世界で一番売れている電気自動車リーフを販売する日産が、足掛け13年製造・販売してきたノートの新型がそれです。
今回は、あまりに評判で売れに売れたため、以前のモデルにまで注目が集まった新型リーフについてまずは紹介。
その後、初代からの歴史も振り返りながら既存ユーザーの新型への買い替えも見越して、その買取相場などを中古車市場での販売価格から徹底分析していきたいと思います。
隔世の新システム「e-POWER」搭載の新型ノートとは
通常では初代モデル、つまり、その車種の誕生から触れていくのですが、この日産ノートは新型になることで新たな命を吹き込まれた車種 です。
これまでになかったハイブリットシステム
2016年11月、今後のハイブリット戦線を大きく左右する存在となるだろう量産車としては世界で初めて新システムを採用したエコカーとして、新型ノートはこの世に送り出されました。
すごくわかりやすく言うと、トヨタプリウスに代表されるこれまでのハイブリット車種のほとんどは、
↓
エンジンで動力発生
↓
動力分割(スプリット機構)
↓
分割された動力により搭載発電機で電気発生
↓
発生した電気でモーターで動力発生
↓
エンジン動力とモーター動力をハイブリット(混ぜ合わせるという意味)して車両が走行
という手順を踏む、「スプリット方式」でした。
しかし、この新型ノートに採用された「シリーズ方式」と呼ばれるハイブリット方式では、内燃エンジン自体はプリウス同様搭載されているもののそれでは全く走行しません。
新型ノートは、エンジンで発生する動力を分割することなくひたすら発電のためだけに使い、100%モーターのみで走行します。
つまり、この新型ノートはガソリンHVではあるものの、駆動方式でいえば同社のリーフと同様で、言ってみれば、「充電不要の電気自動車」なのです。
事実、日産も自身の公式HPで、新しい電気自動車の形であり、バッテリー容量や発電方式の違いはありつつも、それ以外の駆動システムはリーフと全く同じであると述べています。
実は、新型ノートを含め日産リーフ・三菱アイミーヴなどといった電気自動車には、トランスミッションが必要ないのです。
アクセルペダルの踏み込み具合だけでモータに入る電力を制御しているために、大きな重量を持つ
- 変速ギア機構
- CVTシステム
- ミッションオイル
も存在しません。
Pレンジ・・・モーターを爪で固定し動かなくしている。
Rレンジ・・・モーターを逆転させバックに対応。
Nレンジ・・・モーターに電力が入っていない状態。
Dレンジ・・・ブレーキかけている時は電力が入っておらず、放すとクリープ現象再現の為に、わずかに電力が入る。
Bレンジ・・・アクセルを離したときの電力低下度が上がるため、長い下り坂などで利用する。
を設定するための、パソコンのマウスのような「セレクター」がついています。
ガソリン車より、非常に静粛性の高いハイブリット車ですが、新型ノートはその中でも断トツに静か。
さらに肝心の燃費性能も、カタログ燃費ではありますが37,2km/L、これまでハイブリット車種NO,1だったトヨタアクアをわずかですが抜き去り、コンパクトカーとしては世界最高水準になっています。
リーフとの違いと大ヒット最大の理由
電気自動車の持ち味である同様の加速性を持ち、まるで、道路をすべる様なアクセルワークが楽しく、「ひと踏み惚れ」なんて表現もされる新型ノートと純然たる電気自動車のリーフとの決定的な違いは、「連続航続可能距離」の圧倒的な差です。
リーフの場合、100Vに接続して29時間もかかるとされる、フル充電をしたときの最大航続距離は、度重なる改良を経てもようやく200kmに到達した程度です。
しかし、電力を作るエンジンを持っている新型ノートの場合には、ガソリンをタンク満タンにするとその4倍の800kmの走行が可能になります。
しかも、電気自動車に不可欠な充電インフラがまだ十分でない中、新型ノートはあくまでガソリン発電なので、どこにでもあるガソリンスタンドに行けば補給できます。
純粋な電気自動車に憧れをもつ地球環境などにも関心の深いリーフユーザーはともかく、これからハイブリットデビューを考えている方や既存のノートユーザーにとって大きな魅力となり、発売前から予約が殺到する結果となります。
4回目のマイナーチェンジの目玉であったこの「e-POWER」採用はe-POWER未登載のノートにも注目を集め、2017円11月度、実に、15,784台をセールスすることになりました(e-POWER未登載車は全体の22%)。
結果的に、軽自動車も含む全車種で月間販売台数1位となり、これは日産にとって1977年9月期に6代目サニーで記録して以来、実に、30年ぶりのことでした。
新型ノートの大ヒットの陰に歴代ノート人気あり!
