると大きな故障の元です。
新聞紙やテープ類で覆って対応します。
③ シリンダーヘッドカバーを外す。
ようやくここでシリンダーヘッドカバーを外します。このシリンダーヘッドカバーはかなり多くのネジ(ボルト)で固定されています。
BMWミニの場合ネジではなく11本のボルトで固定されています。また手では届かない部分(プラグホール内に)もあるので、エクステンションバーとラチェットも必要になります。ここでもボルトをなくさないように。
同じくボルトも1つずつを完全に外し切るのではなく、まずは全部のボルトを一旦緩めるところまで行い、そこから全部を外します。
ボルトが全部外れたらシリンダーヘッドカバーを外します。
ちなみにボルトは全て取れても、カバーは簡単には外れてくれないことが多いです。
長年取り付けられたガスケットや液体ガスケットは硬化し、カバーにへばりついています。マイナスドライバーを使ってテコの力でゆっくり数箇所ずつ持ち上げます。
一定のところまでカバー全体が上がれば一気にカパッと取れます。
シリンダーヘッドカバーを外すとこんな感じでエンジン内が姿を現します。
シリンダーヘッドカバーが外れたらプラグホールには新聞紙かウェースなどを詰めて、異物が混入しないようにしましょう。
④ ヘッドカバーに新しいガスケットをつける
さてヘッドカバーも外れたら、まずは古いガスケットを外します。外していると分かりますが古く硬化したガスケットは本当にゴムか?と思うくらい硬化しています。
まるでプラスチックのようで、これならオイルが漏れるのも納得できると思います。
ちなみにこの古いガスケットを触ってチェックするのはかなり重要です。
万が一新品のガスケットと比較しそんなに硬化していないようであれば、むしろガスケット以外で漏れている原因が考えられるからです。
基本的に10年近く交換していないのであれば、かなりカチカチに硬化していると思って良いと思います。
ヘッドカバーに新しいガスケット(パッキン)をつけますが、なかなかシリンダーヘッドカバーを外す機会は少ないので、ヘッドカバーを軽く清掃しておくことをお勧めします。
クリーナーとウェースペーパーを使って特に内側をキレイにしましょう。
掃除が終わったら早速新しいガスケットを取り付けます。
ヘッドカバーの淵に溝がありますので、その淵に沿って新しいガスケット(パッキン)をはめていきます。もともとガスケット自体が溝の通りの形状に作ってあるので、ここはそこまで難しい作業ではないと思います。溝に沿ってはめていくだけです。
重要なのははめた後からで、次に液体ガスケットをつけます。先述した通り、液体ガスケットは空気に触れた瞬間から硬化が始まります。図の断面図のようにガスケット全ての面に液体ガスケットを塗ったら素早くヘッドカバーへ戻すようにしましょう。
ちなみに液体ガスケットの硬化リミットは5分です。
もし5分を過ぎてしまった場合、再度全体に塗り直しましょう。
⑤ ヘッドカバーをエンジンへ戻す
それでは新しいガスケットをはめたシリンダーヘッドカバーを元に戻します。
原則は外した時と同じ位置、手順で戻しますが、液体ガスケットの制限時間があるので、あまりモタモタはしていられません。ただし、慌てすぎは厳禁です。
外したカプラーやその他ケーブルを挟まないよう注意し、ゴミが入らないように塞いだプラグホールやエアフィルターの紙等は必ず外しましょう。エンジン内に異物やネジ・工具などが混入していないかもしっかりチェックしましょう。
定位置に設置できたら素早くボルトを取り付けて固定しましょう。ここでも基本は1つずつを完全に締め切るのではなく、まずは全部のボルトをある程度まで仮締めを行い、そこまで終わったら全部を本締めします。焦っていきなり締めると、ヘッドカバーがずれたり、ヘッドカバーが全体に均等に固定されません。
⑥ 逆の順序でパーツを戻す
シリンダーヘッドカバーを取り付けられたら、あとは逆の手順で各パーツを戻していきます。エンジンルーム内にネジや工具など取り残していかないようにしましょう。
今回の作業はネジ数が多いので、エンジンのどこかに、またはエンジンルームどこかに置いておくと後で大きな故障の元です。ネジに限らず、工具なども置き忘れがないか改めて確認しましょう。
一応交換作業はこれで終了です。
ガスケット交換後の注意点
まずはエンジンをかけますが、必ず液体ガスケットの硬化時間を過ぎてからにしましょう。
最低でも10分は過ぎてからです。
エンジンをかけたら5分ほど待ち、ヘッドカバーのガスケット部分(パッキン部分)、今回交換した部分をぐるっとよく見ましょう。
オイル漏れがないでしょうか?また、ガスケット交換前にオイル漏れしている部分が特定できているようであれば必ずその部分を確認しましょう。
またオイル漏れだけではなく、今回エンジンルームも開けたので必ずエンジン音やアクセルを踏んだ感じに異常がないかも確認して見ましょう。
まとめ
さて以上がシリンダーヘッドカバーのガスケット(パッキン)交換のご紹介でした。
やはりエンジンに直結する作業だけあって、1つ1つの作業はシンプルなものの確実に作業を進めることが求められます。
私は初めて自分の手でシリンダーヘッドカバーをオープンし、エンジンルーム内を見た時少し感動したのを覚えています。「自分でエンジン開けちゃったよー」と思うはずです。
ぜひ自分でも出来そう!やってみたい!と思った方はチャレンジしてみてください。
コメント
車の整備に関しては全くのしろーとで、車検に出した工場の担当者からシリンダーヘッドのガスケット交換と費用の連絡頂き、知識に入れておこうと、読ませて頂だいたのですが、とても分かりやすく貴重な知識になりました、ありがとうございます。