終わるどころかどんどんヒートアップしているように思われます。さすがにこのまま放っておく訳にもいかないので、一度取り上げさせていただきます。
意外な新興メーカーや老舗のあんなメーカーまでもが、ぞくぞくと最新型SUVを発表してきました。
もうすぐ全てが出揃う予定ですので、発売間近の最新モデルまで含めて独自の視点で比較紹介していきたいと思います。
「SUVブームの発端と今後の行方」
SUVブームの発端は2002年までさかのぼります。この年これまでになかったコンセプトの全く新しい車が発売されました。
皆様もご存知の通り、ポルシェ・カイエンです。メーカー側は、当時それほどイメージに高級感のなかったSUVという表現をさけ、新しい形のスポーツカーだと主張していますが、どうみてもクロスオーバーSUVです。
SUVは、名前“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”が示す通り、スポーティーな実用車を指します。
そこで、実用というイメージとは対極にある高級車とは結びつきにくいと思われていました。
ところが、超高級車として有名なポルシェが作ったことで異例の大ヒットとなり、新たにプレミアムSUVというジャンルが確立されるに至ったわけです。
デザインを重視したために室内スペースは犠牲になり、大きなエンジンは燃費の面からも決して実用に向いているとは言えず、大柄で駐車場所を選び、価格も高価と、おおよそこれまでのSUVの概念とはかけ離れています。
しかし、これらの特徴は高級車の購買層にとっては、大したデメリットには映りません。
それ以上に、車高が高く遠くまで見渡せるアイポイントやセダンに比べるとゆとりのある室内空間のメリットは大きく、これまでの高級セダンやスポーツカーに飽きてきていた高級志向の購買層にとってはベストな選択肢となったと考えられます。
そんな理由から巻き起こったSUVブームは、カイエンに続けとばかりに続々と高級車メーカーから新しいSUVが発売され続けており、そろそろ一旦の打ち止めといった状況です。もちろんただの打ち止めでは終わりません。
単なるSUVブームから徐々に派生車種として高級コンパクトSUVが生まれ、新たなブームの主役となる兆しがあります。仕掛けたのはまたしてもポルシェでした。
カイエンとはほとんどサイズが変わらないにも関わらず、精悍なデザインによりコンパクトでさらにスポーティーさをましたマカンの登場です。
今注文しても納車は2年待ちという人気ぶりです。当分はこの高級コンパクトSUVが自動車市場を牽引すると予測されます。
これまでに、そしてこれからどんな高級SUVが登場したのかそれぞれの特徴やアピールポイント、重要なファクターとなるサイズとともに紹介していきたいと思います。
これから検討してもまだまだ遅くはないSUV選びの参考にしていただけると幸いです。
【サイズ比較】
- カイエン(958型後期モデル)
全長:4,855mm、全幅:1,940mm、全高:1,710mm、ホイールベース:2,895mm - マカン
全長:4,681mm、全幅:1,923mm、全高:1,624mm、ホイールベース:2,807mm
「ランドローバー」
言わずと知れた元祖高級クロスオーバーSUVのレンジローバーからは、レンジローバーを紹介させていただきます。
ポルシェ・カイエンの登場以前は、唯一の高級SUVとして君臨し続けてきました。そんな元祖高級SUVもブームを黙って見過ごしてはいません。
高級SUVブーム以降に発売された第四世代となるレンジローバー L405は、レンジローバー史上初となるオールアルミモノコックが採用され、その結果車両重量は三代目レンジローバーから420 kgも削減されました。
これは、カイエンを筆頭としたライバル達のスポーティーさに遅れをとらないための最も効果的な対応だと言えます。
そして、2012年にはレンジローバーよりコンパクトでさらにスポーツイメージを増したイヴォークも登場しました。
このイヴォークの大成功を受けて、2016年にはさらなるとんでもない隠し玉を発表してきました。
なんとこれまでのSUVには例のないコンバーチブルの追加です。
この大柄な車体でフルオープンにして川でも渡れば、象の背中で揺られているような豪快な爽快感が得られることは間違いありません。
まさに、ライバル不在のオンリーワンの存在です。
【サイズ比較】
- レンジローバー
全長:4999 mm、全幅:1983 mm、全高:1835 mm、ホイールベース:2922 mm - レンジローバーイヴォーク
全長:4,355 mm、全幅:1,900 mm、全高:1,605 – 1,635 mm、ホイールベース:2,660 mm
引き続き大人気の高級SUVを紹介させていただきます。
「レクサス」
セダンが第二世代に移行し、世界的にもようやく高級路線として認知され始めた感のあるレクサスです。
これまでにも様々なクロカンSUVを世に送り出してきているだけに、もちろんこの分野にも参入しないはずはありません。
RXというネーミングです。特徴としては、やはり日本車特有のユーザビリティ、ハッチがエンブレムに手をかざすだけで開閉したり、乗り降りの際に車高が下がったりと、おもてなしの精神があげられるかと思います。
国内市場を意識してか、海外勢に比べるとスリムな全幅や日本車特有の安心感があり、トヨタ(レクサス)に高級感を感じられる人にとってはいい選択肢と言えるでしょう。
【サイズ】
全長:4890mm、全幅:1895mm、全高:1710mm
http://lexus.jp/models/rx/gallery/
「マセラティ」