初代、そして、ベースとなった2代目にもヒットにつながる魅力が詰まっているので、ここからはそれを紹介してまいります。
これが生まれなければ何も始まらなかった
車種名であるノート(note)は、誰でもすぐに想像できる文房具のノートと全く同じスペルで、「ノウト」と発音する音符という意味が掛け合わされています。
その誕生は2005年1月、ボディーデザインは同社の看板車種であるスカイラインのデザインチームが担当し、見た目だけでなく空力などを計算しつくされた走行性能にも留意されています。
マーチのプラットホームをベースに開発されたデザインへの評価は非常に高く、販売初年度には見事グットデザイン賞を受賞します。
日産の世界戦略車種に位置付けられ、ドイツやイギリス東京で開催されたモーターショーにコンセプトカーとして数多く出品されることで知名度も上がり、海外での日産の販売を底支えしました。
国内に目を移すと、デビューした2005年は年間で93,000台以上を売り上げ、普通車中第5位にランクするなど健闘いたしました。
以降も、例年4~6万台程度とコンスタントな売れ行きを見せ、低迷にあえいでいた日産にとっ、久しぶりのスマッシュヒット車種となりました。
日本初の女性開発責任者が生んだ2代目
初代モデルの8年というロングランを経て、チーフプロデューサーの水口美絵(みなくちみえ)いわく、「毎日使える道具」を目指し、快適な走りに加え経済面でのランニングコストのバランスを強く意識して開発しています。
2012年9月販売開始された2代目ノートには、これまで初代ノートが担ってきた海外販売戦略に加え、国内では同年その販売が終了したティーダのマーケットも引き継ぐ大役が与えられます。
エンジンは燃費性能の向上という時代の波に合わせて先代の1.5L・1.6Lから1.2Lにダウンサイジングされていますが、過給機として高効率スーパーチャージャーを組み合わせることでパワー不足が解消されています。
そのデザインも、先代からさらに洗練されており、完成度合いに自信を持った日産首脳陣は、「ランキングの上位常連車種になる!」と豪語していましたが、それが見事に的中した形となりました。
販売からわずか2週間で2万台を超える受注を受け、販売開始の9月から同年度末である3月までの7ヶ月で見れば、ハイブリットを除くガソリン普通車中NO,1の販売台数を記録しました。(84,563台)
その後も年間10万台程度売り上げ、現在に至るまでこの2代目はトップテンを外したことはなく、ヨーロッパや北米でのセールスも順調と見事にその大役を果たしました。
今が売り時か、購入年・世代別に買取価格相場を徹底検証
さて、ここからは、話題の新型ノートへの乗り換え需要の増大も意識して、初代・2代目が中古車市場で、今どういった取引価格で推移しているかについて詳しく分析してみたいと思います。
初代ノートは2008年が分岐点
前世代通してタイミングチェーンなので、発売から12年を経過している車体もある初代でも、幾分中古車としての価値が残っているものもあります。
とはいえ、10年・10万kmを超えた車体は販売相場も10~15万円ほどですし、買取査定相場も5万円を超えればなかなかいい評価をくれたと思っていいでしょう。
もちろん、大きなキズや修復歴、エンジンの状態などにトラブルが発見されれば、査定ゼロも十分考えられます。
しかし、そのコンパクトさと維持コストパフォーマンスの良さから、購入する場合は初代の古めの車体は非常にリーズナブル、かつ、長持ちする車体も多いのでおすすめです。
また、その販売期間がとても長く中古の出物も非常に多い初代は、年式で大きく買取傾向が変わるモデルとなっています。
ターニングポイントと考えられるのは2008年1月、マイナーチェンジ後のモデルです。
グレード | 走行距離 | カラー | 販売価格(車体) | 予想買取相場 |
X | 6万km | シルバー | 25~30万円 | 15~20万円 |
X | 6.3万km | ブラック | 38~45万円 | 22~28万円 |
XFOUR | 6.5万㎞ | ブラック | 55~60万円 | 28~35万円 |
※年式はいずれも2008年で統一
このモデルチェンジでは燃費表示機能付きの液晶メーターが全車に装備され、フロントデザインがマーチそっくりに一新されたことで「マーチの親せき」イメージから独り立ちし、中古車人気も高い。
4回目の車検が終わる9年落ちから2度目の車検終了時の5年落ちという、「車の買い頃・売り頃」という絶妙のタイミングもあって、7つある各グレードすべてにおいて、修復歴があったり極端な過走行でもない限りそれなりの買取相場がつけられています。
特に、表で紹介したXグレードでは、
- 専用HDDナビ
- UVカットグリーンフリントガラス
