8月9日水曜日メルセデス・ベンツ日本がフラグシップセダン「Sクラス」を発表しました。
2013年に発売された最新W222型のマイナーチェンジ版となります。
マイナーチェンジとはいうものの、その内容はエンジン、ミッション、サスペンションからスマートフォン対応のギミックにまでおよびフルモデルチェンジにも匹敵するほどの内容となっています。
メルセデス・ベンツのフラッグシップであるSクラスの最新機能は自動車の最先端トレンドの今後を占う上で重要にもなってきますので、この機会にぜひ紹介させてください。
発表会の模様
Sクラスの発表会は東日本高速道路株式会社協力のもと、今年度の開通を予定している“東京外郭環状道路”の建設現場を会場に行われました。メディア参加者は事前登録制で、メルセデスが準備した2台の大型バスに六本木メルセデス・コネクションから分乗して移動となります。しかも、バスの窓が全てカーテンで覆われ会場をサプライズとするなどの力の入れようです。
発表会ではメルセデス・ベンツ日本CEO、上野金太郎氏からスマートフォンを使用したリモートパーキングのデモンストレーションをはじめ、招待客による体験コーナーも行われました。
日本でのデリバリーは、当日から予約注文が開始され9月から順次納車とのことです。
http://mercedes-benz365.com/new-s-class-2017
「ラインナップ」
発売当初のラインナップとしては以下となります。
S560 long \16,460,000
S560 4MATIC long \16,810,000
S600 long \23,310,000
Mercedes-AMG S63 long \24,510,000
Mercedes-AMG S63 4MATIC long \24,910,000
Mercedes-AMG S65 long \33,230,000
9月にはここに本国ですでに発表されているMercedes-Maybachの各グレードが加わり、遅れて2018年初に新開発直列6気筒シングルターボ+電気式スーパーチャージャーを搭載するS450が発表される予定となっています。
グレード選定
実は、S400とS450を決めかねてここ数日眠れないほど迷っています。
迷っている内容とその整理の仕方をご理解いただくことで、少しでも皆様の後悔しない車選びの参考になれれば幸いです。
条件としては以下です。
サイズ
東京都港区の自宅マンションの駐車場パレットの都合上longは入らない→必然的にショートが存在するS400かS450となります。もちろん価格面の制約もありますが。(先代W221までは、V8エンジンを搭載したS550でもショートとロングの両方が選べたのですが、W222からはロングのみとなりました。)
納期
S400なら早ければ10月、遅くても、年内には納車されますが、S450となると2018年発売春頃納車です。当然早く欲しいですよね。
価格
正式発表がまだですので、予測ですが、S450はS400より200万円ほど高いようです。人それぞれかもしれませんが、少しの差とは言えない金額ですね。
性能
S400は3.0リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載しており、このエンジンはMercedes-AMGのE43やC43などの大人気モデルにも搭載されており既に好評を博している実績がある上に、S400クーペにも搭載されスポーツイメージも強いものとなっています。
対するS450は3.0リッター直列6気筒シングルターボ+電気式スーパーチャージャーを搭載。
久しぶりの直列6気筒となる上に新開発ということで、少々信頼性に不安があるもののそこはメルセデスですので、大きな間違いはないだろうと思われます。
どちらのエンジンも性能的には申し分ないのですが、私が気になるのは官能性の面です。
Sクラスに走りや官能性を期待するのは間違いかもしれませんが、気持ちいいに越したことはありませんよね。その点、V6と直6では大きな違いがあります。
V型6気筒と直列6気筒
S400と450の決定的違いを考察する上で最も重大な差異として、両エンジン形式を比較させてください。
・完全バランスのため振動が小さい。こればかりはどう工夫してもV6エンジンでは太刀打ちできません。
・ヘッドが少ない=スペース的に余裕がある
・全長が長いため衝突緩和空間が小さくなる
→Sクラスの長いボンネットでは問題にならない
・クランクが長くなり、剛性が相対的に低くなる
→現代の技術なら十分な強度を持たせることが可能
・フリクション要素が増える。
→エンジン効率にとっては少しデメリット
・エンジン表面積が大きく放射熱量が大きい
→エンジン効率にとっては少しデメリット
結局どうして直列6気筒を新開発することになったのか?
