カスタムの買取は高い?ダイハツの稼ぎ頭タントの買取状況とその相場とは

筆者が車業界で現役だったとき、ガソリンの値段は高騰を続けていた頃で、低燃費でコスパのいい軽自動車に需要が集中していました。
特に、ワゴンRやムーブといった軽ワゴンを購入するユーザーが増え、街中を席巻していました。

そんな情勢がしばらく続いた2000年初頭に、タントが登場し、街の風景を一変させるほどの大ヒットを飛ばします。

以降、軽自動車市場を揺さぶる存在になりますが、一体今この車種はどのような評価をされ、どの程度の値段で取引されているかなどについて、今回は迫って参ります。

 

タントの誕生と歴史とは

まずは、ダイハツの売り上げを支え続けるこの大ヒット車種が生まれた背景や変遷などを追って、それぞれの世代の特徴を知っていただこうと思います。

 

イタリア語が語源だったんです。

小さい頃、おはぎをたくさん作った祖母に食べてもいいかと聞くと、「たんとおあがり」と言われたのを覚えていますが、このタントというクルマの命名もそのたっぷりとかたくさんという意味の「たんと」から来たんだと、ずっと思っていました。
もちろん、それを連想させることも計算のうちだったのでしょうが、実は、「とても広い・たくさんの」という意味の、イタリア語から名づけられた車名なのだそうです。

今回記事にするにあたって、タントについて詳しく調べるまで知らなかった筆者は、遠く離れた国によく似た意味の言葉があるもんだなと、それを見つけた販売元のダイハツに変な感心をしてしまいました。

その誕生は、「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞を受賞した2003年11月末、クルマ市場では2代目プリウスが現在まで続く大ヒットの兆しを見せ始めていた頃のことです。
冒頭でも述べたとおり、当時の軽自動車の売れ筋は同社のムーブや、この年既に販売累計200万台を突破していた、軽自動車の絶体王者スズキワゴンRなどです。
そこに乱入していったタントは、それら軽ワゴン隆盛の秘密だった広い車内空間を決定付ける、全高・ホイールベースで各軽ワゴン車種を圧倒、軽ハイトールという新ジャンルを世の中に示しました。
圧巻の車内長は2m、これは同時期に販売されていた国産高級セダンの代表格、UCF31型3代目セルシオと比べても、わずか8cm短いだけ。
車体全体の長さが大人1人分(約170cm)ほどセルシオの方が長いこと、さらに、車高はタントの方が20cmほど高いことも加味すると、まさに驚愕の車内空間の広さと言えます。
翌年辺りから筆者の顧客の中にユーザーが増えだしましたが、実際に乗ってみるとその広さはもちろん、当時流行り始めていたセンターメータレイアウトとコラムミッションによるベンチシートの組み合わせがとても魅力的なものに感じました。
また、ノーマルエンジン車に加えターボ搭載モデルも同時に販売開始し、4WDも全グレードで準備しています。
新登場の軽自動車種としては広いユーザーを意識した珍しいスタイルです。
先行するムーブと共に、積年のライバルである1973年から30年余り軽自動車販売のトップに君臨し続けていた、スズキを何とか引きずり落そうと、社運をかけて開発に臨んだのがよくわかります。

代名詞となるスライドドアが主婦層のハートをゲット

初代タントに目を付け始めたのは、普段両手に買い物袋を抱えながらはしゃぐ子供の世話に追われる主婦たちでした。


これまで、軽自動車でスライド式のドアがついていたのは、

ダイハツ・・・ハイゼットカーゴ
スズキで・・・エブリイ
ホンダ・・・アクティバン

といった、商用のイメージの強い車種のみでした。
他のメーカーも、そこに一般ユーザーのニーズを感じていなかったため、前述3車種のOEM車種(※)を販売することに留まっていました。
※OEM車種・・・他のメーカーが開発製造する車を、そのまま名前だけ変えて自社ブランドの販売チャンネルでで売っている車種。

そんな中、見た目もチャーミングで、子供が乗り降りすることの多い助手席側にスライドドアを装備していた初代タントは、主婦層のニーズにジャストフィットしたというわけです

