ジュネーヴモーターショー2017の考察レポート

今回は3月ということで、車業界の3月と言えばもうこれしかありません。ジュネーヴモーターショーの開幕です。
永世中立国スイスでの開催ということもあり、世界中の自動車メーカーが勢ぞろいします。新型車のお披露目に使われることが最も多いモーターショーとしても有名です。
そんな車業界の最新トレンドがわかるジュネーヴモーターショーの2017について、出展車両を中心に紹介していきます。

 

「ジュネーヴモーターショーの特徴」

ご存じない方も多いと思いますが、実は“ジュネーヴモーターショー”というのはあくまでも通称で、正式名称は“サロン・アンテルナショナル・ド・ロト (Salon International de l’Auto)”といいます。

スイスのジュネーヴで毎年春に開催される大規模なモーターショーで、世界5大モーターショーの一つにも数えられています。

ちなみに外の4つはといいますと、東京モーターショー(TMS、日本・東京)、フランクフルトモーターショー(IAA、ドイツ・フランクフルト)、北米国際オートショー(NAIAS、アメリカ・デトロイト)、モンディアル・ド・ロトモビル(Mondial de l’Automobile、フランス・パリ)があります。

ジュネーヴモーターショーは、1905年に始められた歴史のあるモーターショーで、近年は、ジュネーヴ空港の近くにあるコンベンション・センターのパレクスポ(Palexpo)で開催されています。

また、世界5大モーターショーの中で毎年開催されているのは、サロン・アンテルナショナル・ド・ロトと北米国際オートショーの2つのみです。その他は隔年の開催となります。

 

「フェラーリ 812スーパーファスト」

まずは、モーターショーの華、スーパーカーから紹介させていただきます。トップを飾るのはもちろんキング・オブ・スーパーカーのフェラーリです。

折しも記念すべき創業70周年の節目を迎えるフェラーリも、最新のフラッグシップモデルお披露目の場にこのジュネーヴを選びました。

http://812superfast.ferrari.com/ja/introduction

一目見てフェラーリのフラッグシップだとわかる先代F12から、もっといえば先々代599から連綿と続く伝統のFRロングノーズショートデッキレイアウトです。

なんといっても、最大のトピックはフロントに格納される心臓部は今回も自然吸気V型12気筒が守られたということです。

世はまさに環境対応からのライトサイジング化ラッシュの真っただ中にあり、スーパーカーとて例外ではありません。

一足先にV8フェラーリは、488GTBからターボ化されてしまいました。

それだけに、V12モデルまでもがターボ化されてしまうのでは?と、心配されたのですが、杞憂に終わったようです。しかも、自然吸気最後と言わんばかりの飛び切りのスペックでの登場です。

詳しいスペックは以下です。

  • エンジン:V型12気筒DOHC自然吸気6,496cc
  • 駆動方式:FR
  • 最高出力:588kW(800PS)/8,500rpm
  • 最大トルク:718Nm(73.2kgm)/7,000 rpm
  • 変速機:7速DCT
  • 全長:4,657mm
  • 全幅:1,971mm
  • 全高:1,276mm
  • 車両重量:1,525kg

6.5リッターの排気量にして800PSの最高出力を発揮し、これは1リッターあたりに換算すると123PSにも上ります。

自然吸気のエンジンとしては飛びぬけた高出力と言えます。

しかも、2リッター程度ならまだしも、6.5リッターという大排気量での数値ともなると驚異的と言えます。流石はフェラーリとしか言い用がありません。感服しました。

エンジン以外にも特徴は多義に渡ります。

フェラーリで初めて採用された電動パワーステアリングに加え、“バーチャル・ショートホイールベース”と呼ばれるスーパーカー界でにわかに流行の兆しを見せつつある後輪操舵もF12tdfからソフトウェアがバージョン2.0に進化して、ハンドリングや応答速度がさらに向上しています。

理論上の変速時間が0秒と言われるデュアルクラッチ式トランスミッションまでもが見直され、変速に要する実質時間がさらに短縮されているそうです。

ただ一つだけ残念なことにエクステリア・デザインを担当したのはピニンファリーナではなく、フェラーリ本社のスタイリング部門が担当したとのことです。

ピニンファリーナならもう少し美しくエレガントなスタイルを描けたことでしょう。特に、丸型4灯式のテールランプが悪戯に回顧主義的で手抜き感を拭えません。

インテリアの基本的なレイアウトはF12から踏襲されており、フルモデルチェンジというよりはマイナーチェンジの印象さへ受けます。

サブネームの“スーパーファスト”の由来は、1964年の500スーパーファストにあります。

自然吸気V12エンジンを搭載したフェラーリは、恐らくこれで一旦の打ち止めとなることが予測されます。

近い将来、最近のスケジュールになぞれば、5年~10年後にはすでに高騰し始めることが想像できます。

購入するだけの経済力がある方は、迷わずお早目に注文されることをお勧めします。

 