メルセデスサイドとしての最大の理由は、やはり過給機のためのレイアウトだと思われます。
シングルターボのもう一方に48Vの電気式スーパーチャージャーを配置できるだけのスペースを確保するためには、V型6気筒では狭かったのだと思われます。
恐らく今回も10年は乗り続ける予定ですので、妥協なく納得いくものが欲しいですから
「最先端技術 自動運転レベル2.5」
まずは、今回追加された先進技術を解説させていただきます。
アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシスト
アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)は、渋滞中などの低速走行時から時速180kmに及ぶ高速走行に至るまで、前を走行する車との最適な車間距離をキープします。
変更点としては、停車後3秒以内に前の車が発進した場合に自動再発進する機能が追加されたことです。
ここまでは、従来のディストロニックチャージとほぼ同様なのですが、さらに、アクティブステアリングアシスト機能が追加されており、車線のカーブと前を走行する車を認識し車間距離を維持しながらステアリング操作をアシストします。
また、車線が不明瞭な道ではガードレールなどを認識し捕捉します。
ここまでかくとほぼ自動運転なのではないかと思われがちですが、技術的には到達しているものの過信し過ぎることによる事故を防止するための安全策が取られています。
アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)&アクティブステアリングアシスト作動中に両手がステアリングから一定時間以上離れていると警告音が鳴り、ドライバーが反応せず、さらに、警告が繰り返されると、自動で減速し停止します。
この停止位置が道路上ではなく路肩にまで避けてくれるようだと完璧です。
高速道路上などで止まってしまったのでは、前方に衝突しなくても後続車の衝突で事故がより大きなものとなりかねません。今後に期待したいと思います。
アクティブレーンチェンジングアシスト(自動車線変更)
アクティブステアリングアシストが動作しているとき、移動したい車線側のウインカーを点滅させると作動します。
車両周囲を監視しているレーダーセンサーが他車との衝突の危険がないことを確認の上、ステアリング操作のアシストによって、車線変更をサポートします。
ただし、この機能は車両が高速道路上を走行中と認識している場合のみ使用可能です。
後続から迫ってくる車の速度までは計っていないようなので、あくまでもおまけ程度と考えていただいた方がいいかと思います。逆にこの機能に頼りきってバックミラーをみない運転車が増えてしまうと困ります。
・アクティブレーンキーピングアシスト(車線逸脱防止機能)
フロントウインドに設置されたステレオカメラが走行車線を検出し、フロントホイールが走行車線の外側端を越えたと判断するとステアリングを断続的に微振動させて運転者に警告します。
運転者が反応しない場合は自動補正ブレーキによって車両を車線内に戻そうとします。
マイナーチェンジ前から備わっていた機能ですが、車線が曖昧だったり障害物が多い田舎道などでは度々邪魔に思われます。想像しているよりも意外と補正ブレーキが強く感じられます。
アクティブブレーキアシスト(衝突回避機能)
前を走行する車や前方を横切る車、合流してくる車、歩行者、路上の物体などとの衝突の危険性を感知すると、ディスプレイ表示や音でドライバーに警告します。
運転者がブレーキを踏むと、必要な場合はシステムが衝突を回避するための強力な制動力を発揮できるようブレーキ圧を自動的に高めます。
運転者が即時に反応しない場合、最大のブレーキ力で自動緊急ブレーキが作動します。
しかも、この機能の作動制限が約7~250km/hだというのですから驚きです。さすがはアウトバーンを要するドイツの最先端といったところでしょうか
ただし、歩行者や小型の障害物には反応しない場合があります。また、路面状態(雨天時など)や気象条件によってはシステムが作動しない場合があります。
また、渋滞の最後尾車両との衝突の危険を検知して、その左右などに回避スペースがないと判断すると、即座に自動ブレーキが作動することで、衝突回避または被害軽減を図ります。
あらかじめ車両の前方にいる車道横断中の歩行者などとの衝突の危険を検知すると、システムが正確なステアリングトルクを計算して、ドライバーのステアリング操作をアシストします。
回避後も走行していた車線をスムーズに走り続けられるように挙動の安定化までサポートします。
ヨーロッパ貴族の“高貴なる者の義務”の精神から来るのかもしれませんが、本当に素晴らしい思想と技術だと思います。運転車自身の身の安全だけでなく交通に関わる全ての人名を尊重するための技術です。
このブレーキ圧を事前に自動的に高めておくということが、コンマ数秒を争う事故現場では事故の発生有無や発生時の生死の境目になってきます。
ブレーキ圧を高めておくためには、従来のペダルの踏力を油圧に変換するだけのブレーキでは不可能です。SBCと呼ばれるブレーキ・バイ・ワイヤ(ペダルの踏力を電気信号に変換して電気ポンプで油圧をかける仕組み)を先んじて開発していたからこそ実現できた機能に他なりません。