しかも、各ドアが90度に広く開いて、荷物の出し入れなどが容易になるように配慮されています。
事実、子育てを視野に入れる既婚の世帯の購入率は全体の9割超、そのうち女性ユーザーが6割近くと、「アクティブキッズファミリー」をメインターゲットに据えていたダイハツの思惑は見事に成功しました。
初代タントは、販売当初5,000台に設定されていた月間販売目標の倍以上である10,500台もの受注を受ける結果となり(発表翌月の2004年12月期)、軽自動車市場の上位戦線への堂々の参入を果たします。
また、ユーザーのニーズを敏感に察知したダイハツは、すぐに内装の仕様を一部変更し、

  • バニティー(化粧テーブル)ミラー付きサンバイザー
  • 車内の臭気や花粉などを除去するエアクリーンフィルター

などの女性を強く意識した装備が追加された特別仕様車である「スマイルセレクション」を発売し、それもスマッシュヒットにつながります。
名前や形を変えながら、以後のモデルにもこの特別仕様は引き継がれていきます。

 

カスタムの追加で若い男性層もゲット

筆者は仕事柄、後部座席にも目を配るため気づきましたが、パパさん層はともかく、未婚の男性にとって後部座席が広くドアがスライドである魅力は薄く、すでにエアロ仕様車やカスタムを持っていたワゴンR・ムーブにその目は向いたまま。
事実、初代タント販売初月の未婚男性購入率は3%以下、ママさんたちに押し切られた既婚男性はともかく、ファニーな出で立ちの初代タントに彼らの触手が伸びることはありませんでした。
しかし、初登場から2年後の2005年6月、非常に押し出しが強くパワフルでワイルドなイメージ漂う大型エアロバンパーなどを装備した「タントカスタム」が登場します。
カラーリングもクールなメタリック調のものが追加されると、一気に若い男性層にもその購入層が拡大していきます。

 

ものすごく広い間口にびっくりしました

軽ハイトールワゴンの先駆けとして市場に一石を投じ追随車種の登場を呼ぶこととなった初代タントですが、ワゴンR・ムーブの牙城は崩せず、4年後の2007年にその販売を終了します。
同年末に販売開始された2代目は、基本コンセプトはそのままにノーマルより女性的で丸みを帯びたエクステリアに変化しました。
カスタムは同社のムーブカスタムをより洗練した超攻撃的なデザインに昇華されて登場します。
最大の売りである車内空間も高さ・長さで初代を越えますが、最大の変更点はその代名詞であるスライドドアのついた助手席側の乗降性能アップでしょう。
軽自動車としては初めてのことでしたが、助手席側のセンターピラーを取っ払ってしまったんですダイハツさん。

「ミラクルオープンドア」と名付けられたこれには、実際に見たときのインパクトたるやすさまじく、その間口の広さだけでなく、構造的に考えて「ミラクル」と筆者もはっきり言って驚きました。
「別に大したことじゃないじゃん」と思うかもしれませんが、横からの衝撃に備え車体の安全性を支えるセンターピラーを外す、なんて発想と設計は剛性の高い乗用車ならともかく、軽自動車というただでも安全性の保ちにくい車種でよく実現できたなと。

当時気になったので調べたのですが、タントのセンターピラーは実際には無いのではなく、スライドドアの中に内蔵されて一緒に移動しているから「無いように見える」だけなんです。
しかも、側面からの衝突実験でも明らかになりましたが、通常のピラーより数倍強度の強い素材でできているので初代を超える車内安全性が確保できているのです。
ともかく、助手席側の90度まで開くヒンジドアと連動した、ぱっくりと間口が広がった助手席側の使い勝手の良さは初代を凌駕しています。
そして、初代にはなかったCVT(※)採用で燃費性能もアップしたとあって、登場翌年には大ヒット車種の証である年間10万台を大きくオーバーする16万台近くの販売数を記録しました。
初代以上の売れ行きを見せた2代目タントは、完全にトップ2車種に迫る3番手に浮上してきます。
※CVT・・・無段変速装置のこと、ギヤを介する通常のATより効率よくエンジンをコントロールできるため、燃費性能が大きく向上する。

 

高い壁を越えたのは・・・ホンダ!?