「RUF CTR2017」

http://ruf-automobile.de/ruf-ctr-2017/

ポルシェを元にしたチューニングカーメーカーとして有名なドイツのRUFからは、1987年に登場してちょうど30周年となる今や伝説的存在となったCTRイエローバードへのオマージュとなる強烈な一台が発表されました。

初代CTRは、当時の930型911カレラをベースに、車体・エンジン・足回りなど全てにRUFの改良が施されていました。

エンジンはベースの911に搭載されていた空冷水平対向6気筒SOHCの排気量を拡大して3,367ccとし、当時最新だったボッシュ製のインジェクションと分割式インタークーラー付きツインターボを装備。

最大出力は510PS/5,950rpm、最大トルク57.0kgm(553Nm)/5,100rpmを誇りました。これらの数値は当時としては、驚愕に値します。

同時期に発売され爆発的人気を誇った、フェラーリF40とは最速の座を巡るライバルとして人気を二分していました。

初代のスペックや当時の人気がわかったところで、今回のCTR2017のスペックを見ていきましょう。

やはり今回のCTR2017最大のトピックとしては、初代当時の930そのままのシルエットではないでしょうか?このシルエットに惹かれて注目した方がほとんどだと思います。

実はこのボディは、この車のためだけにRUFがカーボンファイバーを用いてモノコックからボディパネルに至るまでの全てを新規に独自開発したものです。
リアに搭載される3.6リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンは、もちろん最新の991型911のものを独自に改良。最大出力は710ps、最大トルクは89.7kgmと、伝説の復刻としてふさわしいものに仕立てています。

駆動方式は近年の911ターボに用いられているAWDではなく、RRとなっています。

トランスミッションは現段階では6速MTとのことですが、近い将来PDKを採用する可能性も十分あり得るとのことです。

足回りまで全てオリジナルで新規開発されており、プッシュロッド式ダンパーシステムが採用されています。

これらの性能を引き出した結果0‐100km/h加速3.5秒、最高速360km/h以上を達成しています。

2018年に30台が限定生産される予定で、気になるその価格は750,000ユーロ(9165万円)とのこと。

チューニングカーと考えると高い気もするし、カーボンモノコックを一から作った最新型のスーパースポーツと考えれば妥当な気もします。

ここからは私の個人的意見を言わせていただきます。

この車を一目みた瞬間、930のレトロな雰囲気と内外各所に最新最高のものを使用している本物感の融合が見事で、RUFの心憎い発表にしばし心を奪われたのも事実です。

ですが、これだけ最新のメカでありながら概観をわざわざ930にする必然性はあったのでしょうか?

930のボディーデザインが生み出された1980年代といえば、まだまだ風洞実験設備も整っておらず、空力に対するアプローチも単一的でした。

もちろん、最新の991と比較して圧倒的に不利な形状と言えます。にも関わらず、その形を採用したのには回顧主義的と言わざるを得ません。

そして、もっとも気になる点は、初代CTRイエローバードは、930をベースとしたれっきとしたチューニングカーです。

伝統と信頼あるポルシェという素晴らしいスポーツカーを、さらなる高みを目指して改良した信頼できる車です。

ところが、今回のCTR2017に関しては、ポルシェに形とレイアウトだけ似せて作っただけのほとんどポルシェとは無関係の車です。

これまで一から車を生産した経験のない一チューニングメーカーが作るカーボンモノコックで、超ハイスペックの車を本当に手放しで信頼していいものでしょうか。
また、この車のジャンルは何なのでしょうか?私が質問されれば、残念ながら“レプリカ”と答えるしかありません。

せめて、この車を作る際に991のモノコックだけでも使うことができなかったのかと、恐らく案としては挙がったはずですので、なぜ採用しなかったのかを聞いてみたいところです。

もし、採用されていれば、930へのオマージュと最強の性能を併せ持った最新ポルシェのチューニングカーとして、成立したはずです。

少し酷評しすぎたかもしれませんが、RUFというチューニングカーメーカーがこれまで培ってきた技術力やクオリティはもちろん信頼に足るものです。

万が一にも、中国製の流行の欧州車レプリカと同一視されるべきものではないとはわかっています。

回顧主義的と言われようとも、最新最強のスペックであの頃のイエローバードをもう一度手にしたいと思う方は、急いでRUFにコンタクトをとることをお薦めします。

3台目は、最古の自動車メーカーにして欧州を代表する高級車メーカーからのスーパーラグジュアリーSUVの紹介です。

 