この時代が来ることを見越して10年以上も前に製品化していたということです。
トラフィックサインアシスト
一般道や高速道路を走行中、フロント上部に取り付けられたステレオカメラが道路沿いに設置された制限速度などの標識を読み取り、ディスプレイに表示します。
制限速度を超えた場合は、警告音によってドライバーに注意を促します。この機能により初めての道でも、安心して走ることができます。
確かにうっかり標識を見逃して制限速度をオーバーすることを防いでくれるのかもしれませんが、制限速度そのものが陳腐化してしまった現代においてはあまり意味のない機能かもしれませんね。
ただし、今後の完全自動運転を見据えた上では必須の機能と言えます。
自動車が上限なく加速し暴走することを防ぐためです。
しかし、さらにさらにその上の自動運転社会を想像してみてください。
ほとんどの車が完全自動運転となってしまえば、車同士が通信し合い車間や速度を自由に設定することが可能となるため、制限速度を設ける意味すら全くなくなってしまいます。
マルチビームLED(ウルトラハイビーム付)
フロント上部に取り付けられたステレオカメラで前方の交通状況を検知し、さらに、片側だけでも84個も設置されたハイパフォーマンスLEDを瞬時に個別制御することで、前走車などのドライバーを眩惑せずにより広い範囲を明るく正確に照射し続けます。
また、前走車や対向車がいない場合に、最長約650mを自動で照射するウルトラハイビームを新たに搭載しました。
近年では、高光度なLEDの登場により、これまでの機能を保管するだけならヘッドライトを縮小化していく傾向にあります。
そんな中、メルセデスは小さくするのではなく、これまで以上の機能を同じ面積に持たせる方向性を打ち出しているということです。
これまで、手動で上げ下げしていたヘッドライトが自動で瞬間的にそのとき最適な光度に変化する。待ち望んでいたヘッドライトの最終形態だと感じました。
アクティブブラインドスポットアシスト
都市や高速道路などの走行時に、リアバンパー左右のレーダーセンサーにより、車両の斜め後ろのミラーで見えない死角エリアに車や自転車がいることを警告します。
さらに、側面衝突の危険があるときはブレーキを自動制御して、危険回避をサポートします。
前述の車線変更アシストや側面衝突回避を実現するための基本技術的な位置づけで、警告機能に至ってはすでに2010年以降のメルセデス全車に標準装備されています。
・アクティブエマージェンシーストップアシスト
アクティブステアリングアシストがONのとき、両手がステアリングから離れているのをシステムが検知すると、警告音が鳴り、ドライバーが反応しない場合は、さらに警告音を鳴らしながら、緩やかに減速して完全に停止します。
総合的にアクティブステアリングアシストの項目で説明させていただいたとおりです。
Mercedes me connect
24時間故障通報サービス
車が走行不能になるなどのトラブル発生時に、車内の故障通報ボタンを押すとメルセデスのツーリングサポートセンターに連絡してくれます。
現場での応急処置や車両のけん引、運転者や同乗者の移動などをオペレーターが手配します。困った状況でスムーズなサポートが受けられます。
交通には他者がかかわるだけに、どれだけ安全運転のための技術が進歩していてももらい事故も発生します。
予定外の事故や故障は軽重に関わらず、その後のスケジュールを大きく狂わせられたり、手続きが発生したり面倒なものです。
そんなときに少しでもその手間が軽減できるのでしたら助かりますね。
リモートパーキングアシスト
車外からのスマートフォンのアプリによる操作で駐車が可能となりました。
並列・縦列駐車の場合は、車両が駐車スペースを検知したら車から降り、スマートフォンの操作だけで駐車することができます。
また、乗り降りしにくい狭い駐車場などで駐車するときに、駐車スペースの前で車を降り、直線的に前後に動かすことで乗り降りが楽になります。
ピアース・ブロスナンが英国諜報局のスパイ ジェームス・ボンド役を演じていた映画007「トゥモロー・ネバー・ダイ」に登場するボンドカーBMW750iLを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。確かにあの機能と全く同じものです。
この機能を使ってスパイ気分が味わえるだけでも価値があると思っているのは私だけでしょうか。
24時間コンシェルジェサービス
車内の”i”ボタンを押すと専門のオペレーターにつながります。
運転車の要望に沿った目的地の提案の他、ナビゲーションシステムの目的地設定も専門のオペレーターが遠隔で行います。
また、ホテルやイベントなどの予約も代行してもらうことが可能です。さらに、車両の機能など使い方がわからないときには、操作方法の説明を受けることも可能です。
これがフルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジだというのだから脱帽です。同時期に発売されるアウディの新型A8やレクサスLSのフルモデルチェンジへの対抗措置の意味も大きいかもしれません。
斬新な新機能
ここからが、独自路線の新機能となります。
エナザイジング機能
乗ると元気にしてくれる”エナザイジング”機能!