順調に売れ続けた2代目タントの前に突如これまでなかった方向から横やりが入ることになりますが、この横やりがかなり強力で、追っていた存在のワゴンR・ムーブ達までぶっ飛ばして2012年、なんといきなり年間軽自動車販売台数のトップに躍り出ます。
この横やりの名前は「N-BOX」で、これまで軽トールワゴンへの参入に力を阻止でいなかったホンダ自動車がぶち上げた大花火によって、軽自動車市場は大荒れの様相となります。

正直なところ、この年もワゴンRが王座に就くのだろうと思っていたなか、これほどN-BOXが売れるとは、さすがに筆者も予想できませんでした。

結果的に、このN-BOXは翌年も連覇し、同じ年に2代目タントはその販売が終了。3代目の登場と相成ります。
その販売において、ダイハツはある秘策を打ってきますが、それがユーザーの期待感アップを誘うための「ティザーキャンペーン」です。
これは、映画やアーチストのプロモーションなどでよく使われる広告テクニックで、ライブの開催日時や場所・収録楽曲などアルバムの詳細、時にはアーチスト自体を「シークレット」にしたり、商品について販売直前までその姿かたちを「シルエット」のみの公開にする手法です。

強くユーザーの気を引き付けることができるためアップル社なんかが良く使いますが、ある程度の知名度と既存ユーザーがいなければ成功せず、タントもそこまで来たというダイハツの判断がなされたのでしょう。

蓋を開ければ、キャンペーンは大成功。10月の発売開始翌月にはワゴンR・ムーブの2台巨頭を抜き去り、連覇中のN-BOXとの月間販売台数の差、266台、の2位にまで肉薄。
翌月には2万台近くを売り上げ抜き去ると、翌年度その勢いのまま2位を25000台近く離して初戴冠します。
ちなみに、この年の表彰台は日産デイズとN-BOXを含めたハイトール車種が独占、以降現在までこのハイトール車種人気は継続しています。

 

現行タントの特徴

スライド幅が先代より約10cm拡張、座席下部のでっぱりが無くなり、フルフラット化。
助手席側だけだったスライドドアは両側装備となり、販売当初CMでもアピールされていたように、ベビーカーをたたまずに収納できるなどその持ち味である荷物や人員の乗降がより楽になりました。

使い勝手の良さを上げるためのシートアレンジの増加やスライドドア増設によって起こる車体の重量化に伴い、低下が危惧される燃費性能も、

フード(車内のあらゆるところにあるカバーのこと)
フロントフェンダー(前輪タイヤを覆う枠)
レールカバー
バックドア
フューエルリッド(給油口を覆う蓋)

などの樹脂化によって軽量化に成功しているうえ、エンジンの圧縮効率を高めるなどの工夫により「平成27年度燃費基準+20%」という高水準を維持しています。
さらに、樹脂化の副産物ですが、バックドアの開閉が先代より楽になったという女性や年配ユーザーの声も聞かれます。

また、安全性能の面でも、

エマージェンシーストップシグナル・・・急ブレーキ時自動的にハザードを点灯させ、後続車に注意を促す。
スマートアシスト・・・障害物を感知すると運転者に警告したり、ブレーキ操作補助をするシステム。

を全グレードで装備するなど、広告効果だけでなくその性能面の充実ももちろんそのヒットにつながっています。

 

あなたのタントはいくらで売れる?購入年・世代別に買取価格相場を徹底検証

走りのN-BOXの対抗馬として、現在も軽自動車NO,1の座を激しく争うタントについて、その生い立ちやスペックなどを詳細に紹介してきましたが、その中古車市場での販売・買取査定相場は、現時点でどのようになっているのでしょうか。

主なユーザーが、子育て世帯であるノーマル各世代の相場に加え、男性ユーザーのお眼鏡にもかなったカスタムの相場についても、グレードや走行距離なども考慮に入れながら見ていきたいと思います。

初代はだいぶリーズナブルに

初登場からはや14年近くたつ初代タントは、そのすべてが10年or10万km辺りが交換目安であり、大きな費用が掛かるタイミングベルト方式であることもあって、軒並み中古車としての相場は、販売・買取併せて低くなってきています。
最高ランクのグレードである「RS」であっても、その最終販売年度である2007年式、しかも、走行距離が6万km程度とまだ乗れそうな車体でも販売価格が40万円を超える中古車はまれで、それは全グレードに共通しています。
実際に在庫を見ていると気づきますが、新車時には40万円ほどRSより安い下級グレードのLの方が高く販売されていることもあります。
これは、年式が進むと故障傾向が強くなるターボ仕様の方が低めの評価を受けるすべての車種に共通する買取査定傾向いが影響しています。
現在の販売価格から導き出される買取価格は最高の状態でも15~20万円辺りで、年式が古かったり走行が長くタイミングベルトも交換されていない車体では査定ゼロを受けることも少なくないでしょう。