- リア2スピーカー
を追加装備した「プラスナビHDD」があり、それは買取査定において3~5万円ほどプラス評価をされることもあります。
また、カラーリングで高額査定を受けているのは断然ブラックで、中でも、4WDである「FOUR」への人気がすこぶる高いのが特徴です。
2代目は「e-POWER」以外も高評価
一方、2代目ノートに関しては一番古い状態でも5年落ちなので、その買取相場は軒並み高めです。
グレード | 走行距離 | カラー | 販売価格(車体) | 予想買取相場 |
X(2012年式) | 5.5万km | シルバー | 58~62万円 | 34~38万円 |
X(2012年式) | 5.7万km | ブラック | 65~72万円 | 38~43万円 |
X(2014年式) | 3万km | ブラック | 68~75万円 | 40~45万円 |
XFOUR(2012年式) | 3万km | シルバー | 100~105万円 | 58~62万円 |
XFOUR(2014年式) | 1.5万km | シルバー | 110~120万円 | 65~72万円 |
表をよく見てもらうとわかるとおり、同年式・グレードであればやはりブラック系に人気が集まる傾向に違いはありません。
ですが、5年落ちで走行も5万km超えの車体販売価格と3年落ち走行3万kmの車体の販売価格の差が、非常に小さいのが面白いところです。
ノート既存ユーザーによる乗り換えが増え、安く下取りされた3年落ちの車体が、大量に市場に出回り既に少々買い叩かれている状況が出始めているのかもしれません。
今回のノート「e-POWER」のようにメカニカルな点で大変化をしたときは、直近のモデルの買取相場が新型が大ヒットすることによって大きく値崩れします。
デザインの変更や些細な機構の改良ではそれほど買取相場が荒れることはありません。
特に、高級セダンなどでは最新モデルがヒットすると、「同じ車種に乗っている」というステータス的な心理が働いて、数世代前のモデルの売れ行きが良くなり、併せて査定相場が若干上向くことすらあります。
新しめの年式の車体を近いうちに売りたいと考えている方にひとつだけアドバイスさせていただくと、市場の動きに敏感なのは多くの在庫を有する大手買取業者やディーラー系の中古車店の方で、中小の買取業者中には動きが鈍い業者がいるのも事実です。
従って、大小さまざまな買取業者が参加する一括見積サイトなどを駆使して多くの業者に査定をしてもらうと、高い買取査定をゲットすることに繋がります。
反対に購入サイドからみると、「e-POWER」自体に興味が無いという方にとっては、程度がすこぶるよく新しい年式のノートが、ちょっとお金を追加するだけで購入できる、イイ時期にあるということができます。
新型ノート「e-POWER」は中古で買えるの?
新型ノート「e-POWER」の新車価格は、グレードXならば、メーカー希望車体価格で195万円です。
「e-POWER」未搭載の同グレードの新車車体価格が149万円ですから、46万円ほど上乗せしなければなりません。
2016年11月に出たため2017年現在で純粋な中古車はあまりなく、通常の中古車業者が持っている車体は新古車です。
それほど新車価格と違いが無いか、事故上がりの修復車両ばかりですが、日産のディーラー系中古車チェーンである「U-car」では見事に170万円前後にそろった2016年式の中古車体が販売されています。
ほとんどが車検も2019年11月か12月まで残っており、走行距離が1万km以下です。
カラーリングがプレミアムコロナオレンジと名づけられた非常に目立つカラーであることが多い点からみるに、展示車、なかでも、「試乗車上がり」である可能性大です。
新車より25万円ほど安く「e-POWER」を体感できるうえ、ディーラーで管理され客の目に触れてきた車体であるため洗車などが行き届き、経年によるダメージや傷などは極端に少ないのが特徴です。
「新古車」に非常に近い状態であるうえ適度の慣らし運転が入っているので、不特定多数が乗ったことに抵抗が無い方にとっては意外に狙い目です。
まとめ
車はヒットモデルが出ることで、それまでの旧モデルの評価まで変わってくることがあります。
中古車買取相場は猫の目のように日々変わっていきますが、日頃から、中古車サイトなどの検索機能を利用して、自分の車が今どれぐらいで取引されているのかチェックするとその大まかな値動きがわかります。
売却するタイミングを損なうと愛車の査定相場が大きく下がる可能性もあるので、たまに暇つぶしがてら覗いてみると、売り時を決めるのに役立つのでおすすめです。
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