メルセデスという質実剛健を絵にかいたようなメーカーが、まさかこんな曖昧な領域の新機能を開発するとは思ってもみませんでした。本当に予想外で面白いです。
発表の場も変わっており、車の機能にも関わらず初お披露目されたのは2017年のCES(ラスベガス家電ショー)でのことでした。
音楽やライティング(64色のアンビエントライトから選択可能)やマッサージ機能(ホットストーンマッサージ)を統合的に作動させることで運転中のドライバーの五感に影響を与えるというものです。
疲れているときなどの癒やしを活力がいるシチュエーションでは、元気を注入してくれるということです。
例えばゴルフで大叩きして暗い気分で帰路につくときには、エナザイジングを立ち上げ6つある機能の内から “Vitality” を選択すると元気にしてくれます。
本当に効果があるのかは若干疑わしいですが、意味のないものをメルセデスが実装するとはとても思えないので、納車したらすぐに試してみてレポートしたいと思います。
Sクラスに乗るということ
メルセデスが自動車を生み出してから100年以上の歳月が流れ、自動車は一旦の完成をみたと考えています。
今後の展開はさらなる100年を伺い、自動運転化や電動化が間違いなく推進されていくはずです。もしかしたら、その後には空を飛ぶことすらありえると思っています。
そんな技術革新が当たり前の世の中においては、技術そのもの以上に大切なものがあります。
それは、その技術を扱う際の思想です。なぜなら例え先進の自動運転技術を持ち合わせていても、現時点での人や他の交通とのマッチングを無視してリリースしてしまったのでは、単に事故を誘発する道具に成り下がってしまいます。
メルセデスの自動運転技術はすでに完全自動運転レベル3や4に到達しています。
だからといって、今それをそのまま世に送り出せば、自動運転に慣れていないドライバーが過信して周囲の手動運転のドライバーとの間で普通なら未然に防げるはずの事故を起こしてしまうことでしょう。
だからこそ、メルセデスは今回のSクラスであえてレベル3をうたわずに、全ての機能に“アシスト”の文字を付け手を添えることを作動条件としたのです。
同様にエンジンのダウンサイジング化にしてもそうです。
定められた環境適応ギリギリをいくのではなく、自らが積極的に先頭に立つ姿勢を見せることで他社や業界そのものを牽引するのです。
メルセデスのフラッグシップであるSクラスに乗るということは、そんな思想や姿勢に共感し自らもそうであろうとすることに他なりません。
いつかの記事で車とアイデンティティについてお話させていただきましたが、Sクラスほどそれを雄弁に物語る車もありません。私もただただ金銭的に買える買えないだけでなく、Sクラスに乗るに相応しい人間になれるよう日々精進したいと、アーケードのガラスに自分の運転する姿が写る度に考えさせられます。
これにより納期が半年後になってしまいますが、納車したらここで必ず詳細にレポートさせていただきますのでお楽しみに。
コメント
S450を購入しました。2日目に電動トランクの故障で修理。4日目にETCが作動せず、料金所のバーに衝突。高速道路の出口でナビが突然応答しなくなり、ブラックアウト。しばらくしてナビが再起動になりました。そのため、修理。購入して3Wになりますが、使用できたのは5日間。