「Mercedes MAYBACH G650landaulet(ランドレー)」

https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/vehicles/passenger-cars/g-class/the-new-mercedes-maybach-g-650-landaulet/

1997年の東京モーターショーにおいて突如としてダイムラー・ベンツ(当時)から発表された伝説の超高級車“マイバッハ”の復活

マイバッハが東京モーターショーで発表された背景には、デザインコンペで日本の横浜デザインセンターの案が採用されたという経緯があります。さらに発表展示されたモデルも黒と茶色のツートンカラーで“カイザーヒロヒト”カラーと名付けられていました。日本人として誇りに思います。

2002年には、市販車として大型サルーンのマイバッハが発売されました。

それから約10年間に渡り、BMWグループのロールスロイス・ファントムやアウディ・フォルクスワーゲングループのベントレーと熾烈な覇権争いを演じてきましたが、思うような利益が出せずに惜しまれつつ撤退してしまいます。

そんなマイバッハが、フラッグシップであるSクラスのW221型からW222型へのフルモデルチェンジを機に、“メルセデス・マイバッハ”と称するサブブランドとして復活しました。

順次Sクラス以外のEクラスなどにも次々と応用の幅が広がり、ついには今回のモデルGクラスにも及びました。

高級セダンであるSクラスになら更なる高級化としてマイバッハが用意されることは想像に難しくないのですが、Gクラスと言えば、出自が純粋な軍用車という無骨なモデル。

そんな、生粋のオフローダーと超高級ブランドマイバッハは果たしてマッチするのでしょうか?
非常に気になるところです。早速中身を見ていきましょう。

まず、主なスペックは以下の通りです。

  • パワートレインは、6.0リットルV型12気筒DOHCエンジンを2器のターボチャージャーで過給したユニットで、最大出力630hp、最大トルク102kgmを発揮することで、ヘビー級ボディを前に押し進めます。
  • 駆動系には、G63AMG6×6やG500 4×4スクエアードと同様、ポータルアクセルを採用。
  • 最低地上高は450mmを確保しており、優れた悪路走破性能も備えています。


https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/vehicles/passenger-cars/g-class/the-new-mercedes-maybach-g-650-landaulet/

ここからが、メルセデス・マイバッハの本領発揮です。

メルセデスベンツは実は過去にも“ランドレー”のサブネームを持つ車を販売していました。それは、マイバッハ・ランドレーです。

2010年に突如として発売されたモデルで、マイバッハの中でも最上位にあたる62Sをベースに細部をさらにブラッシュアップ、後部座席をフルオープンにするなど贅の限りがつくされたスペシャルモデルです。

価格は通常モデルのマイバッハよりかなり高額な1億5000万円となっており、この価格からもランドレーという響きがどれだけスーパーかがご理解いただけるかと思います。

今回のG650ランドレーも、もちろんこの伝統を受け継ぎ、後部座席の頭上だけがフルオープンになります。後部座席の2座は完全に独立しており、快適性やラグジュアリー性が高められています。

肝心の生粋のオフローダーと超高級の親和性についてはどうでしょうか?

私個人的な意見としては、上記の画像でもお分かりいただける通り、オフローダーとしての悪路走破性により、「セダンでは到達できないような大自然の中で、2人だけのための特別な解放された空間を満喫でき、さらにそこで飲むシャンパンはどれだけ美味しいことか。」と考えると十分存在意義はあり得るのかもしれないと考えました。

近年では、高級オフロードの老舗ランドローバーからもイヴォークのカブリオレが発売されるなど、オフローダーとカブリオレのコラボを待ち望む声は高まっていただけに、熾烈さを増すSUV戦争を勝ち抜くためのイメージ戦略としては十分な効果を発揮すると思います。

ということで、私はオフローダーと超高級の融合は非日常性を助長する手段として十分有り得るとの結です。

 

「マクラーレン 720S」

ついにやってきました。マクラーレンの新しい時代の幕開けを飾るニューモデルの誕生です。

これまで新生マクラーレンは、ミドルレンジ(マクラーレン流に言うとスーパーシリーズ)MP4-12Cから始まり、その進化版である650S、究極のP1、最下位レンジ(スポーツシリーズ)570Sまでの3つのレンジ構成で魅力的な車を生み出してきました。