創立から100年以上もの歴史とスポーツカーブランドとしての伝統を併せ持つイタリアのマセラティから、2011年のフランクフルト・モーターショーで突如としてSUVのコンセプトカーである“クーバン”が発表されました。
ついにマセラティまでもが!と驚いたのを覚えています。
その後、約5年の時を経て、2016年に“レヴァンテ”の名で市販化されました。
シャーシやエンジンなどの基本構成材をセダンのギブリから流用しており、故障率が若干気になるところではありますが、概観はフロントエンドのデザインやサイドの3連エアダクトなど一目でマセラティとわかるデザインとなっており好感が持てます。
ただし、近年のマセラティ全車に共通して言えることですが、フロントグリルなどにプラスチックを多用している点が価格を考えると非常に残念です。
特に、レヴァンテの場合はフロントグリルが大きいだけに気になってしまいます。
【サイズ】
全長:5003 mm、全幅:1968 mm、全高:1679 mm、ホイールベース:3004 mm
http://www.maserati.co.jp/maserati/jp/ja/models/levante
「ベントレー」
ポルシェやマセラティなどのスポーツカーメーカーやメルセデスに代表される総合メーカーがこぞって高級SUVを発売することは想像に難しくなかったのですが、まさか伝統と格式を重んじる超高級車メーカーベントレーまでもが、作ってくるとは想定外でした。
カイエンが火をつけた高級SUVブームに各社が追随して一旦出揃うのを待っていたかのようなタイミングで、最強の一台“ベンテイガ”を満を持して発表してきました。
ベントレー自信が最強のSUVと自信満々に語るとおりで、自他ともに認める最強そのものです。
内外装の多くの部分をハンドメイドで処理することからくる高級感はまさにお家芸。
走らせてみれば、ベントレーがドライバーズカーでありスポーツGTメーカーだったことを思い知らされます。
特筆すべきは、悪路走破性の高さです。購買層の99%はこの車で悪路走行なんてするはずもないのにも関わらず、本格クロスオーバーSUVに仕上がっています。
イギリスは紳士のスポーツとしてハンティングも盛んに行われています。
超高級車メーカーには、シューティングブレイクと呼ばれるハンティングワゴンの特別オーダーが存在しているほどです。
普段ベントレーに乗る王侯貴族の中には、このハンティングにもベントレーで行きたいという特殊な需要も存在しているらしく、実際のオフロード性能も手を抜くわけにはいかなかったとのことです。
ここまで、他の車種についてはダウンサイジングの影響や実用燃費、環境、価格への配慮からか大きなボディーにしては小さなエンジンを搭載しているため、スペックについては言及せずにきました。
このベンテイガについてはどれくらい最強かをご理解いただくためにあえて書かせていただきます。
【スペック】
- エンジン:6.0リッター W12型ツインターボTSI
- 圧縮比:10.5 : 1(高圧縮ターボ)
- ボア x ストローク:84 x 89.5(ロングストローク)
- 最高出力 :608 馬力
- 最高速度:301 km/h
- 価格:約3000万円
後発にも関わらず微塵も焦りの色は感じられません。
それもそのはず、このスペックと高級感&ブランド力に比肩する車なんてこの世に存在しないはずだからです。(SUVを作りそうなメーカーの中では)何も慌てることはありません。
市場がこの車の登場を待ってくれているからです。
それを裏付けるように売れ行きはもちろん大ヒット、納車2年待ちは当たり前のバックオーダーです。
カイエンでは物足りない超富裕層にとっては、この車を見ずにSUVを買うわけにはいきませんから。
私も発売当初の発表会や試乗会にも参加させていただきましたが、即日100台以上のオーダーが入ったと聞いて驚愕したのを覚えています。
【サイズ】
全長:5141mm、全幅:1998mm、全高:1742mm、ホイールベース:2992mm
最強のSUVベンテイガ、実は最強の座を脅かす存在の登場が最近噂されているのです。
引き続きその③で詳しく紹介させていただきますので、お楽しみに。
引き続き大人気の高級SUVを紹介させていただきます。
「ジャガー」
これまでSUVはランドローバー任せで、セダンとスポーツGTのみを作ってきた英国大衆メーカーのジャガーですが、後発ながら高級SUV市場に参戦してきました。
F-PACEという名前からもお分かりいただける通り、XJではなくFというスポーツイメージを全面に押し出してきています。
その証拠に、サイズを見ると余りにも大きな横幅に全長やホイールベースは短く、全高も低めです。
縦横比がスクエアに近づけば近づくほど、それに比例してハンドリングが優位になると言われています。
さらには、フロントサスペンションはSUVにも関わらずダブルウィッシュボーンという拘りようです。
伝統の猫足とハンドリングのジャガーにふさわしい設計思想であることがこの辺りからも伝わってきます。
エクステリアデザインも名前の通り近年大人気を博したスポーツカーF-Typeの意匠が随所に見受けられます。
価格的にもこれまで紹介させていただいた各車に比べるとワンランク低く、同じ価格で一つ上のグレードに手が届きます。
この辺りの構図は、ジャガーXKとメルセデスSLクラスの関係がそのまま当てはまると考えていただけるとわかりやすいかもしれません。
【サイズ】
全長:4,731mm、全幅:2,175mm、全高:1,652mm:ホイールベース:2,874mm
http://www.jaguar.co.jp/jaguar-range/f-pace/gallery.html
「ロールス・ロイス」
お待たせしました!