 

2代目はグレードとカラーで大きく左右される

一方、時代の流れを受けてかターボ設定がカスタムのみになり、減額の対象であった高い交換費用のかかるタイミングベルト、原則交換不要のチェーンに換装されたことによって、2代目はグンとその取引相場が上がってきます。

グレード 走行距離 カラー 販売価格(車体) 予想買取相場
X(2008年式) 12万km ブラック 15~25万円 5~8万円
X(CVT2012年式) 5.5万km ブラック 80~90万円 45~52万円
X(CVT2010年式) 7万㎞ ブルー 35~45万円 20~27万円
X(CVT2012年式) 4万㎞ ブルー 50~70万円 30~42万円
G(2010年式) 4万㎞ ブルー 65~80万円 38~48万円
G(4WD2010年式) 6万㎞ ブラック 90~100万円 50~60万円

Xは2代目登場時からあるグレードですが、同じXでもCVT設定があるのは2009年式からとなっています。
そのため、2010年式の以降の車体になると販売価格もやや高目に推移しています。

ただ、非常に売れた車種なので在庫のだぶつきも目立ち、ブルーやシルバーなど主力カラーの車体は若干安めに評価されています。
例外的に、ユーザー層が女性中心としているため玉数の少ないブラックカラーは、高い買取査定をゲットできる可能性もあります。

一方、Gは2010年のマイナーチェンジ以降に登場したグレードでそのすべてがCVTであり、人気も高いため買取相場は同じ年式で同じカラー系統でもXより少し高めで取引されています。
加えて2代目タントの4WDはどのグレードでも玉数が少ないため、アップダウンの激しい山間地を中心に非常に高く売れます。
走行距離が少なかったり人気のカラーであったりすると、車体価格も軽く100万円を超え、併せて買取査定においても7年落ちとは思えない高い査定額が提示されることもあります。

 

トップを獲った3代目への評価はいかに?

久しぶりの栄冠をダイハツにもたらした現行タントについては、それを果たした2014年から現時点(2016年7月)では、初回の車検すら迎えていないものも多いため、新古車や特別な事情で手放された車体を除きまだまだ出物は少ない状況です。
2回目の車検を迎える2019年ごろから乗り換えに伴う車体が増えてくることが予想されますが、その中古車市場での評価が高くなることが容易に予想できます。
問題は3代目への評価ではなく、現在2代目に乗っている方の売り時ということになります。
もしも、売却をするのが2019年より遅れると大きくその買取査定がダウンしてしまうため、売り抜くならその前にした方がいいと考えます。
また、もっと急を要するケースとして2017年8月31日、強力すぎるホンダN-BOXが新モデルの販売が開始されます。(2017年7月7日から予約スタート)
タントからの乗り換えを考えるユーザーが売却を開始することが予想されるため、既に2代目タントの買取相場が、少しずつですが下降する傾向を見せつつあります。
ですので、乗りつぶしてしまうことを視野に入れているユーザー以外は、2代目タントに関してはそろそろその売却について、考えておく必要があります。

カスタムはどの程度上乗せがある?

初代タントカスタムの評価についてはノーマルとそれほど違いはなく、高走行で低年式な車体には買取査定ゼロ評価が出ることもザラにあります。

ただし、最終形の2006年式以降で走行も7万km以内の車体は別格です。

70万円を切る販売価格の中古出物はそうなく、買取査定についても35万円を超える買取額をゲットできることも少なくありません。
その傾向は、2代目タントカスタムになると前年式に広がってきて、同グレードで同程度の車体であれば10~15万円程度、ノーマルよりも高い買取査定額がつけられているようです。

 

まとめ

中古車買取価格は日々変わって行くため紹介した相場はあくまでも参考としてみていただきたいのですが、タントに対する中古車市場の評価が高いことは紛れもない事実です。
売れ行きも好調ですし、まだ3年目と、まだまだ、メジャーモデルチェンジはなさそうですが、軽ハイトール車種という1ジャンルを作ったタントが、今後どう進化していくのかも気になるところです。
最後のマイナーチェンジが2015年12月で、ライバルのN-BOXの新型モデルの登場もあるため、そろそろ大きめのマイナーチェンジもあるのではないかとにらんでいます。

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