そして、570Sを最後に一応の完成を見たわけです。実はこれらのモデルはどれも全てにおいて、同じエンジンが使われています。

型式の末尾こそ異なるものの全て同じ3,799ccの排気量を持つV型8気筒ツインターボエンジンです。
また、エンジンのみでなく土台となるカーボンモノコックタブまで全てのレンジでモノセルⅡと呼ばれる全く同じものが使われているのです。

それが、今回初めてついに全面刷新されました。

全てが新しい“720S”の誕生です。

MP4-12Cから始まったスーパーシリーズがついに第二世代に入った=つまりは、全てのシリーズが生まれ変わることを意味しています。

これから続いていく新シリーズを占う上でもっとも重要な発表となりますので、次の時代を見据えてどれほどの進化を遂げたのか早速中身を見ていきましょう。
  • パワートレインは、“M840T”と呼ばれる新開発の4.0リットルV型8気筒ツインターボエンジンで、最大出力は名前が示すとおり720ps/7500rpm、最大トルクは78.5kgm/5500rpmを叩き出します。
  • トランスミッションは7速SSG(ツインクラッチ式ロボタイズドマニュアルミッション)。
  • これらを組み合わせた結果、720Sは0‐100km/h加速をわずか2.9秒で達成し、最高速341km/hを発揮します。もちろんこれらの数値はハイパーカーを覗けば世界最高クラスのスペックです。

来るべき次世代のスーパーカー戦争を戦うに十分なものと言えるでしょう。

 

その他にも、特徴的なドライバー向けインターフェースに目を向けると、近年では未来化の一途をたどる液晶ディスプレイが目に留まります。

マクラーレンも例外なくフル液晶式のインフォメーションディスプレイを初採用。

ライバル他社と少し異なる点としては、ドライバー用ディスプレイとは別にキャビン中央にインフォメーション用のスクリーンを独立して配置していることです。

ここまでは、一通り表面上の話題に終始しましたが、ここからは私独自の視点でお話しさせていただきます。今回は2点言わせてください。

ここまでは、一通り表面上の話題に終始しましたが、ここからは私独自の視点でお話しさせていただきます。今回は2点言わせてください。

一体全体このエクステリアデザインはどうしてしまったのでしょうか?

スーパーカーにとってはスペック以上に大事といってもよいはずのエクステリアデザインなのですが、個人的にはお世辞にもカッコいいとは感じられないのです。この辺りは好みの問題なので賛否両論ということで我慢します。

が、伝統や脈絡のないフロントマスクの必然性はどう理解すればよいのでしょうか?

先代650Sは全シリーズ通じてヘッドライトの形状がマクラーレンのロゴ(スピードブランド)をモチーフとしており、一目でマクラーレンの車だとわかるという必然性がありました。

720Sはといいますと、何から着想を得てどういった企みがあるのか全く理解できません。

ライバルのフェラーリは各所に女性的モチーフを取り込み、ピニンファリーナが美しく仕上げ、ランボルギーニは自然界に存在する幾何学模様やアヴェンタドールのエンジンフードのカメムシに代表されるように生物などから着想を得ていて明解です。

マクラーレンのデザイナーの口から直接この辺りの解説を受けてみたいものです。

2点目は、エンジンやモノコックなどを共有するこの金太郎飴とも呼べる車作りに対する意見です。

私は正直なところ、この金太郎飴的なシリーズ展開方針が気に入りません。

その車種のためだけのオリジナルシャーシ、オリジナルエンジンこそがスーパースポーツとしての最高の贅沢であり、それこそが高額な車両価格を正当化する理由の本質だと考えているだけに非常に残念です。

特に、エンジンに関しては、簡単に言ってしまうと、タービンにかける過給圧によって出力を使い分けていると言えます。

ライバルのフェラーリもランボルギーニもこんなことはしていません

ミドルレンジ同士のフェラーリ458イタリア、ランボルギーニ・ウラカンと比べてマクラーレン650Sがスペック面で決して劣っておらず、それどころか3台の中で唯一カーボンモノコックタブという究極に贅沢な成り立ちをしており有利、その上価格の優位性まであるにも関わらず販売台数が458に大きく水をあけられているのは決してブランド力だけのせいではないと考察しています。

超贅沢品であり工業製品と芸術作品との境界ともいえる品物だからこそ、一切の妥協や手抜き・行き過ぎた合理性・効率化は表には見えてはいけない世界なのだと思います。

MP4-12Cから650Sにスイッチしたときのように今後の変更に期待したいところです。

 

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