最強SUVベンテイガを脅かす存在の発表です。やはりベントレーに対応しうるのはこのメーカーしかありません。
ロールス・ロイスからSUV“カリナン”の発表が2018年に予定されています。
カリナンの名前の由来は、1905年に南アフリカのカリナン鉱山で発見された史上最大のダイヤモンド原石にあります。そのダイヤモンドの一部は、現在、英国王室が所有する王笏や大英帝国王冠に飾られています。
これまでのロールス・ロイスはその長い歴史の中で怪物や幽霊といった類のネーミングがなされてきました。全ては圧倒的な存在感と粛静性を名前からも表現するためです。
今回のネーミングは、新たなセグメントへの変化の現れなのか、それとも単なる開発コードに過ぎないのか、正式発表が楽しみです。
現時点で判明していることは、ファントムのプラットフォームを使用し、圧倒的なサイズのボディを持つということです。
これまで紹介させていただいたライバル達のサイズとは最早次元の違うものになることは確実だと思われます。
ベンテイガ同様に比較対象は存在せず、オンリーワンの存在として君臨することでしょう。
その証拠に予想される価格もオンリーワンです。
ベーシックなモデルですら£250,000〜£280,000(4,600〜5,100万円)、フル装備だと£500,000(9,200万円)程度と予想されています。
納車開始は2019年になる模様ですので、もうしばらくはベンテイガの天下は揺るがさなさそうです。
「ランボルギーニ」
2018年に発表が予定されているスーパーSUVが、もう一台あります。
それは、ランボルギーニ・ウルスです。こちらはかねてよりモーターショーを賑わせており、デザインもほぼ市販版と言われています。
現在予定されているスペックは、4リッターV8ツインターボエンジンを積み、最高出力は600ps(440kw)最大トルク800N・mを発揮します。
価格帯は、2500万円~3500万円程度で、ベントレー・ベンテイガとは直接のライバル関係となりそうです。
しかしながら、実はこの両車は同じアウディ・フォルクスワーゲングループに属しているため、販売戦略として競合しないマーケティングとなっている模様です。
共通点は価格だけではありません。どちらもベースとなるのはアウディQ7のため、兄弟といってもいい存在です。
Q7はカイエンのベースでもあるため、ベンテイガ、ウルス、カイエンは三兄弟なのです。
シャシーだけでなくエンジンもグループ内で共用されており、前述したウルスのエンジンはポルシェ・パナメーラターボのものです。
三兄弟の誰が長男かはわかりませんが、この辺りの住み分けはマーケティング手法に長けたアウディ・フォルクスワーゲングループの腕の見せ所といったところでしょうか。
ご存知の方もいるかも知れませんが、ランボルギーニがSUVを販売するのは始めてではありません。
過去にはLM002と呼ばれるオフロード4WDを開発し、300台少々販売した実績があります。
今ではかなりの希少モデルとしてマニアの間で高値で取引されています。
【サイズ比較】
- ウルス
全長:4,990mm、全幅:1,990mm、全高:1,660mm - LM002
全長:4,790 mm 、全幅:2,000 mm 、全高:1,850 mm 、ホイールベース:2,950 mm
それぞれにメーカーの特徴が色濃く反映されており非常に楽しく比較することができました。
これまで静観してきたけど、次はSUVの購入も考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
ここだけの話、アンチSUV派だった私もベンテイガやカリナンを見ていると単なるユーティリティを突き抜けた、新たな車のあり方として考えを改める必要性を感じてきました。
この先には、英国貴族のスポーツカーアストンマーティンまでもがSUVの開発を示唆しており、まだまだビッグな新型ラッシュは続きそうです。まずは2018年の発表が楽しみですね。
コメント